第13話 兄の声ふたたび

味方の最前線に向けて飛び立った伝次郎は敵の監視網を潜り抜け順調に進んでいた。

ところがそこで伝次郎を悲劇が襲った。

元々不安定だった地磁気がまたもや暴走を始めたのだ。

地磁気逆転現象である。


それは突然に起こった。

流石の伝次郎もこれを予知することはできなかった。

地磁気の逆転はあっという間に起こった。そしてそれは容赦なく伝次郎の体内地磁気を狂わせた。

伝次郎は一瞬方向感覚を失い、迷走した。

「こんなときどうすれば・・・」 流石の伝次郎も焦り、その焦りは不安へと変わっていった。

どうしようもない不安と、何としてもこの極秘情報を届けなければという使命感の中で伝次郎は葛藤した。

しかし、もがけばもがくほど出口のない迷宮へと誘われていった。

伝次郎は完全に自分を失っていた。

「俺はもう、この使命をはたせないのか。ごめん伝一郎兄さん。俺はダメな奴だ。」

諦めかけたその瞬間再び伝次郎に語り掛ける兄の声が聞こえた。

「伝次郎。考えるな。感じろ。お前ならできる。お前は兄の誇りなのだ。ダメな奴なんかじゃない」

その声で伝次郎は我に返る。

そうだ、感じるんだ。たとえ地磁気がくるっても、元々その場に存在する磁場の特異点を感じることが出来れば、きっとたどり着くことが出来る。

伝次郎は兄の声で自分を取り戻し、再び強く羽ばたいた。


ゆけ!伝次郎。お前だけが希望なのだ。負けるな伝次郎!!

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