第36話 俺に対する配慮
おっひる、おっひる、おっひるだよー
って腹内アレス君がウキウキしてる、決して俺はこんな軽快なリズムで昼食に向かわないから勘違いしないでくれよ?
まぁね、あのジリジリと食事量を刻む日々……腹内アレス君とのギリギリのタフな交渉……今となってはいい思い出さ。
そんなわけで、美味しくご飯を食べよう。
「最近のアレが何してたか、遂に判明したよ!」
「へぇ、何してたんだ?」
「なんと、冒険者ギルドに入ってゴブリン狩りだって!」
「ゴブリン狩り~?」
「そ、ゴブリン狩り! なんかね大量にゴブリンを狩って来て、ギルドに死体を売りさばいてたんだって!」
「へぇ~」
「それでさ、なんか俺は凄いんだぞっていう得意そうな顔をいっつもしてるらしいよ!」
「うっわ~ゴブリンごとき、何匹倒しても自慢になんねぇだろ」
「そ~そ~そういうのってなんていうかさ、弱者をいたぶって喜んでるって感じでカッコ悪いよね!」
「だなぁ、男ならもっとつえぇ奴をブッ倒してこそだよな」
「おい、そこの1年どもうるせぇぞ! あんまりうるさくピーチクパーチクさえずってると焼き鳥にして喰っちまうぞ!?」
「あっ、はい! ごめんなさい!!」
「スイマセッシタ!」
「フン」
あれ? あの人、冒険者ギルドでたまに見る人だよな……
えっと確か……そうだ「豪火」っていう二つ名持ちの豪火先輩じゃないか!
まぁ、貴族家出身なんだから当たり前と言えば当たり前だけど、冒険者ギルドで若手の有望株って噂されてたハズ!
そんで、黒と赤でキメッキメのイカした装備が鮮やかでね、カッコいいんだコレが!
それを見て俺も一瞬、黒一色の装備じゃなくて差し色になんか入れようかなって真剣に悩んだからね。
とりあえず、今の装備が痛んで買い替えのときにその辺も考慮しようかなって思う。
そして俺も、ダイエットが完璧に終わって最高のイケメンになったら、豪火先輩みたいにワイルド感を出していくのもアリだなって密かに思ってるんだよね。
そんで豪火の二つ名の通り、火属性魔法が得意って話だからさ……俺みたいに妙に火属性の使用に遠慮しちゃう身としては、地味に憧れる部分もあるんだよね。
まぁそれはともかく、今のって豪火先輩なりの俺に対する配慮ってやつかな?
もしそうならカッコよくね?
だって「喰っちまうぞ!?」だよ? 俺が言ったら本当に頭からマルカジリされると思われて、違う意味で怯えられる気がするからね……
よし、今度冒険者ギルドで姿を見たら会釈だけしてみるかな?
やっぱさ、気遣いには気遣いで返す、これが紳士の嗜みってもんだよね!
さて、ご飯も食べたし、今日は魔法の練習に取り組むかな。
さて、やって来ました魔法練習場。
この前の戦闘で、ゴブリンヒーローの魂の一撃が俺の魔纏を突破してきた。
あれは彼の最期の煌めきのなせるわざで、そうそうあることじゃなかったのだとしても、突破された事実は厳粛に受け止めなければならないだろう。
そして、つらら、これなんだけど、強いやつにはまあまあ防がれるね。
なので、魔纏とつららの強化、これが俺の喫緊の課題って感じかな。
そんなわけで練習をしよう。
やり方は……そうだなぁ……魔纏は常時展開しているからそのままとして、自分に向けてつららを射出してみるか。
そんで魔纏とつららに込める魔力を徐々に上げて行くっていうのはどうだろう……
なんか、自分に向けて撃つの地味にこわいけどね……これも戦力アップのためだ仕方ない……己の恐怖心を超えるんだ!
まぁ、魔纏の方に込める魔力の方を強めにはしとこう、それぐらいは許してくれ。
そうして自分に向けて四方八方、あらゆる方向からつららを射出。
魔纏の方が出力高めにしてるから護れてるけど、魔纏につららが当たってガキンガキンいって砕ける音、結構ビックリするから微妙に心臓に悪い気がする……
でもま、どちらももう一段階行けるか……
あれから数時間、腹内アレス君に止められるまで、ひたすらつららを自分に向けて撃ち続けた。
なんていうのかな、ちょっとしたスリルには強くなった気がするね。
ただ、調子に乗ってつららの方の出力を上げ過ぎて魔纏を貫通して足に刺さったときはマジで焦った。
慌てて回復ポーションを飲んだから大事には至らなかったが……あれはマジでビビった。
ホント、回復ポーションさまさまって感じだね。
ま、とりあえず、この前の戦闘よりはどちらも威力、精度ともに多少は向上したんじゃないかなとは思いたいけど……でもやっぱ、まだまだだね。
ゴブリンヒーローとの戦闘を経て俺の魔臓が成長したからっていうのもあるんだろうけど、アレス君の潜在能力はこんなもんじゃないって感じがするからね……うん、まだまだ伸びしろがあるってことだ、最高だね!!
そして、改めて思うのが、この世界の魔法は努力したら努力した分、きちんと結果に繋がるって感じられるのが凄く嬉しい、だからモチベーションを高く保てる。
もし俺をこの世界に転生させてくれた神様がいたとするのなら、この上のない感謝を捧げる。
ありがとうございます、お陰様で私はとても充実した日々を送れています!!
そう祈りを捧げた瞬間、一瞬、本当に一瞬だけど、いつか夢で見ためっちゃ美人なお姉さんが微笑んだ気がした。
……やっぱ、あのお姉さんが俺を導いてくれているのか!?
よし、もう一度祈りを捧げておこう。
そして……地味に思うけど、オッサンじゃなくてお姉さんでよかったかなって思うのはここだけのナイショね!
って、あのお姉さんは俺の妄想で、実は転生神がオッサンだったらどうしよう……もしそうなら……失礼なこと考えて、申し訳ありませんでした!!
転生神様はそんなに心が狭くないだろうから、これでヨシ!
さ、夕ご飯を食べに行こっと!
そうして、夕食を食べ、部屋に戻りいつも通り魔力操作の練習をして寝た。
そのとき見た夢は、初対面のオッサンとなぜかトランプのババ抜きをして遊ぶ夢だった。
そしてなぜかジョーカーの絵柄があの美人なお姉さんだったという……
そんでオッサンに「お前が美人って言ってるあいつ、めっちゃ歳いってるからな!」って言われた。
だから「知るかボケェ!」って言ってやったところで目が覚めた。
まったく、変な夢を見たもんだ。
さって、今日も一日、頑張るぞ!
まずは元気に朝活から行ってみよう!!
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