第15話 凶弾

伝次郎は必死に飛び続けた。

遅れた分を取り戻すため、彼は最大限の力を振り絞って飛んだ。

その時の彼の飛行速度は100キロを超えていた。

超鳥的な速さで伝次郎は味方の基地を目指して飛んだ。


やがて半島の岬が見えてきた。

味方の前線基地があるところだ。

伝次郎は地磁気逆転現象による苦難を乗り越えて、見事に味方の元へと飛んで行ったのだ。


だがまたしても伝次郎を悲劇が襲った。

味方の基地を見つけて少し気が緩んだ伝次郎を、敵の放った銃弾が襲ったのだった。

最初の銃弾は伝次郎の羽をかすめた。しかし次の銃弾は伝次郎の左胸を打ちぬいたのだった。

普通の鳩ならこの時点で絶命していただろう。

しかし伝次郎の特殊な体の構造がまたしても彼の命を救った。

伝次郎の体は「内臓逆位」というい特殊な体で心臓の位置が右にあったのだ。

致命傷は避けられたとはいえ、銃弾は伝次郎の左胸を打ちぬいたのだから、彼が瀕死の重傷を負ったのは確かであった。


気を失いかけた伝次郎であったが、彼の目はゴールをまっすぐに見つめていた。

そして、力を振り絞って味方のもとへと羽ばたいたのであった。


伝次郎は無事味方のもとにたどり着けるのだろうか。

そして傷ついた伝次郎の命運や如何に。

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