第2章 忘れられない人
第16話 貢献
冒険者ギルドに加入してから数日が経った。
あれからの1日のサイクルがこんな感じ。
朝練→朝食→授業→昼食→修行orギルドで依頼→夕食→魔力操作練習→就寝
朝練とかカッコつけてみたけど、内容は魔力操作読書ウォーキング。
少しずつ慣れてきたから、今では読書と魔力操作を同時に行いながらウォーキングをしているんだ。
んで、このサイクルを見てもらったらわかるけど、全然勉強してないように見えるでしょ?
だけど、この学園って座学の成績もバカにできないからさ、朝練のときに教科書を読みながら歩くことで勉強時間の捻出をしているのさ。
これによって勉強・運動・魔法の一石三鳥の効果を狙う欲張りな朝活をしちゃうってわけ。
そのうち、歩く速度も徐々に上げて行って、最終的には走りながら出来たらいいなって思ってるんだけど、それぞれの熟練度がまだ足りないからね、これは少しずつ頑張るしかないね。
そして、今までは昼食後はずっと運動とか魔法の練習をしてきたけど、ギルドに加入したからさ、今ではどっちかと言うと昼間は依頼メインって感じ。
一応昼食後に少し休憩を挟んで準備運動がてら素振りとかもしてるから、まったく修行時間ゼロってわけじゃないけどね。
まあ、依頼をこなしていくうちに、課題が見つかったら少し修行の比重を高くしようかなとは思ってる。
そんな感じで前置きが長くなったけど、今俺は学園都市周辺に広がる森でゴブリンを探して討伐しているところ。
ゴブリンばっか狩りすぎじゃね? って言われそうだけどさ、これが俺の性に合ってるんだよね。
なんでかって言うと、ゴブリンの討伐ってさ常設依頼だからいちいち事前受注しなくていいのが大きい。
なんかランク高めのモンスター素材を探してこい的な依頼って、受注しても見つかんなかったらどうしようとか心配になっちゃうんだよね。
だからそういうのは、森を歩いててたまに出くわしたときに討伐して、事後受注オッケー的な場合はそうして、駄目な場合は素材買取で終わりってのが俺のスタイルって感じ。
あとさ、だいぶ改善されたとはいえ、この体ってまだまだ足が遅いんだよね。
だから、動きの速いモンスターとか探すの面倒なんだ。
その点ゴブリンはさ、探せばいるし、下手に逃げないで向かってくるから討伐が楽で良い。
まあ、一般の冒険者としては、ゴブリンの討伐報酬って低くて、死体も持ち帰る苦労に合わないし、魔石もちっちゃいから、ある程度戦えるようになったらすぐターゲットから外すらしい。
その点俺は、大容量のマジックバッグがあるからね、
もし仮にこの森にいるゴブリンの死体全てを収納したとしてもたぶん大丈夫。
それに何より、こっちに転生したての頃だったと思うけどさ、学園の小僧どもが言ってたじゃん?
俺がメシ食いすぎなせいで貧民に食事が行き渡ってないとかなんとか。
単なる陰口だってのはわかってるけど、そう言われちゃったらさ、そのぶん貧民に食材提供してるわって言いたくなってね……面と向かっては言うつもりないけど。
そこで、この王国では炊き出しでゴブリンの肉を調理して貧民に振る舞ってるみたいだから、その材料をお届けって感じ。
でもなんでゴブリンって話だけど、それ以外のモンスター肉ってゴブリン肉ほど不味くないから一般家庭の食卓にのぼっちゃって貧民に行き渡る前に売り切れるからなんだって。
ちなみにだけど、このクッソ不味いゴブリン肉をなんとか食べれるレベルに調理できたら料理人として一人前と認められるらしい。
だからさ、そんな見習い料理人たちが心置きなく料理修行出来るように、普通の冒険者なら持って帰って来るのが面倒でその場に捨てて来るしかないゴブリンの死体を、俺はいっぱい持って帰って来るってわけ。
ゴブリン肉なら捨てるほどあるから、ガンガン練習しなさいって感じ。
どうだい? 俺ってやつはこの国の料理人の技術の底上げにも貢献してるだろ?
ま、モンスターとの実戦経験を積むという目的以外で、俺がゴブリン狩りを積極的に行う理由としてはこんな感じになるかな。
ああ、ムリしないように気を付けてるっていうのももちろんあるよ。
とまぁ、いろいろ脳内独り言を垂れ流しているけど、ちゃんとゴブリンも探してるよ?
でもね、探すのに地味に時間がかかるんだ。
実際の戦闘時間はほぼ一瞬で終わるけど、授業が終わってあれこれ準備してからっていうのもあってね、だいたいいつも50体前後の討伐で終わっちゃう。
一応これでも多い方らしく、一般的冒険者の場合1パーティ―5人でたいたい20~30体ぐらいの討伐なんだってさ。
まぁ、ゴブリンをメインに狩る層なんて駆け出しとかの低ランクばっかだからっていうのもあるらしいけどね。
……そろそろ夕方が近くなってきたし、今日はこの辺にしておこう。
今日の成果は54体の討伐でフィニッシュ。
さあ、ギルドで換金して学園に戻ろう。
そう言えば、来週から個別面談が始まるってエリナ先生が言ってたな。
学園に入学して3週間が過ぎました、どうですかってな感じ。
まぁ、前世でも中学とか高校で定期的にそういう機会があったからイメージはあんな感じだろうね。
でもさ、こういうこと言ったらキモイって言われちゃうかもしんないけどさ、エリナ先生と一対一でおしゃべり出来るっていうのは地味に楽しみでもあるんだよね。
……おっと、エリナ先生が不快な思いをしないように気をつけなきゃだな。
ただでさえ、俺が転生してくる前のアレス君って評判悪かったからさ、エリナ先生にはそういうのを吹き飛ばして、真面目な努力家っていうイメージを持ってもらいたいし?
あわよくば「アレス君ってとっても紳士的で素敵な男性ね」ってな評価もされたいからね。
よし、今晩から鏡の前でキリッとした顔の練習も始めよう。
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