第53話 謙虚であり、傲慢でもある
昨夜は結局、魔力操作筋トレ読書に多くの時間を割き、精密魔力操作は最後にクールダウン的に行うだけになった。
まぁ、筋トレが面白くなっちゃったっていうのもあってね。
と言うのも、ちょっと前までだと腕立て伏せをしようにも、お腹の脂肪が邪魔で出来ないとかいろいろあったからさ……
そんな日々のことを思うと、出来るっていうのが嬉しくなっちゃってつい。
いや、ちゃんと教科書も読んだからね、スクワットをしてるときは!
そして、寝起きに回復ポーションをゴクリ。
うん、筋肉痛が収まり、体中の目覚めも実感できる、今日も元気に行けそうだ!
それと、昨日改めて鏡を見て思ったのだが、痩せてた……というか顔は若干やつれているようにも見えるぐらい。
これはマズい! 大急ぎで体型を元に戻さなきゃ!!
って違う! これでいいんだった!!
……なんか太っている状態に慣れ過ぎてて、むしろ違和感がある。
まぁ、転生当初はともかく、回復ポーションのフル活用と魔力操作の習熟度に伴って前世では無茶とも思えるような運動量をこなしたり、魔力操作そのものが結構な脂肪燃焼に寄与していたからね、この短期間でのダイエットの成功にも納得かな。
この成功を受けて、異世界式ダイエットとか提唱したいぐらいだね!
魔力はあなたの体を裏切らない! だからレッツトライってね!!
そして、少し寂しい気持ちもあるが……ゆるふわ愛されボディよ、さらば!
というわけで、早速朝練に行きましょうかね。
そう言えば、昨日教科書を読んでるとき、音読が効果的だって前世のテレビだったか高校の先生だかが言っていたのを思い出したんだよね。
久々の前世知識が飛び出しましたよ、ふふふ、ごめんよ異世界人たち。
俺は君たちよりさらに効果的効率的に勉強させてもらうよ!
まぁ、教えを乞うというのなら、教えてあげちゃうけどね!
どうだい? 俺ってナイスガイだろう? はっはっは!
よっしゃ、そんなわけで、今日からは「魔力操作読書ウォーキング」から「魔力操作音読ウォーキング」にバージョンアップだ!!
いいぞぉ、俺の脳がより活性化されるぅ!!
てなわけで、1時間ほど朝練をこなしたわけだが……なんかね、前にも見たことあるような気がするきゅるんとした雰囲気の小娘に嫌そうな顔をされた。
一応、気遣いとしてすれ違う時は声のボリュームを下げたんだけどね。
まったく、ダイエットに成功し、美ボディを手に入れたアレス君のなにが気に入らないというのか。
もしや嫉妬か? それはありうるな……
とは言え、俺もきゅるんとした小娘になど用はないからいいんだけどさ。
そして、1時間ほど音読をしたことになるわけだが、これはノドにくるね、ガラッガラだよ。
まぁ、運動後の回復ポーションひと飲みで一発回復だから大した問題じゃないんだけどね!
さて、それじゃあ、シャワーシーンでダイエットに成功した美ボディを視聴者の皆様にお届けしちゃいましょうかね!?
そうしてシャワーでさっぱりし、朝食へ。
ダイエットが上手くいったんだという成功体験は自信を与えてくれるね。
そこらにいる小僧どもの視線が心なしか、羨望の眼差しに感じてしまうほどさ。
それともあれかね、ゆるふわ愛されボディを懐かしんでいるのかな?
残念だが、君らの愛したアレスはもうここにはいない……美ボディのアレスへと生まれ変わったのだから……
フッ、決まった。
「……ねぇねぇ、今日のアレ、なんであんなニヤニヤしてるのぉ?」
「しっ! あんまジロジロ見んなって」
「アレからほのかに香る爽やかな匂い……女ですねぇ、まったくけしからんですよぉ」
「ばーか、シャワーでも浴びてたんだろ……女子はもっと甘くやわらかな匂いだ」
「2人ともきもーい」
「……お前のかわいい系気取りのしゃべり方もまぁまぁキツいからな」
「えぇ~キツくないよぉ」
「キツいかキツくないかで言えば……キツいですねぇ」
「そんなぁ~」
……さぁ、朝食だ。
「アレス様! おはようござ、ヒッ!!」
「……ッ!」
「お、おはヒッ!」
登場と同時に魔力圧を軽くあててみたら、ソッコーで退散していった。
よし、これからはこれで行こう。
この魔力圧に耐えられるようになったら、まともに相手をしてやってもいいな。
いつになることやらといった感じではあるが……まぁ、そこは彼ら次第。
そうして、腹内アレス君が納得するまで食事を楽しみ、授業へ。
ああ、昨日は恥ずかしいところを見せちゃったからなぁ、どんな顔をしてエリナ先生の授業を受けようか。
なんか、照れくさくてさ。
やっぱ、こういうときこそクールでキリっとした顔で臨むべきだよね。
ちょっと手鏡で確認して……うん、これぐらいかな。
よし、これで心置きなく授業が受けられる、さぁ行くぞ!
あぁ、今日のエリナ先生も素敵だなぁ。
そんで今日の状業内容は数学なわけだけど、さすがにこれはね。
一応前世で高校まで卒業しているんだ、その知識で対応可能さ。
この辺は転生者特典って感じかな。
そんな感じで、今日の授業は終了。
いつもなら、特に用がない限り、エリナ先生と会えるのは授業中のみ。
だが今日は! 補習がある! だからエリナ先生とまた会える!!
いやったぁ! 最高!!
まぁ、前世も含めて、補習で喜ぶ奴って下手したら俺ぐらいかもしれないけどね。
いや、イケメン先生に恋しちゃってる系女子とか、俺みたいに美人なお姉さんに憧れてる系男子とかなら、あり得るか!?
いかんねぇ、ついつい自分を特別な存在って思ってしまう、これが中二病ってやつなのかな?
今の時代、異世界転生なんかもわりと一般的だからね、俺だけが特別だなんて思うと恥をかくことになるだろう。
そうはならないように謙虚に行こう、だが、行き過ぎて嫌味にならないように……
謙虚であり、傲慢でもある、それがアレス・ソエラルタウトという男、これだ!
よし、今後の精神的方針も決まったところで、昼食をささっと食べて、シャワーを浴びて身嗜みを整えよう。
現時点で最高の俺をエリナ先生にお見せするためにもね。
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