第5話 乃愛、仕事できる系OLに挑戦します!

 先生、今日もヒロイン研修よろしくお願いいたします! そして、今日は昨日に引き続き、仕事できる系ヒロインの研修ですね! 昨日はあのまま時間ギリギリまでお昼寝をしちゃって……。あ、でもでも! 先生、そのおかげで乃愛のあ閃いたんです!


 だから今日はこの実践ルームなのか、ですか? 先生! そうなんです! おっしゃる通り、今日はオフィス系の仕事できるヒロインを目指そうと思って。はい、それでコスチュームもOL風です! どうでしょうか? やはり、ピンクベースの制服だと、大人っぽくは見えないですか? そっか……。ピンクベースじゃなくて、紺色ベースとかにすれば良かったんですよね。わたし、普段着がふんわりワンピースが多いので、つい、自分の好みに走ってしまって……。


 え? それでもイケる設定があるよ、ですか? ほんとですか! 先生! その設定で今日は頑張りたいです! ふむ、ふむふむ。……ええっと?! 


 先生……。その設定、わたしできるか自信がありません……。だって……。新入社員の先生に厳しく指導する先輩ですよね?! 大体、先生にそんなきつい口調の上から目線でしゃべるなんて、わたし……。え? 諦めないでやってみようよ、ですか……。


 わ、わかりました! こういうヒロインの需要もあるかもしれないですもんね!でも、その場合なのですが、先生のことは名前でお呼びできないので、どうしたらいいのでしょうか? な、なるほど! 「キミ」って呼べばいいのですね! 「おぼっちゃま」が呼べたんだから「キミ」もいけるだろうと? ううむ、少し抵抗がありますが……、でも! 頑張ってやってみます!


 上から目線、上から目線、そしてきつめに指導する、ですね! では早速挑戦です! あれ? 先生、いや、キミ……どちらへ……? ひゃっ! 急に部屋の中が薄暗くなってしまいましたよ、先生?!


 え? 僕の失敗のせいで二人で残業しているシチュエーションだと? なるほど! それなら先生、もとい、「キミ」に上から目線で指導していても、不思議じゃないですもんね!



——こほん。



 では、早速、始めてみましょう、ですね! 緊張するぅ! でも、乃愛、頑張ります! えっと……? 先生、まだ始まってないのですが……? なぜ、今ここでヒロインステっ……き……?


——きゅらきゅらりーん!


 ふああっ!


 あぁ、先生、朝イチのヒロインステッキは……刺激が……。でも、なぜ今ここでヒロインステッキなのですか……? え? 頑張りますのポーズが可愛よすぎたから……と? は、恥ずかしいです……。ただでさえ、このOL風のコスチュームも恥ずかしいので……。って、あああ! 先生、大変ですっ! 今のステッキの刺激にふらついたせいでどこかでひっかけてストッキングが破れてしまいました……。


 どうしよう、こんなこと想定してなくて、わたし、ストッキングの予備を持ってきてないのです……。ああ、こんなことなら何枚か持ってこればよかった……。もう、こういうところがダメなんですよね、わたしのバカバカバカ!


 え? 先生、今なんて?! 生足でいいじゃない? ですか……? えっと、でも、それじゃあ、あの、OL風のコスチュームが崩れて……。はい、なるほど、二人しかいない実践ルームだから、そこは気にしなくてもいいよ、ですか……。確かに、こうしている間にも、残り文字数が減ってしまいますよね!


——こほん。


 では気を取り直してですね! ようし! 乃愛、今までの文字数も取り返すくらい、頑張りますっ! 先生、またステッキ……? 後でまとめて撫でてくれると? 嬉しいです! じゃあ、もっとなでなでしてもらえるように! わたし頑張りますね!


 はい……。余計なことはもうしゃべらず……。乃愛、叱り飛ばすシーンいきます! 吸うはぁ……


 キミね、何回言ったら分かるの? ここは、この書式では事務的には通らないって何回も言ってるでしょ? 何よその目は! あのね、ここは、もっとこうして分かりやすく数字を書かなきゃダメだって言ってるの。全くそんなこともできないだなんて、学校で何を学んできたというのかしら。ほんと、雑魚ね! ほら、貸して! ここをこうしてもっとこうするの、そうすると、ほら……、ね? もっと見えやすくなったでしょ? こういうのはこれからキミが進んでいく営業職にも必須事項だからちゃんと覚えてないと後々キミが困るんだからね!


 ちょっと、聞いてるの?! えっと……? あの……せん、や、キミ……? なんで急にそんな嬉しそうな顔を……? え? もっと叱ってください……? もっときつめにお願いします、先輩って!? あの、でもですね、これ以上のきつめの言葉が思いつかな……。えっと、先生、いや、キミ……そんな至近距離でお願いされても……ととと、ひゃあっ!


——ガタン


 いてて……、 先生、大丈夫ですか!? あまりに先生がこっちに近づいてきたので、わたし思わず後ろに転んじゃって……。え? 乃愛は大丈夫かって? えっと……、先生が背中を支えてくれたから、お尻を少し打っただけで済みました……。えっと……? 近いですね……。


——あふっ!


 先生、なぜ、今抱きしめてくれたのですか……? あ、あれ? ヒロインステッキ……?


——きゅらきゅらりーん! きゅらきゅらりーん!


 ああああっ! 二回もいっぺんにステッキなでなでは、刺激が二倍に伝わってきます……。身体の奥まで刺激が……はふう……。えっと、先生? 今のは、少しきつめの口調からの実は優しい上司だったのが、良かったと……?


 せんせぇ……、わたし、口調がきつめのヒロイン、向いてないです……。え? 実はそう思ってたけどって……? むぅ! 先生のちょっとだけ、意地悪……。文字数カウンターも残り、8577文字になっちゃいましたよ? えっと、じゃあ今日はもうこのまま時間までコーヒーでも飲んで過ごそう、ですか……?


——しー。


 はい、もう乃愛、黙って先生と過ごします……。でも先生、最後に一言いいですか?




 ヒロイン研修四日目、ご指導ありがとうございました。

 砂糖は甘めで、ミルク抜き、……了解です。

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