1月26日

 起きて先ずはハナのストレッチ。

 それからエミールが起きたら朝食、そしてハナと泉の倉庫へ向かい、分割でストレージに収める。


 次はニーダベリル。


「ベリサマ、お邪魔してます」

『やぁ、良く来たね、戦闘の相談?』


「うい、銃とかある?」

『あぁ、こっちだよ、おいで』


 俺には要らないと、どうして思えたんだろうか。

 強がり過ぎだろうに、恥ずかしくて堪らない。


「タケちゃん、どうしようか」

「ハナが預かっていてくれ、戦闘スタイルも確立されて無いんだ。色々試すのには良い条件だろう」

『そうね、色々試すのが1番よ』


「ただ、剣は多少だが預からせて欲しい。少ししか刀剣を扱った事が無いんでな」

『じゃあ、ハナ、手を出して』

「へい」


『ちっさ』

「本当だな」

「もー、なんすか」


『ごめんごめん、ハナに合うサイズチェックよ』


 小野坂の手の平サイズは思い出せないが、ハナに殆ど返していたんだし。

 俺が小野坂のフォローをしっかりすれば、大罪化しない筈。


「半分以下かぁ」

『よしよし、こんな小さい子は想定外なのよねぇ』

「小さいは可愛いだぞメイメイ」


「へーい」

「よし、先ずは見て触ってだ。ハナの補助をお願い出来るだろうか」

『勿論よ』


 ハナが武器を触り比べている間に、俺は戦闘訓練。


 刀剣での戦闘は想像以上の緊張感。

 だがどうしても、堪らなく楽しく感じてしまう。




 ベリサマに色々と教えて貰いながら武器を見て触っていると、タケちゃんの腕が飛んだ。

 武器を持った腕だけが、飛んだ。


「タケちゃん!」

「おう、調子に乗った。治してくれるか?」


「治す治す、待って待って」

「大丈夫だ、脇下で止血してる」


「おう、がんばる」


 先ずは痛覚を切って、太い血管を止血。


 骨、それから太い血管。


 それから。


「痛く無いから大丈夫だ、効率は考え無くて良い」

「うん、すまん」


 あぁ、骨膜も繋げないと。


 皮膚を何ヶ所か繋げて、筋肉、筋膜と。

 細かい神経が繋がって、血管も繋がった。


 皮膚の下の繋ぎ忘れをチェック。


 チェックオッケー。

 それからやっと皮膚を全て繋げて、全体の再チェック。


 痛覚を戻す。


「うん、問題無さそうだな」

「一応、エイル先生に見て貰わない?」


「いや、それは後だ。もう1戦だ、補給しといてくれよ」

「ちょっ」

『何事も練習練習、さ、飲んで飲んで』


 それからはもうヒヤヒヤしながら戦闘を見守った。

 そして軽症ならストレージのエリクサーを霧状にしてぶっ掛け、重症なのに続けようとするタケちゃんを止め、治す。


「ストレス、刃物は休憩してくれ」

「すまんすまん、つい楽しくてな。次は肉弾戦にしておく」


 コレでやっと一安心。

 そして素晴らしいのがソラちゃんの射撃精度、意図を酌んでくれて補正されている。

 修正しないでも成功してしまう。

 心強い。


 ナイス、ソラちゃん。


【ありがとうございます。武器も飛ばしてみましょうか】


 危ねぇなぁ。


【盾なら如何でしょう】


 ん、良いかも。


『そうそう、武器は決まった?それともまだなら魔法の練習する?』

「ありがとうございます、魔法は…武器でも良いんですけど、何か、攻撃的なのあります?致命傷負わせられるの募集中です」


『致命傷ねぇ』




 ハナの方は本来と同じ流れになった。

 俺の方は、体が付いていかない。


『惜しいな、実に惜しい』

「すまん、最近怠けていてな」


『休憩しろ、序でに治療もして貰え』


 助かった、久しぶりに全身が悲鳴を上げている。


「ハナ、すまん」

「おう、もう大丈夫、さっきのはビビっただけだから」


「はぁ、まるで鍛え始めた頃みたいだ」


「目を離した隙に全身ボロボロ」

「ついな、止められるまでやるのが癖でな」


「嫁さん大変だろうに」

「あぁ、もう見ない様に言ってある。代わりに子供の為の映画を見てくれと、向こうの親にも頼んである」


「早く教師になっちまえ」

「おう」


「はい、どう?」

「うん、早くなったな」


「出来たら一瞬で治したい」

「俺の体も良いが、そろそろ筋トレするか」


「ふぇーい」




 ハナがレーヴィ式と言っていた筋トレ、自重で出来るだけ遅くスクワット、クランプに腹筋。

 回復しては筋トレを繰り返し、猫背改善の兆しが見え始めた。


「よし、コレ以上は他の部位に支障が有るかも知れないんでな、終了だ」

「ふぇーい」


「少し休憩して、飯にしよう。さ、温泉に行くぞ」

「はーい」


 浮島でスクナ神に診て貰い、ハナを先に入浴させ、カールラを呼び戻す。


「桜木様、乾かすっすよ」

「よろしこ」


「よし、行くか。任せたぞカールラ」

《はい》


 そして入浴後にはヴァルヘイムへ向かい、食事。


 そしてハナとは少し離れた場所で、休憩。


《暫く話をするでな》

「あぁ、邪魔はしない」


《今回は聞かぬのか?》

「教えてくれるのか?」


《マーリンと、戦争の話じゃ》

「そうか、あまり脅してくれるなよ」


《分かっておるわい》


 この後は、エジプトか。


「何か有ったら起こしてくれよ」






 平和なんだよなぁ。

 つまんねぇなぁ。






 ハナに起こされ、いざエジプトへ。


 今回はハナと賢人と俺とカールラ。

 神殿やピラミッドが聖域、その聖域が世界樹の役目を担っている。


 マントが無かったら結構冷えるな、地上は。


『いらっしゃい、召喚者』


「どうも初めまして、さk」

『ダメよ!真名は言うべきでは無いわ、こちらはあだ名で呼び会う習慣なの』


「あ、っとチェリコです。コッチは…ケー君?」

「うっす」

「タケちゃんだ」

《カーちゃん?》


『良いでしょう、宜しくお願いしますね。イシスです』


 足飾りや腕輪は通行証、印籠らしい。

 そして武器はハナに渡し、香油は分け合う。


 そしてハナの青い蓮の花、悪夢を払い、寝坊しないお守りらしい。

 知らなかった、もし次が有れば。


 いや、次が有る等と思えば油断しかねない。


「いきなりありがとうございます、でもどうしてこんな?」

『エリクサーを回収して下さったお礼です』


「あぁ…あの話」

『はい、戦闘態勢は解除されました。豊かになるのは良い事ですが、生態系を崩されるのは困りますから』


「マジだったのか」

『えぇ、それに、大事なお話があったのでは?船上女子トーク、いたしましょう?』


「え、あ、はい」


 言われるがまま二手に分かれ、夕暮れに染まる船に乗り、牽引される。


 あぁ、実に良い景色だな。


「良い景色っすねぇ」

「あぁ、是が非でも守らんとな」


「うっす」


 神々の役割を奪うのは勿論、ハナの役割まで奪うのは良く無いとは思うのだが。


 代わってやりたかった、だから代わる。

 その対価が怖いが、リカバリー出来る力と知識を得るしか無い。




 イシスさんと話したお陰か、かなり落ち着けた。

 明日は、神様に体の事をお願いしようか。


 エジプトから日本の町へ、食べたいモノを食べたいだけ食べ。

 買い出しをたっぷりとしてから、ヴァルハラへ。




 ハナがエリクサーを作り始めたので、ニーダベリルで受け取った銃をエミールに1つ1つ握らせる。


 うん、良い笑顔だ。


「好きか、射撃が」

『はい、野蛮だと思いますか?』


「いや、闇雲にただ狩るワケじゃ無いんだろう?」

『はい、ちゃんと食べます。鹿って食べた事有ります?』


「そう言われると、無いな」

「ワシもー」

『美味しいんですよ、ステーキ、筋の煮込みも』


「たべたい」

「だな、狩りには体力も必要だろう」

『はい、ストレッチ、手伝って貰えます?』


「あぁ、勿論だ」


 銃の吟味が終わって直ぐに、エミールのストレッチと筋トレを手伝い、夕飯へ。


 まだまだハナは食べられる。


 あぁ、どうしてこうも眠いんだろうか。

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