第3話 伝次郎の秘密

ここでこの物語の主鳩公である伝次郎について少し説明しよう。

伝次郎は初代伝説の伝書鳩伝助から数えて18代目になる。

伝次郎には伝一郎という兄がいた。

兄は伝助の特異な能力を誰よりも引き継いでいたが、幼い頃に野良猫から伝次郎を守って負傷し、飛ぶことができない体になってしまった。

その時伝次郎も重傷を負ったが、伝次郎だけが持つある特異な能力のおかげで再起できた。

兄伝一郎はその時の怪我が治ることなく伝次郎にすべてを託し、世を去った。

伝次郎はそんな兄の意思を次いで、立派な伝書鳩になることを決意したのだった。


しかし、伝次郎にはある問題があった。

その問題とは彼の命を救った彼自身の特異な体質にあった。

彼の心臓の位置は左右逆、それだけでなく彼のあらゆる臓器は左右逆になっている、

「内臓逆位」という特殊な体質であった。

その為、野良猫から受けた致命傷となるべき攻撃から生還できたのであった。

しかし、彼の場合逆になっているのは内臓だけでなく左右の脳も逆になっていた。

つまり右脳が左脳に、左脳が右脳として機能しているのだった。


その為、彼は体で感じ取った地磁気を左右逆にとらえてしまうという伝書鳩として致命的な問題を抱えていたのだ。

頭の中ではわかっていても、本能的にS局とN局を逆にとらえてしまうのだ。

そんな伝次郎に果たして、伝書鳩としての使命を果たすことができるのだろうか?

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