君との思い出は永遠に

幼なじみの女の子が交通事故で亡くなった。突然だった。学校を出るまではいつも通り元気だったのに。


居眠り運転だったらしい。その車を運転していたドライバーは永遠とわを轢いた後も止まらず数台の車を巻き込んだそうだ。……まぁそれは俺にとってはどうでもいいことだけど。


俺がちょうど学校から出たタイミングで永遠とわの母親から電話がかかってきた。

彼女が運ばれた病院に走った。タクシーを捕まえる時間がもったいなかった。無事を祈りながら必死に走った。


足が張り裂けるかと思うくらいキツかったけど、何とか病院についた。

緊急搬送された彼女は未だ手術室の中だ。

手術室の前で永遠とわの家族一緒に無事を祈った。時間が止まってしまったのではと錯覚してしまうくらいだった。


手術が終わったのか扉が開いた。医者が首を降った。全員何も言わずにその場で泣いた。



中学三年の夏のある日、俺の人生から大切な人がいなくなった。






あれからもう一年が経った。高校に入ると同時に別の町に引っ越した。今は一人暮らしだ。

永遠とわが死んでからの毎日は退屈だった。人と関わるのが苦手な俺はいつも一人だった。そんな俺でも彼女は一緒にいてくれた。いなくなってからありがたみを感じるというやつだ。


もちろん高校でも一人だった。別に無理して群れる必要はないと思ったからだ。


それはもうすぐ夏休みでみんなが浮かれてる中、いつも通り即帰宅をしている時だった。


「あ、やっと見つけた」


未だに去年のことから立ち直れてないのかと思った。


「なんで引っ越しちゃうかな〜。もー」


疲れから見る幻覚かもしれない。だって目の前にありえない人物がいるのだから。だって……


「久しぶり、瞬」




だって、死んだはずの永遠とわがいるんだから。




「……と、永遠とわ?どうして……」


「ん?どうかした?……あー、これ?なんか未練があって成仏出来ない?みたいな?」


俺の目の前で永遠とわが喋っている。動いている。息をしている。いや、もう死んでるのだから息はしてないか。

いやいや、そんなことはどうでも良くて何故今永遠とわが俺の目の前に現れた?未練があって成仏できない?ちょっと頭の整理が追いつかない。


だがそんな俺のことはお構い無しに永遠とわは話を続ける。


「だからさ、私が成仏できるように手伝ってよ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!突然すぎて状況がいまいちよく分かってない」

「あー……そだね、急すぎだよね。一旦整理しようか」


まとめるとこんな感じだった。

交通事故のあと目が覚めたと思ったら倒れている自分を見て察した。いつまで経っても現世に留まってたからおかしいと思った。そして成仏出来ないから俺を探してた。引っ越してたから俺を見つけるのに時間がかかった。

まとめてみたけど正直まだよく分からない。てか、まとめるの下手すぎだろ俺……。


「てことで瞬、私の未練?を晴らすの手伝ってよ」

「いいけど、なにか分かるのか未練ってのは」

「……さぁ?分かってたらとっくに成仏してるよ」

「それもそっか。じゃあ、もう少しで夏休みだから、明後日からでいいか?」

「うんいいよ。私はそこら辺ウロウロしてるから。明後日またここで集合ね」




ということで夏休みになりました。待ち合わせの場所に来たが、永遠とわはまだ来てない。


「わっ!」

「おわぁ!」

「あっははは!めっちゃびっくりしてんじゃん」

「そりゃするだろ、後ろ、しかも壁の中から出てくんだから……」

「ごめんごめん。んじゃ行こっか」


そう言って永遠とわは俺の手を取った。引っ張られてよろけたが、なんとか転ばないよう耐えた。


「今更だけど、なんで俺なんだよ」

「んーとね、私が見えるのは瞬だけなんだよねぇ」

「は?!なんで……」

「知らん!幼なじみだからじゃね?」

「んな、アホな……」

「それより早く行こ」


彼女に連れて来られたのは一年前くらいにオープンしたクレープ専門店だった。


「え?ここ?」

「そう。行ってみたかったんだけど無理だったんだよねぇ」

「そっか」


なるほど、未練がなにか分からないからこうやって生前の記憶を頼りに地道にやってくしかないのか。夏休み中に終わるかなぁ……。


結局、クレープ専門店じゃなかった。食べ終わっても普通に残っている。


「あはは、違ったみたい。じゃあまた明日同じところで」

「え、今日はもうやめるのか?」

「うん、瞬も夏休み課題とか沢山あるでしょ?そっちもやらなきゃ」

「でも……」

「ううん、いいの。そんなに候補がある訳じゃないし」

「そっか、じゃあまた明日な」


俺は彼女に手を振って家に帰った。


「……明日は何にしよっかなー」





次の日からも永遠とわの記憶を頼りにそれっぽい所を回りまくった。でもどれもハズレだった。


そうこうしてるうちに夏休みも残り僅かとなった。


「今日も楽しかったね」

「……お前、本当は遊んでるだけだろ」


夏休みに入ってこうして毎日永遠とわと色んな場所に行ってるうちに薄々思っていたことを聞いてみた。


「海」

「ん?海?」

「海行こうよ、瞬」

「あ、おい!」

「早くしないと置いてっちゃうよ!」

「……たく、しょうがねぇなぁ。まぁいっか」


俺の質問には答えず、永遠とわが海の方に走っていったので慌てて彼女を追いかける。


海には誰もいなかった。なので先程の疑問は忘れて思いっきり遊ぶことにした。

曇ってはいるが、雨は降らないと天気予報で言っていた。



それから永遠とわの気が済むまで遊んだ。


「あー、冷て。思いっきしぶっかけやがって」

「ごめんって」

「はは、別にいいよ。永遠とわらしいわ」


「……そんな顔すんな、ばか」

「?なにーー。うわっ!!?」


永遠とわが謝ってきたので笑って許したら、また水をぶっかけてきた。しかも顔に。


「おまっ……目にかけんなって!!痛ぇ!!」

「瞬、瞬」

「あ?なんだよ」


見ると、彼女は目にいっぱいの涙を浮かべていた。





「私ね、瞬のこと好きなんだぁ」





それを言うと永遠とわは、フッと俺の前から姿を消した。





少しの間呆然としていた。


「……未練って」


頭が回ってきてようやく気がついた。


「はは……」


きっと永遠とわは最初から未練がなにか気付いていたのだろう。


「お前もひでぇよなぁ、最後にそんなこと言って消えるとか……」


自然と涙が溢れてきた。そのまま浜辺に倒れた。


「聞けよ、永遠とわぁ!」


俺は、いってしまった永遠とわにも聞こえるように大声で叫んだ。






「俺だって……大好きだよ……!!!」






俺は、永遠と過ごしたこの夏休みの、今までの思い出を永遠に忘れない。

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君との思い出は永遠に @Syaro0507

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