第55話 意識が変わってきている
エリナ先生の研究室を後にして、現在午後4時。
ちょっと微妙な時間なので、街で買い物でもしようかな。
明日と明後日の補習後にまたお茶をご馳走になれるかもしれない、そのときに備えてお菓子を買っておこう。
いや、マジックバッグの中にないわけでもないんだけど、自分で選んだものを出したいって思ってさ。
あと、エメちゃん救出作戦で結構ポーションを使ったからね、補充しとこうと思う。
まぁ、学園の売店で買えないこともないけど、街のポーション屋もこの際だから開拓してみてもいいかなって。
そんなわけで街に繰り出す。
そしてさっそく、中央通りに面した露店で売っていたチョコバナナを購入した。
前世のお祭りを思い出してね、食べたくなっちゃった。
チョコレートのビターな味わいとバナナの甘さがベストマッチ!
そう、これだよこれ!!
そして、このカラフルなトッピングがとってもポップで、自称愛され系スイーツ男子の俺によく似合うと思うね。
そんな感じで、中央通りをブラブラ散歩。
さて、そろそろお菓子屋さんに行こうかね。
クッキーブラザーズがなかなかの活躍ぶりを見せてくれたし、この前買ったお店にまた行こうと思う。
今日はあの語尾を若干伸ばし気味なお姉さんいるかな?
「いらっしゃいませぇ、あら、またいらしてくれたんですねぇ、ありがとうございまぁす」
「この前のクッキーが美味しかったもので、また来ちゃいました」
「そう言ってもらえて嬉しぃわぁ」
そういやここ、クッキー以外にもいろいろあるな……
お、このドライフルーツたっぷりのパウンドケーキが美味そうだな、これにしよ。
3日目の分はどうしようかな……あ、おしゃれに飾り付けられたチョコレートがよさそう。
カラフルで目にも楽しい、食べておいしい、これだ!
「では、このドライフルーツのパウンドケーキとチョコレートセットをください」
「ありがとうございまぁす、こっちはおまけのミントキャンディーでぇす」
「おまけしてもらってありがとうございます」
そうして、お菓子屋さんを後にした。
やっぱり、語尾を伸ばし気味だったけど、ほんわかしていい感じのお姉さんだったな。
……また来よう。
さて、次はポーションだね。
そんな感じで、街のポーション屋を探して歩いているとゲームの主人公君が1人でいるところを発見。
装備の汚れ具合から見て、モンスターの討伐に行っていたみたいだね。
今日は王女殿下と一緒じゃなかったのかな?
まぁ、さすがに毎日はちょっと無理があるよね。
それに、ゲームのときでも会わなかった日とかあったような気がするし。
というかそもそも、ゲームの都合のせいだろうけど、最初はお金をあんま持ってなかったはず、だからこその冒険者ギルドでの金策イベントなわけだし。
それで、あんだけ王女殿下とデートしてたんだ、所持金も尽きるよね。
でもま、彼もゲーム的に言えばモンスター討伐でレベル上げもこなしているみたいだし、是非とも頑張ってもらいたいもんだね。
出来れば早く勇者の力に目覚めてもらって、マヌケ族の対応を任せたい。
いや、全部とまでは言わないから……
あと、そうしないと君、王女殿下と結ばれないからね、この王国で俺しか許す人いなくなっちゃうよ?
だから頑張れ、周囲の反対を押し切れるぐらいに功績を積み上げろ。
俺は、お前が出来る奴だってことを画面の向こうから見てきて知ってるんだ。
だから大丈夫、自信を持って行け。
こうして主人公君の姿が見えなくなるまで心の中で応援を送っておいた。
よし、ポーション屋に行きますかね。
「いらっしゃーい……おや、金髪に青い瞳の少年、そして腰に差したトレントの木刀……噂より細めな気がしなくもないけど、もしかして君、ゴブリン狩りで有名な冒険者君かな?」
「ああ、おそらく」
「へぇ、あの有名人がうちの店に来てくれるなんて光栄だねぇ」
「そうか」
ポーションは冒険者の必需品だろうから、俺の噂を知っていてもおかしくはないと思うが、このスカイブルーのローブに身を包んだ店員、微妙に雰囲気が軽いな。
とは言えそれは表面的な雰囲気だけで、体から発せられる魔力の感じから実力は確かな錬金術師なのだろうことが予想される。
まぁ、品質の確かなポーションさえ買えれば問題ないから、見た感じの雰囲気とかはどうでもいいっちゃいいんだけどね。
「そして、その若さで魔力の膜を常時展開までこなしてるなんて、優秀な冒険者君だねぇ」
そう言えば、エリナ先生も魔力の膜って言ってたな……まぁ、俺はこのまま魔纏って言い続けるつもりだけどさ。
俺の存在によって、技の名前が変わったとかなったらカッコいいし!
後世の魔法史学者に「それまで魔力の膜と呼ばれていたが、アレス・ソエラルタウトが魔纏と呼び愛用していたことから、それを真似た以降の魔法士たちによって呼び名が改められていった」とかなったら凄いよね!?
「おっと、初対面なのにごめんねぇ、職業柄ついつい分析しちゃうんだよねぇ」
「いや、構わない」
というかこの人、俺の魔纏を一目見ただけで、ある程度の練度を測れているみたいだ、やるな。
そんな風に考えると、この人が作ったポーション、期待できそうだ!
まぁ、ポーションの等級は国によって基準が決められているんだけど、その等級の中で多少優劣があるからね。
やっぱ、腕のいい錬金術師が作ったポーションはそれだけ質がよくなるってことさ。
「それで、うちに来たってことはポーションだよねぇ、等級と数は決まってるかい?」
「そうだな……全等級一通り欲しい、数はそれぞれ何本ずつ売ってもらえるだろうか?」
「回復と魔法それぞれ最上級は3本ずつ、上級は10本ずつ、中級は30本ずつ、あとは何本でもだねぇ」
「それじゃあ、最上級から中級までは買えるだけ、下級と最下級はそれぞれ50本ずつにしておこうか」
「おお、たくさんだねぇ、奥から取って来るから、ちょっと待っててねぇ」
等級の高いポーションは効能が凄いぶん材料の入手に手間がかかるからね、1人に対して売れる本数も限られているらしい。
自分で材料を採って来るとか、お金を積むとか交渉次第なところもあるらしいから、絶対ってわけじゃないけどね。
あと、等級の高いポーションが欲しいならダンジョンのドロップ狙いの方が効率がいいとか言われてるね。
ただ、当然のことながら「実力者に限る」だけどさ。
そういや、この世界に来てからまだダンジョンに行ってないな、あとで行こうと思ってたらどんどん後回しになっちゃってる。
……ま、そのうちってことで!
「お待たせ、そういえばまだ名乗ってなかったねぇ、僕はトレルルス。もしよかったらまた買いに来てくれると嬉しいねぇ」
「そうだな、そのときはよろしく頼む」
「待ってるよぉ」
こうしてポーション屋を後にした。
品揃えもいいし、これはアタリの店を見つけたね。
しかも、店内に掲げられていた「王国公認錬金術師」の資格証明書、あれがあるだけで信用度が滅茶苦茶高いのもいい。
一応、単なる錬金術師なら誰でも名乗れる、なんだったら俺でも名乗れる。
ただ、信用がないから意味がないし、そもそもポーションの作り方をまだ知らないから、作れないんだけどね。
そして、そんなわけのわからん奴が作ったポーション、圧倒的に安いから余裕のない駆け出しの冒険者とかなら買うんだろうし、稀にすんごい実力者が無名でいたりするから個人的な信用で買う奴もいることはいるらしいけど、俺はパスって感じかな。
そんなことをつらつらと考えながら学生寮に帰った。
腹内アレス君も「そろそろだぞ」と訴えかけてきてるからね。
ちなみに、結構前にダイエットが完了したら腹内アレス君とはお別れになってしまうかもって思ったこともあったけど、現状その気配はないね。
というか、最近の腹内アレス君、量より質に意識が変わってきているみたいでさ、特にゼス一押しの店がお気に入りみたい。
まぁ、俺も美味いと思ったから納得だけどね。
ただ、俺としてはエリナ先生やナミルさんの手料理の方が個人的な感情が入ってる分いいなって思っちゃうのも正直なところではある。
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