第50話 いい光景だな
のんびりとした馬車の移動を続け、学園都市までの最後の休憩ポイントに到着。
馬車の中では俺とグベルとエメちゃん3人とも、魔力操作にしっかりと取り組んだ。
基本、魔力操作の練習って飽きやすいみたいだけど、2人ともよく頑張ってると思うよ。
まぁ、グベルに関しては、行きでかなりやり込ませたからね、飽きるとかどうとかって段階は既に越してたかもしれん。
そして、エメちゃんはニコニコして魔力操作に取り組んでいた。
こっちは飽きるとかそういう感覚とは無縁なのかもしれん。
俺ですら最初は寝落ちとかして苦労してたのにな……
まぁ、それについては立って行うことで克服したが。
「旦那はいつものこととして、今回もまた2人とも頑張ったみてぇだな、ってその目、エメちゃんもか……」
「ゼスおじさん! エメね! 魔力操作をしてたらね! 綺麗なお花畑でたくさんの天使様に遊んでもらったの!! それでね『私たちがいつも見守ってるからね! 頑張るんだよ!!』って言ってもらっちゃった!! エメ、天使様とお友達になっちゃった!! 凄いでしょ!!」
「エメちゃん…………よかったねぇ」
「えへへ」
そう言って、複雑な気持ちを笑顔で隠しながらエメちゃんの頭を撫でるゼス。
グベルも似たような表情を浮かべている……俺もおそらくそうだろう。
エメちゃんの話では、誘拐されて以降の記憶はなかったはずだが……
3人に共通しているのはたぶん、エメちゃんの話に出てきた天使様というのは、あの少女たちなのでは……ということだろう。
迷わずに転生神のお姉さんのところに行けたのだろうか……
あの子たちに見守られてエメちゃんはこの先、きっと幸せな人生を送ることだろう。
そうして、エメちゃんが天使様とどんなことをして遊んでいたかを聞きながら休憩時間を過ごした。
「花かんむりを一緒に作ったの!」とか嬉しそうに話している姿が実に可愛らしかったね。
それはゼスもグベルも同じようで、似たように緩んだ顔をしていた。
ああ、前世の妹の話を兄と俺と弟の3人で同じような顔をして聞いていたなとか思い出しちゃったよ。
ほんと、妹は俺たち3人、というか父さんと母さんも含めた家族みんなのアイドルだったからね。
……なんか、エメちゃんを見てるとどうしても前世の妹が思い出されてしまうね。
「さぁて、それじゃあそろそろ休憩はここまでにして、移動を再開しやしょう!」
「そうだな」
「わかりました」
「はーい!」
さて、学園都市まで今回最後の馬車で過ごす時間。
きっちり手を抜かないで、魔力操作に打ち込んでくよ!
グベルも、気合入れてかないとエメちゃんに置いて行かれてしまうからね!
そして、エメちゃんはとってもワクワクした顔で魔力操作に取り組んでるね。
いいよ! すっごくいい!!
この子、凄く伸びそうだ。
もしかしたら、前世で俺の死後にゲームの続編が出てて、今度の主人公は女の子! みたいな感じで、エメちゃんが学園のイケメンたちに「ふっ、おもしれーやつ」とか言われたりしながら恋をしたり魔法を頑張っちゃったりしてるかもね。
あ、そうなると俺みたいに悪役ポジションの令嬢とか出てきちゃうのかな……それは忍びないな。
うん、学園に推薦するときはその辺もきっちりと気を付けるように指導しておかなきゃだな!
そんなことをちらと思いつつ魔力操作を行い、馬車は学園都市へと向かっていく。
「着きましたぜ!」
「おお、やっぱり久しぶり感あるなぁ」
「エメを取り返して、無事に戻ってこれてよかったです……アレスさん、ゼスさん、今回は本当にありがとうございます! 俺たち兄妹がこうして笑顔で再会出来たのはお2人のおかげです!!」
「ありがとうございます!」
「気にするな、お前の妹への想いが成したことだ」
「そうだぜグベル! お前の気持ちが天に通じたのさ!!」
「はい……ありがとう、ございます」
「また泣く……この泣き虫グベルめ」
「よっしゃ、泣き虫はこうしちゃる!」
「ゼスさん~やめてくださいよぉ」
「アハハ、お兄ちゃん頭くちゃくちゃ~」
ゼスに頭を乱暴に撫でまわされるグベル。
それを迷惑そうにしつつも、涙の跡を残しながら笑顔のグベル。
それを楽しそうに笑うエメちゃん。
いい光景だな。
これにて、妹救出作戦は完了ってところだろうか。
さて、クール道に身を置く俺は、ここらで華麗に立ち去るとしますかね。
「それじゃあ、俺はこの辺で学園の寮に帰るとするよ、またな」
「あ、アレスさん! ソーセージの約束、忘れないでくださいよ!!」
「そうだったな、楽しみにしてるよ」
「アレスお兄ちゃん! また魔法教えてね!!」
「もちろん! また会うときまで、しっかり魔力操作を頑張るんだよ」
「うんっ!」
「旦那、今度行く飯屋も楽しみにしててくだせぇ!」
「ああ、当然だ」
腹内アレス君が早速反応してるよ……今日じゃないからね……
そうしてみんな笑顔のまま解散した。
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