第21話 ヨーロッパよりヨーロッパな「フランソア喫茶室」

このエッセイは、私が投稿している小説に関するものです。

投稿している小説の正式なタイトルは「京都市左京区下鴨女子寮へようこそ! 親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」です。

以下「(略)下鴨女子寮へようこそ!」としますね。

小説のURLはこちらです→https://kakuyomu.jp/works/16817139555256984196


四条通の東の突き当りに八坂神社があります。

観光で訪れた方も多いのではないでしょうか。

そこから東に広がっているのが、舞妓さんで有名な祇園です。


更にを東に進むと、まず鴨川べりに出ます。歌舞伎の京都南座があるあたりですね。

そして、鴨川にかかる橋を渡ると……鴨川に比べると本当に小川みたいに目立ちませんが、高瀬川という川があります。


高瀬川とは角倉了以が開削した運河で……と日本史の授業で習ってご記憶の方もいらしゃるかもしれません。ええ、その高瀬川です。


高瀬川沿いの南北の道を木屋町通といいます。


拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ」で美希と武田氏とがやってきたのが、四条通と木屋町通の交差する四条木屋町です。。


四条木屋町の近辺には、京都でも有名な洋館(カフェ)が2件あります。

拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ」本文で書きましたように、北にあるのが「喫茶ソワレ」、南には「フランソア喫茶室」です。


どちらも素敵なカフェですが、拙作で武田氏が言ったように、木屋町の四条以北は猥雑な歓楽街でもあります。

武田氏と美希はどちらも真面目な学生さんなので、夜の木屋町のネオンサインをさけて、地味なエリアの南側に向かうこととなりました。


「フランソア喫茶室」のWebサイトのURLはこちらです→www.francois1934.com 


「フランソ『ワ』」ではなく「フランソ『ア』」であることに要注意。私も長いこと「ワ」だと思い込んでおりましたw


「フランソア喫茶室」のウェブサイトのURLに「1934」の数字がありますが、これは「フランソア喫茶室」が開店した年です。昭和9年ですね。

もちろん戦前の話です。開店の経緯とその後のお店の雰囲気は次回に書こうと思います。


1941年に現在の我々が見られるような建築に改装されたそうです。

そして「喫茶店として初めて、国の登録有形文化財に指定された」とのこと(京都観光NAVI(https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=4&tourism_id=2502)。


私も今年(2022年)の春の終わりにお出かけしてきました。

写真も撮影しているので、近況ノートに掲載しておきますね。

上記Webサイトにも見どころの写真が載っているので、ぜひご覧ください。


戦前からの洋館として有名で、2021年の「モダン建築の京都」展でも紹介されました。

この展覧会の図録の紹介文を引用しますと。


”軒下にロマネスク様式特有の装飾、ゴシック様式特有の尖頭アーチ、2階にコロニアル様式風のベランダを備える。内部には、古典主義的な円柱やドーム、ゴシック様式風のアーチや窓、バロック様式風のねじり柱が並置され、天井は和風の折上格天井を想起させる”

「モダン建築の京都100」149頁


Webサイトのトップページの建物外観の写真の最上部に、連続したアーチの装飾があるのをご覧いただけるかと思います。


拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ」の本文で、美希が「軒先に何を支えるでもないアーチが連続して飾られているのがなんだか南欧風だ」と感じる箇所です。


調べて見ると、このような装飾を「ロンバルディア帯」といい、ロマネスク建築の特徴の一つだそうです。

「モダン建築の京都」展の図録の解説の「軒下にロマネスク様式特有の装飾」と書かれているのがこれでしょう。


拙作中で、武田氏が「アーチでもその頂点が円弧なのか尖っているのかを細かく気にかける」のは、同じアーチでも尖頭アーチだとゴシック風の印象を与えるからです。

フランソア喫茶室の外壁の窓がそれですね。このステンドグラスも名のある芸術家の作品だそうです。


2022年に私自身がこのフランソア喫茶室にお出かけし、コーヒーをすすりながら気になったのは、室内の壁に尖頭アーチと円弧のアーチとが並んでいる点でした。

このように2つのアーチが同じ場所に使われているのが印象深かったので、拙作中でも建築学科の学生である武田氏もそれを気にしているという設定にしております。


ちなみに武田氏が口にした「神は細部に宿る」という有名なフレーズ。

一説には、近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが好んで使っていたと言われます。

(この点については国立国会図書館のレファレンス事例があります。https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000080409)

氏もこのエピソードを踏まえて口にしたんですよ、きっとw


(建築と関係ありませんが。久世番子さんのコミックエッセイ「神は細部に宿るのよ」も面白いですよねw)。


なお、「美術室にコンブリッジという人の『美術の歩み』」という本があったという設定ですが。

実在する本です。すっごくイイ本なんですよ~。


私が京都で学生だった頃に出会いました。

図書館で見つけたんですが、これは手元に置きたいと購入。学生には結構いいお値段でしたw。

その時から、結婚を含め、何度引越ししてもずっと今まで持っております。


さすがに内容は古くなってきたと思いますが(書かれたのは東西冷戦真っただ中だったので、西側諸国の所蔵品に偏りがちではあります)。

どの作品にも愛情のこもった解説、平明な語り口、もちろん著名な美術史家ですから知的な刺激に満ちると同時に、ヨーロッパ紳士の手になる文章らしい上品な雰囲気。

この本を若い頃に読んだことで、私は、「美術品を、芸術家を愛する」という最も大切なことを学べたと思います。


著者のゴンブリッチのWikipediaはこちら↓

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81


そして、私が「美術の歩み」と呼んでいる本は原題を”The Story of Art.”といい、2007年、2019年に『美術の物語』とういタイトルで新訳が出ているようです。

上記のWikipedia内の該当箇所を引用しておきます。


”The Story of Art. London: Phaidon 1950

『美術の歩み』友部直訳、美術出版社(上下)、1972年、新版1992年 

『美術の物語』天野衛・長谷川宏ほか全8名訳、ファイドン、2007年、普及版2011年/大型改訂版:河出書房新社、2019年”


拙作「(略)下鴨女子寮へようこそ」では、これまで美希の毒母との葛藤や、クソ彼との後味悪いおつきあいの顛末を書いてきました。


ここからは。ちょっと風変わりな建築学科の学生さんと美希との交流を描きます。

コミカルに京都の名所を回っていきますので、どうかお楽しみに!

最後までご愛読いただけましたら幸いです。


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