第33話:決戦は披露パーティー




 シャイクス家の前でニーズを拾ったタバッサは、そのままシリー家へと向かった。

 馬車の中で話を聞くと、この男は憎きあの阿婆擦れタイテーニアの元婚約者だと言う。


「シャイクス家には、小さな子供はおりますの?」

 一応の確認として、タバッサはニーズに聞いた。

「は?あの家はあの女しか子供はいない」

「まぁ!ではやはり、あの子は隠し子なのね」

 驚いたフリをしながら、タバッサは扇の影でわらった。



 タバッサは、元婚約者が知らないなら、シャイクス家に他に子供は居ないと確信していた。

 赤子が木の股から生まれるはずもなく、妊娠期間や出産があるはずなのに、そこまでは頭が回らなかった。

 タイテーニアによく似た子供は、タイテーニアの隠し子になったのだ。


「ねぇ、貴方も騙されたのよ。あの阿婆擦あばずれに」

 タバッサはニーズに、タイテーニアが幼い子供を抱いていた事。

 その子供がタイテーニアに懐いていた事、そしてとてもよく似ていた事を話した。



「シセアス公爵と阿婆擦れの結婚披露パーティーがあるのよ」

 タバッサは紅茶を一口飲む。

 そのカップはボトンブランドで、それがニーズの気分を良くさせる。

「その場で、あの女の本性を暴いてやりましょう」

「そうだな!隠し子がいる位なら、婚約破棄の慰謝料は俺が貰う側だ!」


 どこまでも自分に都合が良いようにしか、物事を考えられない二人だった。




 対してシャイクス家では、あの刻印の謎がレアーからオベロニスに説明された。

 すぐにでもボトン家を破滅させられる証拠だったが、それに待ったを掛けたのはタイターニだった。


「タイニー!?貴方、ここまで来て、まさか情けを掛けようとか言わないわよね?」

 射殺さんばかりのレアーの視線を受けて、タイターニは一瞬たじろぐが、胸を張る。

「タイテーニアの慶事けいじけがしたくないんだよ」

 そこまで言われて、レアーの頭に昇っていた血が下がった。


 確かに、元婚約者の家が不正で没落すれば、それはタイテーニアの汚点になりかねない。

 しかもその理由が、シャイクス家を巻き込んだ詐欺行為だ。


「そうですね。それでは、披露パーティーの後にしましょう」

 何を、とは言わないが、全員がオベロニスの言葉に頷いた。




 オベロニスと共に自室へ入室した瞬間、タイテーニアはオベロニスの背中をパーンと叩いた。

「痛っ!」

 さすがのオベロニスも声を上げるほどの力だった。


「申し訳ございません。でも、どこで来たのですか?今日のお洋服は全身黒かと思いましたわ」

 いつもより念入りにオベロニスの体を払うタイテーニア。

「今日は仕事で会議があったな」

 何個か申請された大掛かりな工事を不要だと却下したな、とオベロニスは考えていた。


 それは実際に必要なく、潤うのは申請した家だけであり、国庫金でやる物ではなく自領の金でやるべき物だった。


「もう。私も一緒に働いて、すぐにその場で払って差し上げられたら良いのに」

 可愛い事を言う妻に、それは良いなと思ったオベロニスだった。



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