第60話 これぞっていう基準

 午前中はオークと一応ゴブリン狩りを頑張った。

 結果的に討伐数はオーク13体、ゴブリン21体となった。

 冒険者の連中が話している内容的に感覚に個人差があるが、オークはゴブリンの3~5倍ほど強いらしい。

 そう考えると、ゴブリンの討伐数がちょっと少ないようにも思うが、それはオークの縄張りに入るとめっきり減るのと、俺の魔力を察して逃げ出す際に進行方向から垂直方向に向かわれると移動にロスが生じるので、そういうのは放っておくからなんだ。

 そんな感じで、午前の部を終えた。

 そして、学園都市に戻って来てから一応の身嗜みとして銭湯に寄った。

 どうせ解体場所に行くんだからっていう意見もあるかもしれないが、そういうところを疎かにしていてはクールの道を外れてしまうからね。

 あと、雰囲気を出すために解体士用のエプロンとナイフ等の道具セットを購入した。

 やっぱこういうのは形から入りたいからね。

 これで俺も見た目は立派な解体士になれることだろう。

 あとは技術を磨くだけってところだね。

 そうして、銭湯と買い物を済ませ、お昼ご飯を食べる。

 今日は腹内アレス君のリクエストに応えて、この前食べること大好き学生の食通君が言っていたオークボーンラーメンを食べてみることにした。

 一応これ、西の辺境でしか食べられないというわけではない。

 発祥というか元祖というだけで、あそこで修行してきたラーメン職人が王国内のあちこちで店を開いているので、わりとどこでも食べられる。

 ただやっぱ、本場ということもあり、西の辺境で食べるのが一番美味いというのが食の道に身を置く者たちの共通見解ではあるらしい。

 なので、俺もいつか西の辺境に行かねばなるまい……腹内アレス君がそれを求めるからね。

 俺としてはこの屋台で食べるオークボーンラーメンも十分すぎるほどに美味しいと思うんだけどね。

 そんでこのラーメンだけど、食べる前はもっとこってりしたものを想像していたんだけど、食べてみたら意外とさっぱりとした味わい。

 まぁ、俺自身前世であんま豚骨ラーメンを食べたことがなかったから、これぞっていう基準がないのもあるけど、オークのイメージで勝手に濃厚だと思い込んでいたので、地味に驚いた。

 そんな俺の表情の変化を感じ取ったのか、屋台のオッサンがフッとニヒルに笑うのが妙に様になっていた。

 たぶん、オークボーンラーメンを初めて食べた奴はみんなこういう顔をしたんだろうね。

 もしくは、このオッサンが研究に研究を重ねて、オークなのにさっぱりとした味わいのスープを開発したのかもしれない、もしそうならやるね!

 そう思うと、オッサンの自信ありげな顔に納得が行くというものだ。

 ふむ、これは本場のも食べてみないとだな。

 果たして、これ以上のものが食べられるのか……やべぇ、こっちに転生してきてから、腹内アレス君の意識に引っ張られているのか、俺も食道楽に目覚め始めて来ているのかもしれない。

 まぁ、侯爵家子息として実家から支給されているお小遣いや、この前国王陛下から貰った報奨金、そして俺自身モンスターの討伐でかなり稼げているので、別に食費にお金がかかってもさほどの問題ではないんだけどね。

 特に、オークは儲かるし。

 一般的な冒険者なら1人当たり月に2体ほどオークを狩れたら、それだけで生活出来ちゃうらしい。

 とは言え、死体を回収してこそなんだけどさ。

 しかも、上手く倒さないと体がボロボロになって買取価格もガンガン下がっちゃうし。

 そんなわけで、倒したオークの死体を見ればそいつの実力がだいたいわかるとか言われてるね。

 まぁ、その辺はそいつの性格とか使用武器による戦い方なんかも影響するから、一概には言えない部分ではあるのも確かなんだけどね。

 そんなことを考えつつ、ラーメンを美味しくいただいた。

 何玉食べたかって? それはまぁ、ご想像にお任せするよ。

 てなわけで、お腹もいっぱいになったし、集合時間も近くなってきたのでギルドに向かうとしよう。


「おうアレス! 久しぶりじゃねぇか!!」

「ああ、いろいろあってな」

「まぁ、冒険者ってのはそういうもんだけどな、はっはっは」

「それで今日は解体講習を受けに来たんだが」

「そうみてぇだな、ロアンナから聞いてるぜ。奥の解体場で行うからこっちに来てくれ」

「わかった」


 そうして奥に案内される。

 俺以外の講習生はどれぐらいいるかなと思ったが、3人ほど。

 まぁ、解体は人気がないらしいからこんなものなのかもしれんね。

 むしろ、タダで受けられるだけにこれでも多い方かもしれない。

 見た感じでは、俺と同じかちょっと年下に見える子供1人と戦闘が苦手そうな雰囲気のほっそりした奴が2人。

 子供はともかくとして、ほっそりした奴はそのまま解体士としてキャリアを積むつもりかもしれんね。

 よし、君たちのためにも俺がしっかりモンスターを狩って来てあげようじゃないの!

 だから安心して解体士を目指してくれたまえ!!

 そんなことを考えながら、先ほど買った解体士セットを装備する。

 うん、決まってるね!


「よし、揃ったみてぇだし、少し早いが講習を開始する!」


 その後、昨日ロアンナさんから説明があった通り、解体の手順を説明される。

 そして、現役解体士が解体を実演する。

 おお、やっぱプロというだけあって、鮮やかなもんだね。

 俺もしっかり学んで解体技術を身に着けよう。

 上手くいけば戦闘にも役立つだろうし。

 効果的な刃の入れ方や骨を断つコツはこうだ、みたいな感じでね。

 こうして、解体士の実演が終わり、ようやく演習の開始である。

 既に手順はきっちり頭に入っているし、実演も見たことでイメージも出来ている。

 あとは、その流れに沿って体を動かすだけ。

 さぁ、現役解体士さんよ、俺の解体テクをしっかり見ててくれよな!

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