第19話 待ち遠しい気持ち

 エリナ先生との面談で素敵な時間を過ごせたことに喜びを感じながら夕食です。

 素晴らしき今日を祝ってちょっとぐらい豪華な食事をしても良いんじゃないかと腹内アレス君にアピールされた。

 そうだなぁ、こっちに転生してきてからずっとダイエットしなきゃって食事制限ばっかりだったもんね。

 思えば、腹内アレス君には我慢を強いてばかりだったよね。

 それに対して、俺は異世界で前世では使うことの出来なかった魔法にワクワクして、いろんなファンタジー要素を満喫してたし。

 それに何より、ゲームプレイ時の憧れだったエリナ先生と実際に面と向かっておしゃべりもできちゃったし……

 ごめん、思い返すと俺ばっかり楽しんでた。

 もう少し腹内アレス君の希望に沿ってご飯食べるよ。

 まぁ、あまりにも暴食ってわけには行かないけどさ、分厚いステーキとか食べたいよね。

 いいよ、食べようよ。

 最近、運動量も増えてきてるし、魔法的脂肪燃焼のコツっていうのもかなり掴めてきたし、大丈夫。

 ……別に、野菜ばっかり食べる日々に嫌気が差してるわけじゃないからね。


「おい、アレを見てみろ、今日は野菜より肉の方が明らかに多いぞ」

「あっ、本当だ」

「これは……何かの前触れかね?」

「わからねぇ。だが、何かがあるはずだ」

「こ、こわい」

「……うろたえるな、アレを注意深く見てみるのだ、穏やかな顔をしているではないか」

「確かに……ひょっとすると、何かの慶事かもな」

「そうだと良いんだけど」


 まぁ、そんなわけだからさ、今日からは俺が転生してきてからみたいにジリジリ食べる量を減らすなんてことはもうしないよ。

 だからもう安心して。

 俺も腹内アレス君もさ、一緒にもっとこの世界を楽しむべきなんだ。

 だから今日はさ、俺たちの新たな旅立ちの日にしようよ。

 魔力探知も教えてもらったし、俺たちは新しく生まれ変わったんだ、昨日までの古い価値観にはオサラバしちゃおう。

 今日からまたよろしくね。

 まだまだ未熟な俺たちだけど、これからデッカイ男になってやろうぜ!


 ……いやまぁ、良い話風にまとめたけど、今食べてる量ってさ「おお、スゲェ食べるじゃん、大食いだね」ってレベルで、既にわりと現実的な量まで減らせてるんだよね。

 それに、アレス君の体はまだ13歳だからさ、身長とかもまだまだ伸びる年代でしょ?

 あんまり食べる量絞り過ぎたら今度、成長のための栄養が足りなくなっても困るなっていう気もしてきたんだよね。

 だから、食べる量によるダイエットはこの辺で一旦終了にしようと思う。

 あとは運動量とかで引き続きパーフェクトボディを目指そうと思う。


「……わかったかもしれない」

「えっ?」

「何だよ?」

「優し気な表情から、あの決意の籠った目……きっと今夜、想い人に告白に行くのだろう」

「そうか!」

「はは~ん、なるほどね、それでガッツリと肉食だったわけだ、腑に落ちたな」

「……我々もこうしてはおれんな」

「今週のお茶会、僕も勝負に出る!」

「ああ、俺も結構な手応えを感じる令嬢が見つかったし、負けねぇよ」

「ほう……やるじゃないか」

「えぇ~初耳! 誰? どんな娘?」

「ったく、仕方ねぇな。話してやるからそんなキャッキャしなさんな」


 さて、しっかりご飯も食べたし、部屋に戻って魔力操作を頑張るぞ!


 その後、ここ最近お決まりのサイクルを回して翌日の放課後。

 もうね、魔力探知を試したくてウズウズしてた。

 もちろん、エリナ先生の授業はきちんと真剣に受けて来たけどさ。

 でもやっぱ待ち遠しい気持ちは隠しきれなかったね。

 たぶん、俺のソワソワした魔力の波動、エリナ先生には気付かれていた気がする。

 だって、授業中微妙に目が合った気がするもん。

 いやいや、ライブ中のアイドルにレス貰ったつもりになってるヲタかよって言われそうだけど、これはマジなんだって。

 ま、あんまこういうこと言ってたらエリナ先生推しの同志ににわか扱いされそうだからこの辺にしとくけどさ、ガチだったってことだけは最後にもう一度だけ言っとく。


 とかなんとか言ってると着きました、森に。

 早速進行方向に魔力を薄く広く伸ばしてみる。

 ああ、なるほどね。

 この動かない魔力は木で、ウロチョロしてる小さい魔力は小動物って感じかな。

 お、右前方になんかこいつイキってんなって感じの魔力を感じる。

 たぶんこれがエリナ先生が攻撃的もしくは俺らと相容れないって表現してたモンスターの魔力なんだろうね。

 なんか、この魔力を感じてるとさ、一発小突いてやりたいって気になってくるし。

 ま、小突くどころで済まないんだけどね。

 よっし、反応のあった場所に行ってみよう。


 うん、ゴブリン発見、か~ら~の~つらら発射。

 一瞬だったね。

 いやまあ、1体だけだしこんなもんだね。

 さって、次々行くよ!


 こうして日暮れまでゴブリン狩りを楽しんだ。

 というかね、魔力探知のおかげでゴブリンのいる所をチェックポイントにした、オリエンテーリングならぬゴブリンテーリングって感じだったね。

 今までの探す時間が短縮されたおかげで、ほぼ移動時間しかかかってないからすんごい効率化された。

 ま、そんなわけで、今回の討伐数はだいたい200体ってところかな。

 最近の記録からほぼ4倍って凄くない?

 これからさらに俺自身の移動速度が上がったらもっと凄いことになるだろうね。

 そのうち「いつからだろう、この森からゴブリンの気配が消えたのは……」とかって噂になりそうだよね。

 まぁ、どんなに狩っても、無限に湧いてくるらしいからそんなことにはならないんだろうけど。

 それじゃあ、今日もロアンナさんの引きつった顔を見に、ギルドへ換金に行きますかね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る