2周目。

1月22日

 タケちゃんはまだ起きず。

 先ずはバイキングで腹拵えし、ミーシャに改めてご挨拶。


 そしてユグドラシルのエイルさんの元へ。


『あらー、魔素切れね。うん、点滴もちゃんと入ってるし大丈夫。って言うか、大丈夫?』

「すみません、酔いますねコレ」


《酔われましたなら、気を紛らわせるお話を》

《少し長い、ラグナロクのお話を……》


 タケちゃんの事が気になりつつも、ココのラグナロクの話を聞いた。

 何か少し違う気がするが、ココにはココの神話体系が有るんだろう。


「すみません、ありがとうございました」

『いえいえ、じゃあ泉に行って寝かせましょ』


 ココはロキ神も居るからなのか、魔王も出入り自由。

 それでも取り敢えずはクーロンにタケちゃんを抱えて貰い、泉へ。


 そしてエリクサー作りを教わっていると、タケちゃんが起きた。


「おぉ、エリクサー作りか、すまんな」

「いえいえ」


「メシは食ったのか?」

「うん、タケちゃんも、はい、先ずは貰った桃」


「うん、頂く。うまい」


「ね、1個貰っちゃった、仙薬も少し」


「問題無い、家族ならもう共有財産も同然なんだ。困った時はお互い様、だろう?」

「うん」


「が、すまんな、もう少し困らせる事に、なる」

「眠い?」


「あぁ、だがハナ、お前にはやる事が」

「うん、おやすみ」


 桃を平らげ、仙薬を飲んで撃沈した。

 コミュモン、もう心配してくれて、凄いな。




 今回は対処が早かったお陰か、また直ぐに起きれたが。

 今日はたしか、ショナの交代が告げられる日だった筈だ。


 そしてハバスにも。


 俺の心残り、ハナとショナの問題。

 かと言って迂闊な事は出来無い、様子を見つつ、少しずつ変化させるべきだろうか。


「すまんなハナ」

「いえいえ」


「そっちの国にも挨拶に行きたいんだが」

「大丈夫?」


「もしダメなら、またどうにか頼む」

「分かった」


 何とか覚醒状態で柏木卿に挨拶し、ショナとハナが交代の事で揉め始めた。

 あぁ、もう本当に、最初から好きだったんだな。


「まぁ、休みは必要だろう、俺も含めてな」

「ほらぁ」

「ですが、この状態では」


「プライベートを充実させるだけで無く、市井の状態を伝え、興味を持って貰うのも役割なんじゃないか?」


「…はい、分かりました」

「タケちゃん凄い」

「お前もだ、そんな真面目だと禄に息抜きもしていないんだろう」


「ぐっ」

「柏木卿、俺はハナの休暇を優先させたいんだが。良い場所は無いか?」

「お近くですと…ココの、ハバスの滝と言う場所が魔素が濃いそうですので、行かれてみては?」


「うむ、俺も、後は頼んだ」




 裁定者感が凄い。

 こんな教師が居たら、ワシもうちょっと素直だったかも知れん。


 タケちゃんをクーロンが抱えつつ、タブレットに送られた座標近くに転移させて貰った。

 その魔王曰く、ドンピシャの場所は結界で守られているのか、転移出来ないそうだ。


 赤土の山肌と真っ青な空、細長い道には細々とした木々が生えている。


 ドリアードと戯れつつ暫く歩くと、煙が。

 そしてテントも。


 ご挨拶すると、ココの主っぽい方だった。

 神獣達を水浴びさせてくれるし、お茶は淹れてくれるし。


 鮭の薫製とベリージャムを進呈、受け取って貰えた。

 うん、緊張するけどタケちゃんが居るから安心も出来る。


 お腹に響く様な滝の音、風で木が擦れる音、焚き火の弾ける音。


 水の匂い、土の匂い、火の匂い。


 良い天気で日向はとても暖かい、たまに冷たい風がそっと吹いて、それがまたとても気持ちいい。


 不思議だ、大人はこんなに、こなせるんだろうか。




 どうやら今回は俺が先に起きたらしい。

 夢も見ない程に深く眠ったらしく、目覚めは良い感じだ。


 起き上がると、空も山も赤く染まっていた。

 ハナの見た光景そのまま。


「おはようございます武光さん、気分はどうですか?」

「うむ、良い感じだ。すまない御老体、長居してしまったな」


『良い、いつでもここへ来いと。そう伝えておいてくれ』


 そう、神々の触媒は本来ハナの役目。


「はい、ありがとうございます。伝えておきます」


『良く備えよ、小さき者たちよ』


 そう告げると、老人はテントに消えていった。

 この最後の言葉を伝えるべきか、繊細で真面目なハナに。


「ショナ君」

「はい」


「今の言葉も伝えるべきかどうか、俺は正直迷っている。この子は、夢見でもあるのだろう」


「はい、繊細な部分が有ると」

「うん、ただな、嘘や後ろめたい事は避けたいな。様子を見て、告げようと思う」


「はい、お気遣いありがとうございます」

「良いんだ、メイメイの為だ」


 ひいては世界の為。

 お前達が幸せになる為だ。


「あれ、おはよう」

「またいつでも来いと言って頂いた。さ、戻ってメシにしよう」


「おー」




 折角ホテルに着いたのに、またタケちゃんは眠ってしまった。


 ミーシャと魔王にお留守番をして貰い、ビュッフェへ。

 ビュッフェ大好き。


 そしてタケちゃんのお陰か、焦燥感は若干減って色々と落ち着いて調べる事が出来たが。


「桜木さん、そろそろ」


 ハマった、うっかりだわ。


「うっかり、つか昼寝しちゃったし」


《うぬの体は万全では無いのじゃ、焦るでない、本当に体に障るぞ》

「えー」

「まぁまぁ、ぐずってるはなちゃんにはナイトプールなんてどうでしょう?ほら」

「確かに、良さそうですね」


《じゃの、月光浴は良いぞ》

『《ご主人、行こ?》』


「泳げない」


「それは心配しないで大丈夫ですから、兎に角行ってみて下さいよ桜木さん。ミーシャさんも行きたいですよね?️」


「桜木様、嫌になったら直ぐ帰って来て、提案者の魔王とショナに文句を言いましょう」

「はい、文句を探しに行ってきて下さい」

「行ってらっしゃい、桜木さん」




 目を覚ますと、既にハナは居なかった。

 あぁ、ナイトプールか。


「すまんな」

「あ、起きられましたか」

「はなちゃん達はナイトプールに行かせましたよ、ありがとうございます、お気遣い頂いて」


「いや、年下の女の子なんだ。当然、それよりだ」

「あ、お食事。頼みましょうか?」


「あぁ、頼む」

「はい、どうぞ」


 ココの良い所は、夜だろうと朝飯が食える所だ。

 だが、俺は来る迄に起きていられるんだろうか。


「お好みのモノが無かったですか?」

「いや、起きていられるか心配でな」


「多分、桜木さんなら食べれるかと」

「あぁ、そうか」


 遠慮無くピータン粥と鹹豆漿を注文。


 早い、何とか起きていられた。


 完食し、今度は国から貰ったタブレットをイジる。

 あぁ、次に必要なのはストレージか。


 ただな、ハナがクトゥルフと繋がってからにすべきだろう、ココで全員アクトゥリアンの加護だと。

 あそこで救える可能性自体が消えるかも知れない。


 だが。


「何か、私に付いてますかね?」

「アンタの魔法、便利だよな」


「あぁ、ストレージですね」

「それは、どうしたら使える様になるんだろうかとな」

《アクトゥリアンか、クトゥルフじゃの》


「ほう、調べて出るだろうか」

「アクトゥリアンなら知ってますが、もう片方は、どうなんでしょう」


 確かにアクトゥリアンはすんなり出て来た。ただ今度は俺がクトゥルフと繋がれるか、クトゥルフと繋がれたとして、例の神々が接触を許してくれるかだ。


 もし失敗し、ハナや他の人間が死ぬ事は避けたい。

 コレが実際に本当のやり直しかどうか、シミュレートなのかが分からない限り、あまりにも前回と違うルートは避けるべきだろう。


 それにしても、眠い。


「すまんが、少し風呂に入りたいんだが」

「はい、点滴の処置をしますね」


 管を外し、保護シートで覆う。

 それからやっと入浴。


 点滴だなんだと、早々に白雨やアレクに覚えさせんとな。


 もう少ししたらエミールか。


 どう、信じて貰うべきか。


 いや、ハナに任せよう。

 アレもアレでハナが好きなんだ、邪魔をすべきじゃ無いな。


「タケちゃーん、大丈夫か」

「あぁ、もう出る」


 湯を止め、ショナ君に乾かして貰い、エリクサーを飲む。

 たったこの程度の事ですら、怠さを感じて眠気を催す。


 ハナはずっとこうだったのだろう、可哀想に。


「寝ちゃえば良いのに」

「ハナが寝たらだ、メイメイは万全には見えないんでな、お兄ちゃんグーグはもう心配で堪らないんだ」


「分かった分かった、寝ます」

「うん、おやすみメイメイ

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