第4話 乃愛、仕事できる系ヒロインを目指します!
先生、ヒロイン研修三日目、今日もよろしくお願いいたします。そして先生、ごめんなさい! 明日も異世界もののヒロインで研修しようねって、先生が昨日言ってくれたのに、学園の事務室に予約を入れに行ったら、もう異世界の実践ルームがとれらちゃてて……。
先生、本当にごめんなさい!
異世界ルームがとれなかったので、今日はこちらの部屋になりました。はい、ここは現代的な財閥のお屋敷です! さすが先生、部屋に入っただけでどんな設定の場所かわかるんですね! 一日目も二日目も、
ふふふ。先生さすが! 正解です! だから、眼鏡です!昨日の研修でコスチュームを選ぶ自信が少しついた気がするので、今日は「仕事できる系」をイメージして、小物で眼鏡をチョイスしてみました。え? 物凄くよく似合うよ、ですか?
な、なんか先生に真顔でそう言われると、あの……、照れてしまいますね……。えっと……先生? もう、もうですか……?
——きゅらきゅらりーん!
はぅぅっ!
せ、せんせぇ……。もう、ヒロインポイントがどこかにありましたか……? す、すいません、身体の奥が震えていて、声までふるっちゃう……んですけど……、え……? 昨日から成長しているところが良かった……ですか。う、嬉しいです……。
ふ、ふう。ヒロインステッキの電流、余韻が消えるまで少しかかっちゃいます。でも、もう大丈夫です! では早速、今日もご指導のほど、よろしくお願いいたします!
えっと、では早速やってみようですね、でも、お屋敷におつかえするメイド役としましては、先生の呼び方を考えるところからですよね! 何がいいでしょうか、ご主人様、とかになりますよね? んっと……? 先生、そんな、おぼっちゃま、ですか?!
まさか、先生を「おぼっちゃま」なんてお呼びするわけにはいかないです! え? 仕事できる系ヒロインを目指したいなら、ご主人様よりその方がいいよ、ですか……? でも、そんな……。でもそうですね、うん、先生、確かに、「仕事できる系ヒロイン」だと、おぼっちゃまの方がお世話を焼きやすいかもしれないです! さすが先生です!
で、では……、先生には申し訳ないのですが、本日はおぼっちゃまと呼ばせてください。先生はいつも通り、わたしのことは乃愛ってお呼びいただけるんですね。はぁ、良かった。そこがいつも通りなら緊張も少し解ける気がします。
では先生、あ……。失礼いたしました、おぼっちゃま。あの、おぼっちゃま、どちらに……? せ……、あの、おぼっちゃま? あ、なるほど、朝寝ているところを起こすシーンでヒロイン研修ですね。乃愛、了解いたしました。
それじゃあ、おぼちゃまを起こしにきた仕事できる系のメイドでがんばります!
——こほん。
おぼっちゃま、おはようございます。朝でございますよ。本日はお父様のお仕事の関係の方々との会食会がございますので、早々に起きてご準備をされないといけません。まだ、寝かせて欲しいと……。ですが、おぼっちゃま、それで寝かせてしまっては、わたしとしては本日のスケジュール通りにおぼっちゃまのお世話ができません。
ささ、わたくし、心を鬼にしてでも、おぼっちゃまを起こさねばならないのです。はやく、起きてくださいませ。こちらのお布団、失礼して剥がしてしまいますからね。
——ばさっ!
おぼっちゃ……まっ……!?
あの、あのですね、おぼっちゃま、あの、そのですね、わたくしは、おぼっちゃまを起こすのが仕事でして、あの、その、あの、このようなことは、その、ダメです! おぼっちゃま、おぼっちゃま、本当、恥ずかしいので、ちょっと離れてくださいぃ! 寝ぼけてる、絶対寝ぼけてますから!寝ぼけすぎですよぉ、おぼっちゃま! ねぇ、本当、もうごめんなさい、起こすなんてやめるので、いや、やめれないんですけど、ああ、もう本当、おぼっちゃま、わたくし、殿方と、このような密着はしたことが……、あの……な、ないのですぅー!!!
——ばさっ!
く、苦しいので、ふ、布団をどけてください! あの、おぼっ…ちゃま……もうっ、本当、やだ、恥ずかしいから……くっつきすぎて……恥ずかしいから……もう、起こすのやめるから、寝ててもいいので……ってダメだけど、寝ぼけていらっしゃいますからぁ……
——ばさっ!
はっ! せんせぇ……恥ずかしすぎます……、この展開。え? なぜに今ここでまたヒロインステッキ……?
——きゅらきゅらりーん!
はぅう!
はぁはぁはぁはぁ、先生、凄すぎます……。一日に何度もヒロインステッキは涙が出るくらい感じます……。でも、今なんでここでヒロインステッキなのですか……? だって、ちゃんと仕事できる系メイドとしてはおぼっちゃまを起こせなかったから、ミッション的には失敗だと思うのですけれど……?
え!? ギャップ萌え!? 仕事できる系で強めの態度できたくせに抱きしめられた途端に恥じらいを見せるあたりにギャップ萌えすると?!
そ、そういうものなのでしょうか……。そういうものだよ、と……? はい? カウンターは大丈夫? ……ですか? えっと……。
ひゃあ! 先生、大変ですっ! 文字数カウンターが、残り11188文字になってしまいました! これでは一週間持たない気が……
——しー?
この実践ルームのレンタル時間は残りどれくらいあるか、ですか……? えっと、六十分コースで借りてきたので、まだ三十分以上あります……。
せっかくだから、残り三十分、一緒にここで昼寝でもしよう……ですか? それなら乃愛がしゃべらなくてもいいから……と?
そうですね、先生、ナイスアイデアです! 実はわたし、昨日の夜はあまり寝れていないのです。だってですね、きょ、 あ……、はい、もうしゃべりません……。もったいないですもんね……。
でも先生、最後に一言いいですか?
ヒロイン研修三日目、ありがとうございました。
ふふ、ベッドがふかふかで、このままほんとに寝ちゃいそうですね……。
おやすみなさい、先生。
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