第34話:準備は色々完璧に
「完璧ですね!初々しい新妻らしさと、妖艶な人妻らしさが、最高のバランスで同居してます!」
バンドゥはタイテーニアのドレス姿を満足そうに眺めている。
「当日ギリギリに届けるなんてメイド泣かせな事は、今回限りでお願いしますね!」
タイテーニアを飾り付けながら、メイド長は嘆く。
それでもどこかウキウキした雰囲気が漏れるのは、公爵夫人を迎えられた嬉しさだろう。
タイテーニアの横では、今回のもう一人の主役であるロビンがお揃いの服を着たテディベアと遊んでいる。
こちらを用意したのはオベロニス御用達のデザイナーである。
テディベアは、デザイナーからのプレゼントだった。
ここはシセアス公爵邸。
本日は、当主オベロニス・シセアスが妻のタイテーニアを他の貴族に紹介する、結婚披露パーティーである。
そして招待状にも書かれていないが、タイテーニアの実家であるシャイクス伯爵家の後継者、ロビンの初披露の日でもあった。
「……ただ今紹介に預かりましたタイターニ・シャイクスと申します。とう、とうきぇ……当家の」
部屋の隅では、タイターニが息子を紹介する練習をしていた。
因みにまだ一度も、噛まずに言えていない。
それを見守るレアーの目は暖かい。
シャイクス家の控室に、オベロニスとレイトス大公が訪れる。
オベロニスの両親は、ギリギリパーティーに間に合うかどうからしい。
「1週間前に港に着いたのは確認が取れてるので、盗賊にやられなければ間に合うでしょう」
ノホホンととんでもない事を言うレイトス大公を、オベロニスが苦笑しながらも咳払いで咎めた。
「冗談はさておき」
同じように咳払いをしたレイトス大公が、1枚の招待状を見せてくる。
「これで入場した者がいましてね」
宛名は『ニーズ・ボトン』となっていた。
「うちでは出してないのだが、そちらに覚えは?」
オベロニスの問いに、タイターニもタイテーニアも首を振る。
今回の招待状は、シャイクス家はリストを提出しただけで、実際には1通も出していない。
レアーの実家であるウィラーノ伯爵家にさえ、シセアス公爵家から出してもらっていた。
「私の字に、似ています」
封筒の表書きを見たタイテーニアが言う。
あくまでも似ているだけで、自分では無いと言う意味を込めて。
「これはあれだねぇ。完全な犯罪だねぇ」
格上の公爵家のパーティーへの招待状を偽造したのである。
しかもシセアス公爵家は、王族の血が入っている。
「同行者がタバッサ・シリーなのも気になるな」
タバッサが誰だかピンと来ないタイテーニアが首を傾げると、オベロニスはその耳元で囁く。
「あの汚れたメイドだよ」
タイテーニアの力を気遣った行動だったが、された本人は真っ赤になって耳を押さえた。
御忍びで王と王妃が来る事も決まっていたので、会場の警備には王宮騎士団も駆り出された。
公爵家の私兵だけでもかなりの数なのだが、剣は持たず給仕の使用人や案内係等に扮していた。
元々が暗器を扱い慣れた者達である。
全ての準備が整い、オベロニスとタイテーニア、そしてレイトス大公とシャイクス伯爵夫妻が会場へと向かった。
ロビンは、呼ばれるまで乳母と控室に居る予定だった。
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