第43話 報告会及び妹奪還の決起集会
エリナ先生の研究室を後にし、昨日ゼスに連れて行ってもらった「ソートルの酒場」に到着。
7時を過ぎているからな、2人はもう来ているかな? とりあえず、さっさと入ろう。
「いらっしゃーい、えっと、アレスさんだっけ?」
「そうだが、ゼスとグベルはもう来ているか?」
「うん、来てるよ! それじゃあ案内するねー」
「頼んだ」
そうして奥のテーブル席に、2人が集まっていた。
「グベル、魔力探知で反応を確認した」
「本当ですか!?」
「グベル、気持ちはわかるが落ち着け。旦那も席に着いてから、詳しいことを聞かせてくだせぇ」
「そうだったな……ああ、そうだ、注文はソーセージを全種類1皿ずつとパインジュースで」
「あいよー」
「それで旦那、エメちゃんが見つかったんですね?」
「とりあえず、魔力の反応はあった。だが、ここからかなり遠いな……おそらく馬車で2・3日かかると思う」
「それなら、あっしに任せてくだせぇ!」
「ああ、頼んだ」
「エメ……よかった」
「まだ泣くな、反応があっただけで、どういう状況かはまだわからないんだ。ただ、魔力の反応的に特に衰弱しているみたいなことはなさそうではあるがな」
「おお!」
「ああ……本当によかった」
「おまちどーさまー」
「適当にテーブルに並べてくれ」
「はーい」
「ゼスとグベルも適当につまんでくれていいぞ?」
「「ど、どうも……」」
「それで、正確な距離はある程度近くに行くまではわからんが、方角としてはだいたい北北西になるな」
「北北西ってぇと……あっちの方はずっと森が続いてるんで、まっすぐ行くには向いてませんね。だから、ある程度北に進んでから西に曲がりやしょう」
「移動の仕方はゼスに任せる。近くなったらまた言う」
「わかりやした」
「あとは移動の準備と、出発は……明日の早朝でいいか?」
「そうですね……もしかしたら盗賊かなんかが砦を築いてるかもしれねぇんで、戦闘準備も必要ですね」
「俺も……その場合に備えて、装備の確認と手入れを入念に行います」
「え? グベルは現役冒険者なんだろうけど、ゼスも戦えるのか?」
「ええ、あっしも今でこそ冒険者を引退して御者をやってますけど、元Dランク冒険者ですからね! その辺の盗賊なんかにゃ負けませんぜ!」
「なんと、それじゃあEランクの俺より高ランクじゃないか、ゼスさんって呼んだ方がよかったか?」
「冗談はよしてくださいよ、旦那のEランクはギルドの決まりでEランクなだけなんですから!」
「ああ、急いでランクを上げようと無茶をする馬鹿が多いからって、昇格後はしばらく期間を置くって決まりだっけか」
「そうですよ! あれがなかったら、実力的に旦那なら簡単にBやAに上がれますよ! もしかしたらSだって夢じゃないんだ!!」
「高評価をありがとう」
「す、凄いとは聞いてたけど、そこまでだったなんて……一応俺もEランクで、同期の中じゃ昇格の早い方だって言われてたんだけどな……」
「いや、旦那はお貴族様なんだし、それを抜きにしても特別なんだ。平民出身の冒険者ならお前も十分優秀だ、自信を持て!」
「まぁ、貴族家出身者は生まれつき魔力量は多い方だからな……だからこそ貴族だって偉そうにしてられるんだけど……しかしグベル、お前も今から魔力操作を頑張れば、まだまだ伸びるチャンスはいくらでもあるし、なんだったらその辺の貴族家出身者を追い抜かすことだって夢じゃないぞ?」
「魔力操作って……あの?」
「そう、みんなが飽きるって言ってやりたがらない、あの魔力操作」
「ああ、また始まった……」
「ん? そう言いつつゼスだってソレバ村から帰って来てから頑張ってるみたいじゃないか、ほんの少しだが魔力の流れが滑らかになっているぞ?」
「本当ですかい!?」
「ああ、ほんの少しだがな」
「へぇ、自分ではあんまりわかりませんでしたよ」
「まぁ、それを感じるのも鍛錬を積んでこそだからな」
「はぁ、先は長いですね」
「いや、あるときグイっと上がることもある、それを信じて気長にやることだ、そうすれば魔力は応えてくれる、それは俺が保証する」
「まぁ、旦那の言うことだから、信じて続けますよ」
「ああ、頑張れ」
「魔力操作……俺もやってみようかな……」
「ああ、どうせ馬車に乗っている間、ほとんど暇だろうからな、みっちり教えてやる」
「え!? モンスターや盗賊への警戒で暇なんかないですよ!」
「そんなもん、魔力探知で一撃だ」
「グベル……だから特別なんだ」
「は、はい……」
そうして、報告会及び妹奪還の決起集会を終えた。
帰宅後各々でしっかりと準備をして来ることだろう。
特にグベルは気が昂ってなかなか寝付けないんじゃないかな?
まぁ、俺は前回ソレバ村に行って遠征依頼も経験しているから、遠足前のワクワク感はだいぶ落ち着いている。
……と言うより、妹の無事な姿を見るまではたぶん呑気にワクワクなんかしてられそうもないな。
……前世の妹のことが頭にチラつくのもあってね、あんまり他人事って感じがしないんだよね。
なんとしても助けてやりたいが……よし、それには今日のところはしっかり休んで、英気を養っておこう。
まずは眠りにつくまで精密な魔力操作をじっくりと行う。
この魔力との語らいが俺を更なる高みへ連れて行ってくれる。
俺は魔力であり、魔力は俺である、その一体感こそがすべてだ。
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