第65話 絶対会話が続かない気がする

 今日もエリナ先生はステキだった。

 なんていうか、憧れの先生の存在って学習効果をめちゃくちゃ高めてくれるって思うね。

 やっぱいいとこ見せたいとか思って自然と頑張っちゃうもん。

 そんなことを思いながら昼食を食べるため食堂へ移動。

 なんとなく最近、お肉とか重めなものばっか食べてたような気がするので、今回は野菜メインで行こうかな。

 なんかダイエットのために食事制限をしていた頃を思い出すね。

 ああ、あの向うが見えなくなるほど盛り上がった野菜の山が懐かしい。

 もうあんなことしなくていいと思うとダイエットが成功してよかったと心から思う。

 そんな懐かしさに浸りながらお昼を食べていたときのこと、周りの小僧どもの会話が耳に入って来た。


「うちのクラス担任のゾルドグストのジジイなんだけどさ」

「ああ、あの感じ悪い奴ね、それがどしたん?」

「なんか闇無の休みの間に失踪したんだって」

「はぁ!? マジで?」

「マジ。それでさ、今日から臨時担任になった教師がまためんどくさいのなんのって……なんか俺らの魔力操作の技術が低すぎるって言って、今日からしばらく魔力操作漬けにするとか言い出すんだよ、ホント参っちゃうよ」

「うわぁ、最悪じゃん」

「でしょ? ゾルドグストのジジイもムカつくとこが多かったけど、その辺適当だったから楽でよかったのになぁ……魔力操作なんか学園に入る前に毎日30分家庭教師にやらされてたっつーの! ああ、マジめんどくさ」

「え? 30分でよかったの!? いいなぁ、俺んとこの家庭教師なんて60分だったぜ? いやぁ、あの60分マジ苦痛だったわ」

「うわぁ、俺の倍じゃん、お前のこと今日からミスター魔力操作って呼ぼうかな? ぷぷっ」

「やめろよぉ、そんな呼ばれ方されてモテなくなったらどうしてくれんだよ」

「大丈夫、魔力操作大好きっ娘が寄って来るさ! やったね!!」

「えぇ……絶対会話が続かない気がする」

「でも、高位貴族のカワイイ令嬢なら?」

「ウェルカム!!」

「ま、そんなわけないだろうけどね……」

「だなぁ……なんか言ってて悲しくなってきた」


 ほう、教師の失踪とな……そういえば、ゲームでもそんなイベントあったっけな?

 でも、時期的にもっと先だったし、名前も違った気がする……ゲームのイベントとは別件か?

 とりあえず、ゲームのイベントなら主人公君に話が行って解決してくれるだろうから俺はノータッチでいいや。

 まぁ、エリナ先生に捜索を手伝ってくれって頼まれたらノータイムでオッケーしちゃうけどね!

 それにしても、あの小僧ども魔力操作舐めすぎだろ……

 60分とかウォーミングアップでしょ? って感じだし。

 基礎魔力量が多い貴族家の人間ですらこうなんだったら、それより少ない平民が続かないのも仕方ないことなのかな……

 まぁ、基礎魔力量が多いからこそ、もういいでしょってなっちゃうのかもしれないし、その辺はなんとも言えない部分ではあるけどさ。

 しっかし、魔力操作なんかやればやるほど効果あるのに……はっきり言って確実に儲かる投資って言えちゃうレベルよ?

 ごめん、胡散臭かったかな? でもマジなんだ。

 しかもこの世界、誤解を恐れず言えば力でどうとでも出来ちゃう世界よ?

 身分がどうこう言ったって、最終的には力がものを言うし。

 その身分だって、魔法のレベルを上げて高位モンスターを狩る、それだけで成り上がれちゃうんだからめっちゃシンプルじゃん?

 ほら、魔力操作をやらない理由がないでしょ?

 でも、この様子なら魔力量の比較的多いエメちゃんはもちろんのこと、リッド君もしっかり魔力操作を続ければ成り上がれそうだな。

 そしてグベル、なんだったらゼスでもこれからの努力次第でいいセン行けるんじゃない?

 解体講習で出会った仲間たちもそれは同じ。

 特に天才解体少年なんてそのうち、モンスターを生きたまま解体して、解体が終った頃にモンスター自身が死んでたことに気付くみたいなことをやりだすかもしれんよ?

 一応ナイフに風属性の魔力を込める技術を教えたら、魔鉄のナイフを手に入れ次第練習すると言ってたし、可能性あるよ!

 なんだ、貴族家の人間と平民の差って思ったほど大したことない気がしてきたぞ?

 この前のオークの丸焼きを食べに行ったときに嘆いてた冒険者も、それに早く気付くことだな、そうすれば道は開けるのだから。

 ……とは言え、貴族家の人間すべてが魔力操作を軽視しているわけじゃないけどね。

 エリナ先生や宮廷魔法士団の隊長さんなんかは魔力量は俺の方が多いけど、練度は明らかにあちらの方が上だったし。

 そういう上位層の魔法士との差はエグイにもほどがあるけどね……でもま、それはそれ、諦める理由にするには悲観的過ぎってもんだ。

 ……なんというか、俺があの小僧どもに寄って行っても絶対会話が続かないだろうね、それだけは容易に想像がついた。

 さて、お腹も満たされたことだし、今日はどうしようかな?

 ああそうだ、オークと近接戦闘が出来るようにミキオ君の名刀モードの精度を上げるつもりだったんだ、その練習がいいな。

 それに、俺の剣術レベルも上げたいところだし、素振りもするため運動場に行こう、決めた!

 そういえば、運動場に行くのも地味に久しぶりなんだよな。

 しっかり武術の方も鍛錬を積まなきゃな。

 そうしなきゃ憧れの魔法騎士になれないだろうし。

 ……いや騎士になって誰かに仕えるつもりはないから、俺の場合は魔法剣士か?

 ま、とにかく近接戦闘能力も磨きましょうってことだね。

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