1月25日
ハナちゃん、俺の眷属じゃ無いのかも、あの夢はヨグじゃん。
『ヨグー』
返事も反応も無し。
気配も、ココには無いんだけどなぁ。
「おう」
『わっ!もー、いつから居たのよ』
「今だが」
『ヨグの門、観た?』
「いや、何の事だ?」
『観て無いなら良いや、ハナちゃんの夢の事だし』
「あぁ、今日がその日か」
『今日は何が起き』
また消えられた。
早送りは出来ないし、俺にまで内緒だし、本当に何なんだろココ。
目を覚ますと、エミールの髪をモシャモシャと食む白い馬。
アリコーンか。
ハナの驚き顔が見れたので、コレはコレで面白い収穫だな。
『おはようございます…あの、今のはアリコーンですぅ…』
「おう、おはようナイアス、タケちゃん」
「おう、凄かったな」
「おはようございます桜木様、武光様、珍しい神獣です」
「おはようミーシャ、凄いね今の、全部乗せ欲張りセットみたいな」
アリコーンの捻り角が変形し、卵の形になっていく。
コレも、ハナが魔法を深く信じる切っ掛けだろうか。
「卵か」
「だね、大きい、賢人君は?」
「連絡用にアヴァロンに居ます、ココは電波が届かないので」
「なるほど」
「なら帰って来るまでストレッチだな」
「ふぇい」
エミール用に面白い程に硬い部分は残したいが、コレでは怪我をし易いし。
迷い所だな。
ギュッギュとタケちゃんにストレッチさせられていると、エミールが起きた。
『ん…あ…あの…これって…』
「おはよう、エミールの神獣の卵よ」
『おはようございま…え、と、卵?神獣の?』
「カールラもクーロンもそうやって産まれた、サイズが随分と違うけれど」
「俺のもだ、かなり小さい」
『そうなんですね…本当に…心音が聞こえます』
「ナイアス、ナイアス、アリコーン死んだりしてない?大丈夫?」
『はい、大丈夫です、角はまた生えますから…』
「そっか」
『おはようみんな、朝ご飯にしましょ!』
朝食は今日もエイルやヴァルキュリア達が用意してくれた。
マッシュポテトにサラダ、目玉焼きに謎肉スープ、謎肉ベーコンにサーモンのムニエル。
そして数種類のパン。
昨夜のワイルドな食事とは一転、シンプルイズお洒落メニュー。
「エミール、サンドイッチ的なモノにまとめちゃう?」
『お願いします』
マッシュを伸ばし、ムニエル、サラダの順に挟む。
もう一つはサラダ、ベーコン、目玉焼きを挟む。
色々試した結果、柔らかいパンにマッシュ少しとムニエル、ベーコンサラダに目玉焼きと、シンプルなモノに落ち着いた。
「『「ごちそうさまでした」』」
後片付けを手伝う間も無く、人海戦術で皿が片付けられ。
食後暫くはゆっくりしろと暖炉前に案内された。
そして暫くしてエイル先生指導の元、徹底的に歯磨き教育。
歯を褒められた。
髪と歯は良く褒められる。
「うん、確かに良い髪と歯だな」
『何よ、切らせた癖にぃ』
『え?』
「備えと変装の為だ、もう伸ばすよな?」
「うーん」
『えー、伸ばさないの?折角の良い髪の毛なのにぃ。あ、伸びる薬作りましょうか、凄い不味いヤツ』
「普通に伸ばします」
『じゃあ、薬の調合タイムね』
ココでやっとハナはエリクサー作りを覚える筈だった、たった数日の短縮だが、少なくとも俺は助かっている。
ハナはエリクサー作りへ、俺はアヴァロンへ。
鍛錬より、今は無色国家だ。
「どうだ」
「良く無いっすねぇ、出ちゃってるんすよ。証拠が」
「国連の人間か」
「残念っす、本当に」
「あぁ、まだ泳がせておけ。根っこまで全て取り去る」
「うっす」
そして例の予知夢。
辛いが、見てくれるだろうか。
「日本の転生者に会えるだろうか」
「自国のは良いんすか?」
「追々な」
「今日、大丈夫そうっすけど」
「なら、行くか」
転移魔法で省庁近くの建物へ。
「な、もう使えるんすか?!」
「内密に頼む」
「うっす」
小さな転生者。
しかもまだ、最年少の転生者の事は知らないだろう。
「おう、中つ国のか。何の用なんだ?」
「少し、内密に話がしたい」
「コッチだ、ただ監視は付くぞ。お前は」
「まだ信用度が足りないんだろう、構わん」
魔法も魔道具も禁止された区域に、銃火器を持った警備の人間も連れて入る。
警備を信頼しての前提だが、信じるべきかどうか。
「大丈夫だ、人相学に占星術に嘘発見器と色々試して残った人間だけだ。それでももし裏切られたら、神の加護が消え失せたって事だろう」
「成程な」
「で、何だ?」
「無色国家が影響を及ぼしている」
「らしいな、資料で上がって来た。最年少の転生者の事もな」
「例えばだ、旧米国に召喚者まで来たら」
「大罪の事も有るんだ、馬鹿なら間違い無く国家擁立。最悪は各国でテロだろう」
「あぁ、それを懸念している」
「どうしてこう、平等主義者は何でも平らにしたがるんだろうな」
「自分は頭が良いと信じているんだろう、だからこそ上に居る人間が許せない。正義と自由を過信し、先を見ない。誰でも、何かを間違う遺伝子でも入っているんだろう」
「悲観的だな。資料では、もっと明るく朗らかな人間だと思ってたが」
「何処にも聖人君子なんて居ない、居たらそれはもう神だ。俺も、調子に乗ってた時期が有るんでな、恥ずかしい限りだがな」
「向こうの、まして男なんだから仕方無い」
「そう思える様になると良いんだがな。お前はハナをどう見る」
「ビビり、慎重で心配性な病弱」
「俺を戦闘要員だと思うか?」
「どうだかな、強いらしいのは知ってるが。厄災の中には災害も入るから強さだけが最強だとは思わんが、良い指導者に見えるぞ」
「そうか。俺は帰還希望だが、ハナは残る。アイツを頼む」
「グーグとしてか?」
「あぁ、仲間でグーグだ」
「おう、分かった、努力する」
「念の為に魔石を預ける、お前も身を守れ」
「おう」
少しばかり買い物し、アヴァロンへ戻るとハナが泉で眠っていた。
俺も、少し休養しておくか。
一瞬、夢か現実か分からなかった。
映像は鮮明、夢見の精度は上々。
ナイスグロ。
良いなぁ。
俺もこんな眷属欲しぃ。
ハナが予知夢を見た。
見せないで良いモノなら見せたく無い、だがハナの夢見の性質をココの人間に理解させる為には、見て貰うしか無い。
「ごめん、ありがとう、大丈夫、ちょっと凄い夢で」
「おう、気にするな。酷い夢だったんだろう」
「叫んでましたよ、何か飲みますか?はなちゃん」
「うん、メチャグロ」
「あの、桜木様、柏木さんと繋いでも大丈夫っすか?」
「話せるか?」
「うん」
「うっす」
【桜木様、事情は少し伺いましたが、詳しく聞かせて頂いても?】
中身は同じ夢だった。
コレでピクニック恐怖症になり、天気が良い日にすら憂鬱になる。
知らしめる為とは言え、すまないハナ。
そして話し終えた後も、寧ろ余計に不安が増した様子で。
今なら心配する気持ちも分かるが、この頃は、夢は所詮夢だと侮っていた。
「メイメイ、もっと気持ちを言って良い。相談相手と言ったら誰だ?誰に話したい」
桜木様は武光さんの助言に従い、クエビコ様の元に向かった、魔王とクーロンだけを連れて。
そして俺らも、隠れて着いて行く事に。
(良いんすかね、こんな事)
(あの夢は予知夢かもしれないんだ、魔王が居るとは言え独りにはさせられないだろう)
(そうっすけどぉ)
(アレが真に人見知りから抜けた状態だろう、良く観察しておけ)
確かに凄いニコニコして、クエビコ様すら茶化しちゃって。
しかもショナさんに嫌われるのが嫌だとか、大罪の話になったり、子供の話になったり。
そうしてまたショナさんの話に。
(もう、めっちゃ気になってるじゃ無いっすか)
(あぁ、だがショナ君は気付いて無いんだ。絶対に言うなよ)
(うっす)
初めて殺されるかと思った、ビビったぁ。
そして前の世界の話になったかと思うと、今度は魔石の話、ストレージ、温泉の話からスクナヒコ様が出現し、アヴァロンへ帰って言った。
「すまなかったクエビコ神」
『アレを試すのだろう』
「あぁ、果ては俺の為、コイツの為、世界の為だ。それでドリアードの許可を頼みたい」
『ココでだけなら良いだろう』
《ふぅ、すまぬな、宜しゅう》
『あぁ』
「早速だがハナを少し引き留めてくれ」
《ふむ、任されよう》
「俺にもアナタの能力を貸して欲しい」
『無色国家の事か』
「あぁ、頼めるだろうか」
『分かった。その小枝を持って行くと良い、加工も好きにしろ』
「感謝する」
ハナより先にアヴァロンへ帰り、ハナを待つ。
ちょっとドリアードにゴネられたが、アヴァロンへ。
《お疲れ様です、お帰りなさい》
「ただいま、こちらがスクナヒコさん」
『スクナヒコだ、宜しく』
《お話は伺っております、宜しくお願いしますね、ティターニアです》
「後は、オベロン?」
『おう、許可する』
『うん、スクナヒコだ、宜しく。それで、何処に』
《ちょっと待ったぁぁあああああああ!》
「え、誰」
《あら、ノームさん、お久し振りですね》
《あら、ちゃうわ!ワシの土地で何させるつもりじゃティターニア》
《ノームさん人間がお嫌いでらっしゃるし、お家が出来た時もいらっしゃらなかったので、てっきり協力は見込めないと》
《勇者は別じゃい!》
「女で勇者じゃないけど良いですか?」
《お、おおおん!?お前アレか、召喚者か?!》
「はい、桜木花子です」
『スクナヒコだ』
「魔王ですどうも」
《魔王!?なんでこんなんがおるんじゃぁああああ?!何でなん?召喚者、闇落ちしてしもたん?》
《もう、ちゃんと通達したのに》
「闇落ちしてません、最近の魔王は無害化されてるんで、つるんでます」
《そうなん?ホンマに大丈夫なん?》
『クーロンより弱いの、殺せないけど弱いの』
《はぁー!可愛い竜ちゃんやないの!飴ちゃんあげようか?魔石がええか?》
「魔石て」
《ノームは金属と鉱石、キノコの精霊やぞ!魔石なんぞいくらでも出せるわい!》
「キノコ、マイタケ」
《マイタケっちゅうんは東のキノコやんな?好きなん?自分》
「好き、次点でナメコ、キクラゲも」
《なんや、ポルチーニは?トリュフは?》
「ごめん、あんまり好きでない。オリーブオイルも好きじゃない、ソバも、臭いがムリ」
《なんでや!美味しいやろが!》
「苦手はしょうがないじゃろが、東のキノコ食べた事あります?」
《無い!》
「もし美味しかったら魔石と交換しません?」
《お!今あるんか?》
「無い、今は」
『ハナ、今から貰って来てやろうか?』
「良いの?何処から?」
『知り合いにキノコの神が居る、西の神に食べさせると知れば喜ぶと思う』
《おう!気前良い奴やな!ワシの許可無しに温泉掘ろうとしたのは許したる!》
『うん、じゃあ行ってくる』
「ちょま、一緒に行こう」
『うん』
再び魔王に空間移動させて貰い、スクナさんの言う近江の方。
草津近くの、クサビラ神社に向かった。
キノコ神かぁ、コイツ食ったら美味そうだよなぁ。
お、日本の神様じゃん。
ほぉ。
少し昼寝をしていたせいか、すっかり良い匂いに包まれていた。
と言うか、ハナに嗅がされていた。
「美味そうだな」
「召し上がれグーグ」
うん、美味い。
《旨い!やるやん自分!》
『ハナが居たから沢山くれた』
「そうなの?」
『キノコと雷は関係ある、鉄線て花も、ハナは花で雷でキノコだ』
《せやねんな、無下にでけへんけど、恐いんや、女はもう魔王より恐いわ》
「しゃーない、で、魔石は?」
《あんさんに渡すの恐いねん、でも渡したいねん、けど恐いねん》
「なら俺とエミールが受け取る、それを自由にする分には良いだろう?」
《それやったらええけど…》
『なんだ、ハッキリ言えバカ』
《…本当はハナがええねん、でも…》
「別に魔石は他を当たるんで良いですよ、無理は良くない」
「だな、無理は良く無いぞ」
《そんな殺生な…》
『アホ、バカが』
「魔石は俺達で」
「温泉の許可とキノコ栽培だけならどうです?しかも、ノームさんが食べたいだけ生やして、残ったのを勝手に貰うとか、直接の譲渡じゃ無くなるんだし。生やす範囲は指定するけど」
《…ええの?…それ、やらせてくれるん?》
「キノコの精霊とか神様って中々居ないかと、キノコ好きだから、ココでも沢山食いたいし」
《嫌いでもええのん?》
「ちょっと嫌だけど許す、困らないし、家にキノコ生やしたら永久ミンチだけど」
《そんなんせんわ!……やらしてもらいます、温泉も許可します…魔石も男の召喚者に……土瓶蒸し美味しかったですわ、もう会われへんけど、堪忍な》
「うん、ありがとう、さよなら」
「おう、感謝する」
「複雑なんすねぇ」
テンション高いし、まぁ、良いかなコレで。
もう今ので疲れたし。
『うん、良いのが掘れそう』
「消えたな、キノコを残して」
「フェアリーリングっすね」
《すまんの、強情なやつで》
「いいよ、しょうがない」
《お主は、嫌われるのは嫌では無かったのか?》
「本当に嫌われてるのは自分じゃないし、嫌う理由があって明確で良い、全然おk」
《お主が気にせんなら良いんじゃが》
「ありがとう、マジで全く気にならない」
『豪傑』
「オベロンそれ褒めてる?」
『半分褒めてる』
「そうか、半分なら良い」
『ハナ、温泉どうする』
「塩っぽいの以外で、後は任せた」
『わかった、任されよう…【ココは良い土地、清い土地、良い土地には良い温泉、穴が空いて、湧いてくる、涌いてくる、沸いてくる…】』
薄い赤茶色の温泉が湧くと、さっきまでゲラゲラ笑っていたおっさん達が真面目な顔になり、黙々と木と岩で大浴場を作ってくれた。
取り敢えず、お酒の追加を進呈。
《まぁまぁ、何て素敵。妖精も生まれて、まぁ可愛らしい》
『これは含鉄泉。それは温泉の守りだ、綺麗に使えば綺麗にしてくれる。どんな薬効も、言えば調整してくれる』
「ありがとうございます。1番風呂どうです?」
『皆で入ろう、それが一番楽しい』
「だな」
「お、タオル巻いて良い?」
『うん』
《では、呼んでくるかの》
各々がタオルを巻き、温泉へ。
うん、今回はショナ君が居なくて良かったかも知れんな。
『溜まらんなぁ、酒が欲しくなってきたぞハナ、出してくれ』
『飲み直そう、酒は百薬の長』
「はいはい、賢人君さっきのある?」
「はい、どうぞ…にしてもまさか混浴なんて…しかも世界樹で…」
「コレは、飲めるのか?」
『うん、ハナの体に合わせた。酸っぱくも臭くも出来る』
「今はやめとこう、エミールは大丈夫?痛まない?」
『大丈夫です、瞼が少しジンジンしますけど、エイルさんが大丈夫だって』
『そうだな、瞼は僕でも見れるが大丈夫だ、良い医者に出会えたのだな』
『はい、とっても』
『うん。ハナは何故、治さなかったのか』
「エミールが治ったらお願いしようと思って」
『そうか。後は魔力か、未だ足りて無い』
「エリクサーを自分で作って飲んでみたけど、かなりの量が右から左へで」
『そうか、試したい。ハナのだ』
「おう」
仙薬の試飲に始まり、そして膜の話へ。
「俺も見立てて欲しい」
『お主は健康そのものだ、膜も柔軟で良い』
「見た目通りだタケちゃん」
『ふふ、目が見えるのが楽しみです』
「エミールはどう?」
『少し固いが良い膜だ、鼻と耳が鋭い、大事にするといい。狩猟は目だけでは無いそうだからな』
『はい!』
『ハナは薄くて柔らかい、目が悪いのが心配だ、早く治って欲しい』
「ごめんね、早く治すよ。ありがとう」
『うん、もう人は先に上がると良い。コレ以上の入浴は良くない』
「うん、またね」
事態は少し早く動いたのか、運命の範囲内なのか。
魔王の件で柏木卿から連絡が来た。
「俺も行く」
「いや、ちょっとオススメしない」
「大丈夫だ、俺も最悪を想定している」
「分かった」
省庁に向かうと、早速本題へ。
「魔王の件、許可が下りました」
「何でまた、早い」
「シュミレーションが成功したんです、分裂の。桜木様の言う様に魂を分裂させ、器に入れるだけであれば、高い確率で成功します。ですが」
「定着?」
「はい、定着せず消えてしまいます。魔王の分裂体も、全て」
「…名付けた?」
「いえ!そうですか、名付けですか…少し相談して参りますので、応接室でお待ちいただいても?」
「どぞどぞ」
「桜木様、多分時間掛かると思うんで、何か食います?」
「だね、適当に頼む。エリクサー飲むから」
「うっす。万能薬ってそんなヤバいんすか?」
「飲む?」
「良いんすか?じゃあ、1滴で」
「お、勇気あんね、では…」
「ごっ…」
「息して」
「く、ひゅ…ショナさんが…ヤバいって……マジ…ヤバいっすね…」
「もっといっとく?」
「マジムリ」
「万能薬パネェ」
「桜木様もパネェっすよ…この味を大量に…」
「良薬口に」
「苦いってレベルじゃないっすよ、マジ、甘いの出します?」
「いや、エイル先生のも有るし大丈夫。コレは、しょっぱいのと水を少々頼む」
「アレの場合はマジでクリーム系っすね、コレあんこじゃぜってー消えねぇ」
「そうそう、ジュラのチーズケーキ、マジで助かった」
「ジュラさんのケーキ、マジ旨いっすよね…このケーキ1個良いっすか?」
「どぞどぞ」
「ふふ、賢人君にはお茶を淹れましょうかね」
「あざす」
「いくぜ、自家製エリクサーの一気飲み」
「それ美味しい方じゃ無いっすか」
「ちゃうの、失敗作、凄い酸っぱくなったの」
「うわぁ…匂いは良いのに」
「最早梅酢、胃が溶けそう、ほら」
「…ヤベェ、ヨダレとまんねぇ」
「へへ」
「ひひ、桜木様の失敗作もパネェっす」
「だろぅ…柏木さんのお茶に混ぜるか、苦いの」
「良いっすね、めちゃんこ元気になってくれるかも」
「これこれ、お2人とも」
「冗談冗談、ね」
「そっすよ、ね」
資料を見ながら聞いていたが、不味いな。
ショナ君の居場所が無くなるのは困るんだが。
「ハナ、もう医神は調べ終わったのか?」
「あ、まだだったわ」
「そうか、俺も茶を頼む」
「うっす」
そして運命が恒常性を取り戻したのか、会議が難航し、魔王の事は後日となった。
そしてユグドラシルへ行き、ハナとエイルの話し合い。
ココは前回同様穏やかに収まり、メソポタミアの聖域へ。
「…あのー」
『やっと来たか、エリドゥのエンキだ。やっと目を治す気になった様だな』
「すいません、お待たせしました。桜木花子です」
『うむ、お前だけだ、他の者は帰れ』
「桜木様」
《ご主人様》
「大丈夫、事情を説明してきて」
『案ずるな、きちんと治す』
「はい、宜しくお願いします」
《はい、ご主人様、お待ちしております》
ココでハナはより高度な治療魔法、殺す為の技術を教えられる。
そうして次にやっとストレージゲットだ。
ヨグの門。
やっとか。
勿体ぶっちゃってさ、俺ならササッと渡しちゃうのに。
あー、精霊っぽいのが。
ココにすっかり染まっちゃって。
いや、そもそも同一個体なのか?
俺が多次元的なのは確実だけど。
つかアイツ、何やってんだ。
ハナの治療を待つ間、俺は虚栄心の元へ。
先ずは俺の女用の服を発注。
「あら良い女じゃない」
「おう、頼む」
こうなって初めて、男の俺は母親似なのだと実感した。
そして女では父親似。
そこまで容姿を気にした事は無いが、子供の顔が心配になるな。
「何よ、言いたい事が有ったら言いなさいよ」
「子供の顔は今まで気にして無かったんだが、気になるものなんだな」
「父親の気を引く為に、最初は父親に似るのよね。庇護を得る為に進化した遺伝子の不思議か、脳がそう思う人間だけが生き残ったか」
「またはその両方か。気持ちは脳からホルモンに支配され」
「脳は簡単に騙されるのよねぇ」
「俺の、この状態の処女に価値は有るんだろうか」
「時として価値は作るモノよ」
「あぁ」
何にしてもイメージか。
難しいな。
ハナは簡単に紫苑になり、紫苑を好きになっていたが。
こう意識してしまうと、俺には訓練が必要そうだ。
「はい、じゃあ連絡は」
「俺に直接頼む」
「そんなに、大変そうなのね」
「更に追加で召喚者が来たんだ」
「あらー」
「ただ、それもこれも念の為の用意に過ぎないんだがな」
「慎重な子は好きよ、この世界をお願いね」
「あぁ」
それからやっと戦闘訓練。
汗を流しに泉へ行き、エミールと話しをする。
『お疲れ様です』
「何か不便は無いか?」
『いえ、慣れてますから』
「それ以外でだ、欲しい物は有るか?」
『洋服ですかね、自分で選んで自分で着て。あ、でもお金って』
「国から出るから問題無い。それにまだ子供なんだ、大人の俺とハナで何とかするさ」
『でも、帰っちゃうんですよね?』
「だな、エミールはどうするんだ?」
『帰ったら目が戻っちゃうんですよね』
「だろうな、記憶も無くなるらしい」
『でも、戦争とか有るかもなんですよね』
「あぁ、災害かも知れない、人災か戦争か。ただもう3人も居るんだ、役割分担が有るかも知れん」
『タケミツさんの役割って、何だと思いますか?』
「そうだな、補佐かも知れないし、誰かを導く役割かも知れない。前の世界の評価や立場を取っ払って考えるべきだと思ってる、だからな、分からん」
『因みに、僕って何が役立ちそうですかね』
「そら無限大だろう、生きてる限り可能性が無数に有る。勿論、自分が望む役割に回っても良い、要はやる気だ」
『うーん』
「悩むのは治ってからだ、新しい世界を見て感じて、調べて考えてだ」
「お、エミール起きてる」
『ハナさん、おかえりなさい』
「お帰り。どうだ、酔ったか?」
「大分マシになった、お腹空かない?」
『空きました』
「よし、行こう」
少しだけ進行速度が早まって、ズレている。
本来ならエイルに会えないまま、ハナは就寝していた筈だ。
『うんうん、やっぱ治し方が違うよねぇ、私は物理的に治す感じだから勉強になるわー』
「こんな、ほやーんとした説明で分かるもんです?」
『そりゃね、ちょっと見れば、どれどれ』
コレは明日の朝に起こる事。
コレは、チャンスなんだろうか。
「ストレージは。精霊か、それかアクトゥリアンか」
『アクトゥリアン?』
【はいはーい!アクトゥリアンですよぅ】
「ひゃぅ」
『大丈夫よ、ウチにも挨拶回りだって来たけど無害認定したから問題無いわ』
「と言うか、外見だろう」
『外見?』
「どう見ても銀色の宇宙人」
【はい!宇宙人です!ストレージをご希望ですか?】
「その前に外見をだな」
『あーダメダメ、もう少し先にして。ある意味それも魔力とか魔素だから』
【はーい】
「実はな、ウッカリ名前を呼んで少し前に会ってるんだ」
「ほうほう」
【あ、ハナちゃんアップデートします?】
「アップデート?」
《追加は可能です》
「弊害は無いんだろう」
【勿論ですよ、精度を上げたりって程度ですから】
「じゃあ、まぁ、はい」
『エミールは少し後ろを向いててね』
ココでも小指か。
【はい、終わりました。では、また今度ー】
「パッと消えるのね」
『楽しみだなぁ』
食事を終え、3人で泉へ。
一抹の不安は有るが、もう眠くて仕方無い。
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