第4話 花のつぼみ

「どこにって、、、。そんな怖い顔しないでくださいよ〜。お姉さん。

僕が誘拐犯みたいになってしまいますから。笑笑」

店員さんはケラケラ笑ってさらに僕の手を力強く引いた。

その時、ドカッ!と音がして、店員さんが倒れた。

そしてその店員さんの前には、、、鬼のような形相になったヒナがいた。

「どこに連れて行くのかって場所を聞いてんだよ。

ぺちゃくちゃと意味分からねえことばかり喋りやがって。

武隼くんから手を離せ!」

「ひ、ひい〜!」店員さんは弱々しい悲鳴をあげて僕から手を離した。

「弱いね〜。子供相手だといばれんのに、大人相手だったら無理です、か?」

ヒナは挑発するように言った。

「な、なに!?」

「まあいいや。んで、どこに武隼くんを連れて行こうとしたの?」

完全にヒナに怯えた店員さんはさっき起きたことをとても早口でいった。

「だ、だからこの子が万引きの主犯なんじゃないかと思って、スタッフ室に連れて行こうとしてたんだ!」

ヒナは納得したようにうなずいたが、すぐに、

「でもさ〜、実際物を奪ったのって、武隼くんじゃなくてその子たちだよね?

まず万引きしたその子たちのことを捕まえるべきだったんじゃない?

ほら、もう多分逃げられてるよ。」

「あ!」店員さんはヒナのその言葉を聞いて、顔を青ざめた。

「人を疑うときはしっかり考えろってこと!

あと、武隼くんは物とってないから!

武隼くんは絶対こんなことしないって、覚えといてください!以上!」

ヒナは仁王立ちになって店員さんに言った。

「本当に、申し訳ございませんでした、、、、。」

店員さんのボソボソした声が店内に溢れて、消えていった。




夕食時、「武隼くん、ごめんね。せっかくのショッピングなのに、、、。

あんなことになるって知らなくて、ほんとごめん!」

ヒナは僕に手を合わせて誤った。

「別にいいよ。あれはヒナのせいじゃないもん。

むしろ、ヒナは僕が連れて行かれるのを助けてくれたし!

ヒナは、僕のヒーローだよ!」

「武隼くん、、、、。」

ヒナは涙でぐちゃぐちゃになった顔を僕にくっつけてきた。

「もう大好き!」

ヒナの体の暖かさが親密に伝わった。

は!そうだ!

「ヒナ。僕ね、イロンモールでヒナのプレゼントを買ってきたんだ。」

僕は小さな袋をヒナに渡した。「何何?」

ヒナは目をキラキラさせながら袋を開けた。

「わ〜!『ビューティーラブ』の新作ネックレスじゃん!

これ、前見たらもう売り切れだったんだよね〜。武隼くん、ありがと〜。」

ヒナは顔いっぱいの笑顔でお礼を言ってくれた。


あまり楽しくないと思っていた、現実世界での暮らし。

でも、もうちょっと、ここにいてもいいかな。

僕は自分の心につぼみができた、気がした。

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