第3話 毒母からは逃げましょう

このエッセイは、私が投稿している小説について、元ネタや体験談、取材記を綴っています。

投稿している小説、正式なタイトルは「私が投稿している小説「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」です。https://kakuyomu.jp/works/16816927860159349467

長いので、以下「(略)下鴨女子寮へようこそ!」としますね。


今回の第3話。

せっかく志望校に合格したヒロインの美希が、毒母に退学しろと迫られますが。そこを、女子寮を営む白河さんに助けられます。


今回は前半で、毒母が好き勝手な主張を繰り広げます。

その毒母の描写。読者様をご不快にさせてしまったようでしたら済みません。

後半ではしたたかな京女に上手いことあしらわれているので、そこで溜飲を下げていただければと思います。


毒親の描写は、次回と次々回で美希が幼少時の出来事を語り終えれば一段落します。

この小説では、美希に幸せになってもらいたいので最後はハッピーエンドです。序盤の毒母の登場シーン、あと少し我慢してお付き合いして下さいませ。


それにしても。

毒母の主張ってなんでこんなにムカつくんでしょうかね?


今回の毒母の言動、実話なんですよ。私の母がモデルです。

父が癌で遺産相続のトラブルがあったのも一緒です。


違っている点は……。私が毒親たちに進学を阻まれたのが大学の学部ではなく、大学院だった点です。

地方じゃなくて首都圏の、その分野で優れた研究者を輩出している大学院に一生懸命勉強してせっかく合格したのですが、親の反対で進学できませんでした。


理由はこの小説で書いた通りです。遺産相続や病気の父親の看病、将来の介護……毒親はそんな面倒なことに立ち向かいたくなどありません。しっかり者の娘さえ連れ戻せば、自分達に都合の良いように何もかも解決してくれるだろうと思い込んでいたのです。


私も進学したいと頑張って主張したのですが……。

毒母に「一流大学に固執する偏差値至上主義者!」「エリート主義!」「家族の助け合いの方が大事!」「冷たいわね、思いやりがないわね」などなどと、ありとあらゆる観点から非難されました(今回の小説に描写した通りです)。

末期がんの父も「頼むから帰ってきてくれよ」とさめざめと泣きますし……。


当時は「毒親」という概念も知られておらず、両親の反対を押し切って進学することへの理解があまりありませんでした。まして「女の子が!」という世の中でしたしね。

そして、何より経済的にどうにもならない。親が教育費を出さなければ子が独力で進学することは、今でも相当に困難だと思います。


ですから、私の場合は進学を断念せざるを得ませんでした。

(親がカルトにハマって進学できなかった、安部元首相銃撃犯の彼は他人事ではありません)。

ここが私と、小説の美希との違いです(何度も書いていますが、せめて小説の中ではハッピーエンドにしたいと思っています!)。


一応、私も地元の大学院に進学はしましたが……。あまり良い環境ではありませんでした。

ですが、その愚痴や不満を毒親に話しても、「その大学に進学したからには自己責任」なんだそうです。

この頃、父親に「エエ本があるから読みなさい」と、渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」という本を渡されましたよ。不利な境遇でも従順に甘んじていろと言いたかったようです。(後年になって読みましたが、別にそういう趣旨の本じゃないように思います)。


で、自宅にいると「いつまでも実家で親に面倒かけずに自立して」ですし、結婚後疎遠にしてても、電話一本で実家の用事に呼びつけます。「子は親の面倒を見るのが当然」なんだそうです。


一般にトラブルは「話し合いで解決する」のが正しいやり方です。

ですが、世の中、話し合いが成立しない人間というのも存在します。

親でなくとも、話が通らない人間がいる事実。これを読んでいるあなたもご経験があるのではないでしょうか。


相手は一応、人間の言葉を喋っているので、「話し合い」ができそうに見えますが。

彼らは「自分の欲望を満たす」ことしか考えていません。

自分の欲求を押し通すために、「偏差値主義・エリート主義はよくない」とか「家族の助け合い」とか「思いやり」とか、自分の主張を助けてくれそうな語彙を切り張りしているだけです。


彼らは「自分は自分の欲望を満たしたい」と主張したいだけなので、そこで使われている語彙そのものはあまり意味がありません。

幼児が「あれ買って、買って、買って~」と駄々を捏ねているのと同じです。

幼児相手に話し合いが不可能なように、彼らと話し合いは不可能です。


幼児と違って、社会で使われている「語彙」を利用してもっともらしい体裁を整える狡猾さはありますが。

今回の小説で描写したように、きちんと客観的に見れば辻褄の合わない奇妙な論理展開をしがちです。

しかし、彼らは、自分の言っていることに矛盾があろうとお構いなしです。

彼らが言いたいのは「私の欲望を満たせ」であり、これを曲げる気は一切ないので、彼らが繰り出す主張の一つ一つを「論破」しても何も響くことはないのです。


もし、彼らのもとで上手く育つ道を探るとすれば……。

彼らがもっともらしく振りかざす正論に大した意味がないのですから、それらに振り回されず、ただただ彼らの利益関心を満たしてやって目くらましをすることぐらいでしょうか。


以前、ネットで、娘を経済的搾取する毒母の問題を、ファイナンシャルプランナーが解決した事例を読みました。

(私自身がファイナンシャルプランナーの有資格者なので、気になる記事は読むように心がけているんです)。


都内で暮らす娘が給与からかなりの高額を毒母に仕送りしていたのですが。これでは娘の生活が先細りとなってしまうと考えたFPが、各種データや試算を揃えて毒母を説得したそうです。

娘の経済状態が健全でなければ、それに寄りかかっている毒母も共倒れになりかねない。この論法が功を奏したのだとか。


毒親に「お嬢さんを幸せにしてあげましょうよ」と百万回言っても無駄です。だけど「娘さんが経済的に苦しくなると、お母さんも損しますよ」あるいは「娘さんの社会生活が順調なら、いつまででも頼りにできてお得ですよ」と言えば、そちらのほうが効果があります。


私の小説の白河さんも商売人なので、毒母の利益を満たしつつ、こちらの欲求も相手の利害関係に上手く紛れ込ませて押し通します。

世知に長けたしたたかな京女の白河さんの面目躍如です。


さらに。

小説の中で美希にとって幸運だったのは、白河さんが月五千円で暮らせる「女子寮」を所有していたところです。

(モデルにしたのは、2000年代初めまであった東京大学の「白金女子寮」です。港区白金という超・高級住宅地に、京大熊野寮のようなオンボロの建物で、そしてお家賃が月5000円!。もう廃寮になってしまいましたがw)


残念ながら、こういった格安の学生寮は少なくなってしまっているかもしれませんが……。

確かカクヨムに、毒親から逃れるために別居し、生活保護を利用して自立の道を探った女性の手記があったかと思います(ブクマしとけばよかった)。


私は進学はできませんでしたが、結婚して実家を出ることができました。

出産後、昔で言うところの「産後の肥立ちが悪い」せいか体調を崩し、地元の子育て支援に助けられながら日々暮らしておりました。

複数の関係者が私の母の毒っぷりに驚き「あのお母様とは距離を取った方がいい」とアドバイスして下さり、色々サポートして下さったので、今やっとほぼ絶縁して穏やかに過ごせています。

けれど、あの時、あの学校で学びたかったという後悔は残ります。


毒親は悔い改めたりはしません。彼らを変えることに無駄な労力をさくのは止めた方がいいです。

毒親の利益を満たしてやりながら上手に目をくらませながら、逃げ出す方策を考えましょう。


そして、社会も、子どもが逃げ出せるようなサポート体制を整えるべきだとおもいます。

具体的には奨学金であったり、学生寮などの住まいですね。

一時的に生活保護など福祉の手を借りるのだってアリのはずです。


そして、毒親サバイバーが、その体験を広く知らせることで、毒親問題を社会が認識し、脱出するためのノウハウや心構えが共有されればいいと思います。


拙作でも、美希は、したたかな京女に毒母との交渉を担ってもらい、そして格安の学生寮で進学を果たします。

そして、寮生たちとの交流の中で、毒親に植え付けられたものの考え方を少しずつ変えていくことになります。


私自身、進学については毒母から逃れるタイミングを逸してしまいましたが。

まずは、こうやって自分の分身である美希を、自分の小説の中で幸せにしてやりたいと思います。


そして、願わくば、この小説が毒親育ちの人に明るい未来を想像する一助になれば……と思っています。


皆さん、誰でも、幸せになっていいんですよ!

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