第11話 宵山デートは特別です
このエッセイは、私が投稿している小説に関するものです。
投稿している小説の正式なタイトルは「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」です。
以下「(略)下鴨女子寮へようこそ!」としますね。
小説のURLはこちらです→https://kakuyomu.jp/works/16817139555256984196
今回、美希が清水さんに宵山デートに誘われます。
京都には三つの大きなお祭りがあり、中でも祇園祭は学生にとって重大です(ちなみに京都の三大祭りは、この「祇園祭」と「葵祭」「時代祭」です)。
神事がどうというよりも、祇園祭の宵山はカップルにとって外せないデートの場だからです。
全国レベルで言うと、クリスマスやバレンタインデーを恋人と過ごすか過ごさないかと同じような位置づけと言いましょうか。
クリスマスやバレンタインデーは年度の終わりの方ですが、祇園祭の宵山は7月16日。
4月に入学した学生が、初対面で「あ、いいかも」と思った者同士で付き合い始めるのが5,6月だとして。
7月の宵山に一緒に行くかどうかが恋人状態か否かの試金石です。
少なくとも私が学生だった時にはそうでしたw
美希としては清水さんが誘ってくれたことで、ほっと安堵する気持ちでいっぱいです。
寮の皆も美希の恋路を応援してくれ、藤原さんも浴衣を快く貸してくれたのですが……。
今回の美希が「着物警察」に捕まってしまうという場面。
少し書くのに躊躇しておりました。
普通の着物は確かに着付けが難しく、ちょっとでも不手際があると「着物警察」に引っかかると聞いています。
しかし、浴衣は比較的気軽に着られるもので、「着物警察」の監視の対象になるかなあ?と疑問に思っていたのです。
ところが、着物をエンジョイしている方のエッセイ「着物の国のはてな」(片野ゆか 集英社 2022)を読むと、「浴衣警察」も存在するのだそうです!
さて。
浴衣警察にトイレに連れ込まれた美希が、地下鉄の駅から外に出ます。
烏丸御池は、作中でも述べたようにオフィス街です。
皆さんは京都に観光地のイメージが強いかもしれませんが、一応、人口140万人いる政令指定都市なんですよ……。
商業地としては四条通や河原町通、京都駅近辺がにぎやかですが、御池通や烏丸通りはオフィスビルが多いです。
お勤めをしてない美希のような学生にはあまりなじみのないエリアですね。
この烏丸通には大きなビルが並んでいます。美希が「小さな東京駅」と思った赤煉瓦の建物も実在します(「みずほ銀行京都中央支店」です)。東京駅の赤煉瓦ととてもよく似たデザインです。
その烏丸通を西に入ると、中小規模のビル、あるいは個人商店が並びます。昔ながらの商業地であり、祇園祭で山鉾を巡行させる町衆の皆さまがお住まいのエリアです。
7月の10日から14日にかけて山鉾が組み立てられ、この山鉾が7月17日に四条通や河原町通などを巡行します。
その山鉾巡行に先立ち、3日くらい前から(つまり宵々々山)夜中に見物客が詰めかけ始めます。
屋台も出る夜祭らしい光景が、街全体に繰り広げられます。
テレビニュースでご覧になった方もいるかもしれませんが、30万人とかの人出があります。押し合いへし合いの人混みだとご想像ください。
私はコミケに行ったことありませんが、多分コミケがこんな感じなんじゃないでしょうか。
コミケと違うのは、おそらく現代日本の普通のエンタメでは見聞きすることのない情景でしょう。
拙作でも書いたように、街のあちこちに提灯がともされます。テレビ等でご覧になられるように、山鉾にもたくさん吊り下げられています。この数の多さがまず非日常。現代から過去の日本にタイムスリップしたかのような情緒が漂います。
そして祇園囃子。
美希がうろついていた辺りでどの程度聞こえるか、残念ながら確認できていないのですが(2022年の夏にこの小説のために宵山を見に行きましたが……。コロナがまだ心配だったので、人ごみの外をちょっと歩いて来ただけで六角通より南には行けなかったんです)。
NHK京都支局が大きな音量で流してました。こういった人工の音声も含めればどこからともなく聞こえてきてもおかしくないかと思います。
鉾が粽を売るのに、子どもが独特の節回しで売り口上を述べます。
可愛らしい声なのですが……子どもの澄んだ高い声というのは、どこか神秘的なところもあり怖く感じられるものです。
※なお、この口上の文言については、国立国会図書館のレファレンス事例に説明があります(○○は山鉾によって異なります)。
”「○○のお守りはこれより出ます
常(つね)は出ません今晩かぎり
ご信心のおん方さまは
受けてお帰りなされましょう。
蝋燭一丁,献じられましょう」
レファレンス協同データベース
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000198906”
拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ!」の中で、東京育ちの美希はこれまで近所の神社の夜祭くらいしか見かけたことがないと言っています。
しかし、京都の祇園祭は日本を代表する祝祭の一つ。
特に宵山の狂騒感は、街全体を飲み込むかのような迫力があります。
多くの現代日本人が京都に魅力を感じるのは、「エキゾチックな」「異界」だからではないでしょうか。
もう、21世紀の日本には存在しえない別世界を見せてくれる場所という意味で、「異国情緒」を感じさせる場所じゃないかと思います。
その幻想的な美しさは、一面で、一度「怖い」と感じるととことん不気味な空気が漂っている世界でもあります。
このような祇園祭の宵山のそこはかとない不穏な雰囲気、森見登美彦さんの「宵山万華鏡」で物語の背景として描写されています。
そして拙作で、清水さんに理由も分からず邪険に扱われた上に置いてけぼりにされてしまった美希。
温かい日常を求めて「寮に帰りたい」と願います。
その「寮に帰る」という願いは、次回ひょんな出来事で叶うことになりますが……。
どうか次回をお楽しみに。
暫く清水さんには美希と一緒にモヤモヤさせられますが、拙作の後半ではラブコメ風に展開します。
どうか最後までご愛読賜りますよう。
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