第8話 最後の願い
ヒナの綺麗な頬に僕の手形がついた。
「あ、、、、。」
僕はとても気まずくなり、ついうつむいてしまった。
「ご、ごめんなさい!ぼ、僕、、、そんなつもりじゃっ!」
その時だった。バッ!ヒナが僕に抱きついた。
「武隼くん、ごめんね!こんなに大事なことを言わずに黙っていて、、、。
武隼くんの気持ち、大事にできてなかった。本当にごめんなさい!!」
ヒナ、、、、。「すき。」
思わず、口からその言葉が出てしまった。
「え?」ヒナはキョトンとして僕のことを見た。
「えと、その、僕、ヒナのことが、大好きなんだ。」
僕は勇気をふりしぼってヒナに伝えた。
ヒナは顔を赤らめてフリーズしてしまった。
「え、ええ!?」
僕はそっとヒナに微笑みかけて、「ヒナ、これから何かあったら、僕にも言ってね?」と言った。
ヒナは少し笑って、「はい。」と言った。
その次の日の朝、ヒナがいなかった。
「どこに行ったんだろ、、、。」
テーブルには手紙があって、『新商品のメイクが今日発売だから、買ってくる!
すぐ帰るから、朝ごはん、ちょっと待っててね!!」と書いてあった。
確かに、もう9時半だし、店は開いているだろう。
僕はそう思って、とりあえず11時までは待つことにした。
でも、ヒナは12時近くになっても帰ってこなかった。
「何かがおかしい、、、。」
僕はサンダルでヒナの行きつけの化粧品の店に行った。
そして、その化粧品店の裏道で、ヒナが黒い闇にうめいている姿があった。
「う、う〜!」
「ヒナ!!!!!」
「ぶ、武隼くん、た、たすけて、、、、。」
僕はヒナの手を取って力強く引っ張った。
「ヒナに何するんだ!」
僕は闇に向かって話しかけた。
「ヒナはそろそろ魔界に戻る時間なんだ。
これは決められたこと。人間の君が割り込んでくるんじゃない!!」
闇がきいたこともないくらい低い声で僕に言った。
「でも、こんなのヒナが望んでるのか!?
強引にヒナを魔界に連れ戻すなんて、そんなの許さな、、、、。」
「もういいよ。」
ヒナの淡い水のような声が僕の脳に入ってきた。
「え、、、?ヒナ?」
「もういいの。私、とっくに限界過ぎてたし。だから、最後一個だけ、武隼くんの願いを叶える。私の一生を武隼くんに、、、。」
ヒナが悲しげに僕に言った。
「嫌だ!そんなの嫌だ!僕、もうヒナにいっぱい願い叶えてもらったよ?
だから、次は、僕の番なんだ。僕はまだヒナの願いを一つも叶えれてない!
ヒナの役にも立ったことない!ヒナの願いを教えて!」
僕は涙声でヒナに言った。
「武隼くん、ありがとう。でも、私は武隼くんの願いが聞きたいんだ。
だから、お願い、教えて?
大丈夫、私たちはきっと、必ずいつか会えるから!」
僕の願いを教えて欲しい、、、。
それが、ヒナの今の願いなら!
僕は泣きじゃくりながら願いを言った。
「ヒナともう離れたくない!!」
僕が願いを言った瞬間、僕とヒナは真っ黒闇に包まれて消えていった。
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