第35話:断罪劇の始まり
パーティー会場に流れていた、ゆったりとした曲が止まった。
主役の入場である。
結婚式を意識した鐘の
フロアーより数段高くなった入り口から、オベロニス・シセアス公爵と、妻であるタイテーニアが入場した。
レイトス大公とシャイクス伯爵夫妻は先に会場入りし、階段下で二人を迎える。
「今日は私達の為に集まってくれて、ありがとう。婚約期間も無く結婚したのは、私が妻であるタイテーニアに一目惚れをして、陛下に無理を通したからだ」
オベロニスは横にいるタイテーニアへ微笑みを向ける。
会場のあちらこちらから赤や青や黒のモヤが立ち昇るのを、タイテーニアは気が遠くなりそうになりながら見つめた。
自分に向かって来るモノもあるが、圧倒的にオベロニスを標的にしているモノが多い。
仲良く寄り添っているように見せて、タイテーニアはオベロニスの背中をポンポンと叩いた。
それに気付き、オベロニスは更に笑みを深め、タイテーニアの耳元で「ありがとう」と囁いた。
「お待ちください!オベロニス様は騙されています!」
突然会場に響いた声に、皆の視線が集まる。
そのままその人物を避けるように、人垣が分かれた。
現れたのは予想通りタバッサ・シリーだった。
その斜め後ろには、ニーズ・ボトンも居る。
「その阿婆擦れには、子供が居るんです!しかも婚約者だった男性の子供ですらありませんわ」
タバッサが「阿婆擦れ」と言いながらタイテーニアを指差す。
その指先から青黒いモヤが飛んできて、タイテーニアは慌てて払い落とした。
「そうだ!俺の有責で婚約破棄になったが、お前が先に浮気していたんだろ!逆に慰謝料を請求する!」
ニーズがタバッサに続いて叫んだ。
「馬鹿だとは思ってましたが、ここまでとは思いませんでした」
思わず呟いたタイテーニアの言葉に、オベロニスは吹き出す。
タイテーニアがオベロニスの背中を叩いたり、自身の体を払ったり、忙しなく動く姿が小動物的だったのも、オベロニスの笑いを誘った。
そのタイテーニアの姿を見て、笑みを深めたのがもう一人。
タバッサ・シリーである。
「どうされました?何も付いてませんよ?あぁ、きっとアナタにだけ何かが見えてますのね。そんなんじゃ公爵家夫人なんて務まらないでしょう?」
暗に精神疾患をにおわせ、タイテーニアを更に追い詰めようとした。
「それともあれかしら?大勢の男性に体を許したから、実際に
勝ち誇ったように言うタバッサ。
その顔が一瞬で固まった。
オベロニスの殺気のこもった視線を感じたからだ。
「シセアス公爵の妻をそこまで
会場から物音一つしなくなった。
「わ、私は嘘は言って、おりません。オ、オベロニス様は、そ、その女の子供を見ていないから、騙されている事に気付かないのです!他人の空似と言うには、無理がある程似ていますのよ!」
自分の台詞に酔っているのか、タバッサは段々と声を大きくしていった。
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