第14話 司令部の決断
自分を取り戻した伝次郎にはすでに迷いはなかった。
己の感じたままに、磁場の特異点を頼りに、味方の前線基地を目指した。
そんな中、特務機関情報戦略課の中でも地磁気逆転現象問題に気付き、一同は
戦慄した。
流石の伝次郎でも、地磁気逆転現象による迷走は避けられないと判断したためだ。
伝次郎が最前線に指令を届けることが出来なければ、この作戦は中止せざる
負えない。
しかし、味方の奇襲攻撃部隊はすでに陽動作戦によりイレブン島周辺が手薄になることを想定して作戦を開始している。
もし敵が陽動作戦につられてイレブン島から離れていなければ、奇襲攻撃部隊は全滅することになる。
伝次郎を信じて作戦を続行すべきか、それとも直ちに中止して奇襲部隊を引き返させるか決断の時は迫っていた。
司令官
「伝次郎は予定通りだと何時に前線基地に到着するのだ」
司令官補佐
「予定ではひとふた〇〇に到着予定ですが、伝次郎が無事に到着したことを我々が知ることはできません」
司令官
「つまり味方の陽動部隊が動き出すまで、成す術なしということか。」
司令官補佐
「残念ながらその通りです司令官殿。僭越ながら意見具申」
司令官
「なんだ」
司令官補佐
「伝次郎が味方の前線基地にたとえ無事にたどり着いたとしても、作戦開始時間から 大幅に遅れると予想されます」
司令官
「それで」
司令官補佐
「つまり、この作戦の成功する確率は非常に低いと考えられます。今ここで奇襲部隊が全滅すれば我が軍の戦力は大幅に縮小し、今後の戦いに大きな影響が出ると判断します」
司令官
「お前はこの作戦の中止をしろと言っているのか。中止するのは簡単だ。それにより奇襲部隊は温存できるだろう。しかしそれは敵の進軍を許すことになり、我が軍は致命的な打撃を受けることになる」
司令官補佐
「それはそうです。ですが奇襲部隊を見殺しにすることは出来ません。そこには私の弟もいるのです」
司令官は深く帽子を被り直して静かな声で言った。
「この作戦はもとより大国R国の進軍を止める為の唯一無二の手段なのだ。私はこの作戦を立案する時点で伝次郎に全てをかけたのだ。奴は地磁気の影響ごときに負けるやつではない。奴こそは伝助の血統を受け継ぐ最も優秀な伝書鳩なのだ。俺は伝次郎を信じる」
司令官補佐
「・・・そうですね。そうでしたね。申し訳ありません司令。私も伝次郎を
信じます」
かくして情報戦略課司令部は作戦の続行を決断したのであった。
全ての未来は伝次郎、お前の双羽にかかっているのだ。
頼むぞ伝次郎。お前が我らの希望なのだ。
はたして、伝次郎は指令を伝えることが出来るのだろうか。
陽動部隊は無事に敵軍を引き付けることができるのだろうか。
奇襲部隊はイレブン島攻略を成功させることが出来るのだろうか。
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