第15話 後ろ盾しだいで人間の値段が変わるのか?
このエッセイは、私が投稿している小説に関するものです。
投稿している小説の正式なタイトルは「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」です。
以下「(略)下鴨女子寮へようこそ!」としますね。
小説のURLはこちらです→https://kakuyomu.jp/works/16816927860159349467
小説のタイトルは「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」と言います。
長いので「(略)下鴨女子寮へようこそ!」と表記しますね。
前回、拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ!」の「清水さん」の元ネタになった男性の話を書きました。
清水さん同様、モデルとなった男性も「尊敬と信頼を捧げるに値する大人っぽい母性的な女友達」がいる男性でした。
この人以外にも、母性的な女性と実際に付き合う女性を分けるタイプが他にもいるのでは?という話を前回に書きましたね。
そう言えば、高貴な女性に憧れながら手近なところで身代わりを探したと例として、源氏物語(「あさきゆめみし」)という超有名な話がありましたw
紫の上はとても優れた資質の貴婦人なのに、男の方は特に実家などの後ろ盾がない彼女を「安くてチョロい」とナメてるんですよねえ。
(この「安くてチョロい」という言い回し、沙村弘明さんの漫画「波よ聞いてくれ」で見かけて、「これだ!」と思いましたw)。
今回は後ろ盾(実家)や階層の話をしたいと思います。
戦後の日本は一時期「一億総中流社会」といいう幸せな幻想に浸っていました。
しかし、その後のバブル崩壊などの不景気を経て、今では深刻な階層格差が横たわっていると意識されるようになったのは皆さんもご存知の通りです。
私が学生の頃は、ぎりぎり格差に無頓着でいられた時代だったかなあと思います(平成の初め頃)。
それでも、当時の私が「安くてチョロい」とナメられた背景に、私が社会階層が低い出自だと思われてたというのがあったように思います。
例えば。5段階評価で4くらいなのを、3どころか2くらいに見積もられていた感じでしたかね……。
実際の私は、もちろん「上級国民」ってレベルではありませんが、ご先祖はなかなか立派なことをした人なんですよ(別に子孫に過ぎない私が偉いわけではないですw)。
何回か書いていますが「祖父の代までは資産家」であり、だからこそ遺産争いがありました。嫁いできた母がその遺産が欲しくて娘の私をたきつけ、手元に置こうとしたのは現実でも小説でも同じです。
つまり、そこそこ「エエとこのお嬢さん」だったと思います。
祖父ほどの立場はなくとも、父もそのコネで大企業に就職してましたし。
ところが。
私の父母はお金を使わない人で、私もそうです。
服だってファストファッションで全然かまわないですし、外食もしません。
祖父の地位からすると、かなり不釣り合いな「貧乏くさい」ライフスタイルです。
また、他人に向かって、特に祖父や父のことを詳しく話すこともあまりありません。
もちろん、「立派なのはあくまで祖父なのであって、私自身ではない」という事実が根底にあります。
それに加え、他人が見て「立派そう」なバックグラウンドほど、よそ様には隠しておくのが嗜みだと思っていたんです。
さて。清水さんの立場というのは……。
拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ!」でも書きましたが。
京都は公立高校の進学率がズダボロでしたので、子どもの教育に熱心なお宅は私立に進学させていたのです。
この辺は、地方都市でありながら首都圏に近いですね。
京都の名門私立にR校という学校があります。自他ともに認める超進学校です。
清水さんのモデルになった人のお宅は、私が知る限り、小説の清水さんのようなご家庭だと思います。
おそらく親世代では大卒者ではなく、子どもに期待をかけ、子どもも勉強が出来たのでR校に合格し、そしてエリートコースに乗ることができた……。
清水さんのモデルになった人には、この時点から実の両親とは違う世界に足を踏み入れたという感覚があったのではないかと思います。
そして、拙作の黒田さんのモデルになった女性はといいますと。
お父様がテレビコマーシャルをバンバン打つような大企業・某社にお勤めだったそうです。
何で知っているかというと。
私と二人で話す機会があったときに、「私の父は○○に勤めているの」と宣言したからですw
その前後の文脈は全く記憶にありません(というか、そもそも学年が違うので喋る機会自体があまりなかった)。
ただ、その一言をとても重々しく宣言した場面だけが強く印象に残っているのです。「もったいぶった口調」とでも言ったらいいでしょうか。
そして、「父親の勤務先って、他人に吹聴するものなの?」という違和感も。
今の私はもう中年女で、多少は世の中の酸っぱさも心得ているのでぶっちゃけますと。
その女性にとっては、父親が大手企業勤めっていうのがとても特別だったのでしょう。
再三再四書いておりますように、私や私の親世代は大して偉いわけではありませんが、祖父世代は功成り名を遂げた資産家でした。そして、祖父世代はその経済力を子女の教育に資本投下したので、私の親戚には有名大学卒で大手企業勤めというパターンが多かったんですよ。
だから、親が大手企業に勤めていることがそんなに特別ではなかったんですよね。
それが当たり前で、別に人様に吹聴しようとも思いませんでした。
(職業としてはやや特殊な専門職だったので、幼い頃は「私のパパは○○なの!」と無邪気に自慢していましたが、高校・大学生あたりからは言わなくなりましたね……)。
現実の私の家庭はそこそこのエエお家だったと思うのですが。
清水さんの元ネタになった人は、貧乏くさいライフスタイルの私を見て、そのまま、社会階層が低いと判断したようです。
(まあ、祖父が資産家だったつーても、さすがに今の私には関係ないです。「貧乏くさい」ライフスタイルは、現状の私の身の丈に合った生活だと思ってますw)
「黒田さん」の元ネタになった女性に信頼や尊敬を捧げる理由は他にも多々あったのでしょうけれども。
この小説に書いたように、「東京の、テレビコマーシャルで見るような大企業勤めの家庭の息女」が高級で眩しく見えたというのもあったんじゃないかと思います。
「高級な女」と「安くてチョロい女」。
清水さん(とそのモデルの男性)の中での区別は、それぞれの女性自身のキャラだけでなく、父親などのバックグラウンド込みで値段をつけていたんだろうな、というのは中年になった私の感想です。
※「ふられた」ということについては単純に私に魅力がなかったからだとして(付き合いらしい付き合いもなかったので、何で始まった仲なのかも何で終わる仲なのかも今でもよくわからないんですが)。
その別れ話を「私と進める」のではなく、「信頼出来る女友達と相談して決めた」というあたりは、彼の中での「高い」「安い」という女性観に原因があると考えています。
なお。女性に値段をつけることをテーマにした小説に、姫野カオルコさんの「彼女は頭が悪いから」が挙げられるかと思います。
清水さんのモデルになった人も「エリートの僕には安い女が群がってくる」というある種の「被害者意識」があったかもしれません。だから「安い」とみなした相手に無礼を働くのにも罪悪感が乏しかったのでしょう。
書いていても「しょっぱい話だなあ」と思います。あー、やだやだ。
このように考えるようになったのは、私が中年に差し掛かってスレてきたというのもありますが、社会全体が階層格差に敏感にならざるを得なくなってきたからというのもあると思います。
今の若い世代は、私が若いころ以上に、育ってきた家庭の「値段」込みで互いに値札をつけ合ってるんじゃないでしょうか。
せめて。若い頃の、初恋くらいは純粋できれいなものであってほしいですね。
そして、フィクションの中のキャラにも素敵な恋愛をして欲しい。
というわけでw
物語の後半から美希にも明るく楽しい恋愛を楽しんでもらいますとも。
書いてる私もノリノリでパソコンのキーを叩いてますw
ただ、あと何話かは、美希以外の他の女性たちにもそれぞれに生きづらさがあるという話をしてまいります。
生きづらくても、みんな健気に生きています。どうかその辺もお読みいただいて、登場人物たちに愛情を持っていただければと思います。
どうか最後までご愛読賜りますよう。
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