第8話 つかぬ間の休息
隼の襲撃をかわし、しばらくは順調に飛行を続ける伝次郎であった。
時間はすでに6時間を経過し、その道のりは約半分まで来た。
いつもの伝次郎であればこのくらいどうということもなかった。
彼は休むことなく1200キロの距離を飛ぶことができたので、540キロの距離など
どうということもないのである。
しかし、先の隼との戦闘で体を捻った際に、わずかではあったが羽を痛めていた。
最初は少し違和感を感じた程度であったが、飛行時間が長くなるにつれてそれは痛みへと変わった。
無理をすれば多少速度は落ちるが飛べないことはなかったが、再度隼に襲われたら
今度は逃げ切ることができないと悟った伝次郎は、勇気を出して羽を休める決断を
した。
この判断力も伝助一族の強さの秘訣であった。
彼は上空から適当なヤドリギを探して、そこで一軒の古びた家屋を見つけ、そこの
軒先で翼を休めることにした。
その家屋は農家の穀物を保管する倉庫だった。
その為、床には穀物が落ちていて、近くには井戸から引いた水もあった。
伝次郎は地面に降りて、床に散らばっている穀物を食べ、水を飲んで喉を潤した。
そのあと軒先につかまり、しばしの休息をとった。
それからしばらくして、あたりが急に暗くなった。
まだ昼の1時頃である。
雲に太陽が隠れて、一気に暗くなったと思ったら、大粒の雨が降ってきた。
爆弾低気圧によるゲリラ豪雨であった。
流石の鳩も、ゲリラ豪雨の中飛び続けることは不可能であった。
もしこの雨の中飛び続けていたら雨に濡れて重くなり冷やされた体で急激に体力を
消耗していただろう。
伝次郎は偶然にもこの雨を回避し、かつ食料と水を補給して逆に体力を回復させることに成功した。
この偶然も伝次郎の持つ才能の1つだということがのちに判明する。
この奇跡の才能が後に彼を初代伝助以上の伝説の伝書鳩にすることを、彼自身今はまだ知らない。
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