第5話 冷静なる伝次郎
伝次郎は他の鳩たちが飛び立った後、一羽残ってまだスタート地点のトラックの中にいた。
彼は地磁気の方向を勘違いする特異な体質であったが地磁気の乱れを感知する能力は
初代伝助にも勝る力を持っていた。
スタートする前から、彼は地磁気の大きな乱れが来るのを本能的に感じ取っていた。
今やみくもに飛び立っても、いずれ来る地磁気の乱れで方向感覚を失い、途中で力尽きることを悟った彼は、一羽残ってじっとその時を待っていた。
彼にとっては1時間くらいの遅れなど問題ではなかった。
彼の飛行能力は向かい風でなければ時速90キロ以上で飛べた。
普通の鳩たちより時速10キロ早く飛べ且つ、1000キロくらいなら休むことなくそのスピードを持続できたため、彼に焦りはなかった。
やがて伝次郎が感知した通り、磁気嵐による磁場の乱れが発生した。
流石の伝次郎もこの磁気嵐だけはどうにもすることができなかったのだ。
そこで彼は磁気嵐がやむのを待ち、飛び立ったのであった。
本来なら逆に向かって飛んでしまうため、目的地にたどり着くことができない伝次郎であったが、この時偶然にも磁場逆転現象が起きた。
その為、他の鳩たちが混乱する中伝次郎は迷うことなく目的地に向かって一直線に
力強く羽ばたいた。
瞬くうちに先にスタートした鳩たちを追い抜き、かれは矢のように目的地に向かって前進を続けた。
果たしてこのまま無事に目的地にたどり着けるのだろうか。
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