第3話 乃愛、異世界ものに挑戦します!
先生、ヒロイン研修二日目ですね。今日はひろいん学園内にある実践ルームを借りてきました! この学園にはいろんなタイプの実践ルームがあって、この異世界ルームはその中でも人気が高いんですよ。えへへ。昨日あれからすぐに予約をしたんです。え? このコスチュームですか? そうなんです! 実践ルームにあわせてコスチュームを変えれるんです。
先生、今日のわたし、ど……、どうでしょうか? 異世界もののヒロインぽく、見えますか……? どういうのがいいのかすごく悩んだんです。それで、えっと、これはちょっと露出が多すぎるかもって思ったんですけれど……。あ、でもですよ先生、もっとすごいのがいっぱいいっぱいあったんです! もっとこう胸をバーンと強調させるようなものとか、背中に全く布がないようなものとか……? なので、これくらいがヒロインぽいのかなって思ったんですけれど。
どうでしょうか……?
これは露出が多すぎるって言わないよって? これだと異世界というよりメイドカフェみたいだね、ですか……。そっか、これだと、メイドカフェ……。設定に合わせたコスチュームを選ぶのもヒロイン研修において大事なポイントなんです。わたし、コスチュームを選ぶセンスもないなんて、こんなんじゃあヒロインになれないですよね……。
先生、どうしましょう。もう今日はこのメイドカフェ風のコスチュームしかありません……。え? 僕にいいアイデアがある? 本当ですか!?
えっと、先生?
あの、まずは上に着ているシャツを脱ぐ……、のですか?えっと、でもそうすると……。露出が……? 大丈夫だよ、ですか? その上に来ているエプロン部分が大事なところを隠してくれるからって……、んと、確かにそうかも? 先生、ちょっと待っててくださいね! すぐに脱いでみます!
本当だ……。思っていたよりも露出が少ない気がしました! あとこのリボン型のチョーカーはそのままつけているから、そこまで変じゃないですよね。先生、後ろはどうでしょうか……?
意外と大丈夫? よかったぁ! 先生が言われるように、シャツを着てないだけで、現実感がなくなりました! 先生、すごいです! え? 後はそのスカートの長さだよ、ですか……? もう少し短く? 足首まで長いスカートだと戦闘シーンの時に困っちゃうよ、ですか……。確かにぃ、先生すごいです! 異世界のヒロインは自らも戦わねばならないですもんね! ふむふむ。そうすると、ここをもっとこう、短く、そうすると太腿が少し見えてしまうけれど、そこまで露出は高くないっと……。
これくらいの太もも加減なら大丈夫でしょうか? ありですか!
よし! 乃愛、思い切ってスカートを短くしてみます!カバンの中にハサミハサミ、っと、あったあった。わたし、前髪を切るように、いつも持ち歩いてるんです。てへ。では、早速!履いたままでいいですよね! あ、でもスカートの中が少し見えちゃうかもなので、先生、少しだけ横を向いててもらえますか? すぐに切りますので!
——チョキチョキ、チョキチョキ
先生、できました! これでどうでしょうか? あ、でも少し切ったところが斜めっていて雑ですよね……。わたし、そういうところが不器用なんです。え? 先生、今なんて? すごく似合うよって!? そういうリアリティじゃない感じが異世界風だよ、って……?
あわあわわ。
先生、そのお言葉、ものすごく嬉しいです……。実はコスチュームを選ぶ授業はいつも赤点すれすれで……。あっ……、すいません、コスチュームで褒められたことがなかったので、涙が……。ダメですね、すぐに泣いたりしたら、ヒロインじゃない——
あっ……ふっ。
先生? あの、先生……? せんせぇ……、そんな、抱きしめられて優しい声で泣いてもいいんだよなんて……、そんなこと言われたら、わたし、もっと泣いちゃいますよ……。ヒロインたるもの、涙は見せてはいけないのではないですか?
いいから黙って抱かれていなさい、ですか……? それもヒロインの役目なんだから……って? 先生、あったかいです。優しい気持ちがいっぱい溢れてくるみたいな感じです……。先生、お言葉に甘えて、もう少しだけ、こうして泣かせてください……。本当に、コスチュームの授業は辛い思い出しかなくって……。同期のメンバーにも、本当センスがないなって言われ続けてきたので……ぅぅぅ……。
——くすん。
先生の優しい手が背中に触れていて、心がだいぶ落ち着いてきました……。先生、本当にありがとうございました。わたしもっとがんばります!あ、えっと、ここでヒロインステッキですか?
——きゅらきゅらりーん!
はぅぅっ!
せんせぇ……、すごいです……。また上から下まで電流が走ったように刺激が……。ああ、まだ身体の中に余韻を感じます。でも、先生、今のどこにヒロインポイントが……?
涙を見せることもヒロインの役目? 弱いからこそ守りたくなるんだよ、ですか……。あ、先生の指が唇に? もうしゃべらなくていいから、ですか? 確かに、残り文字数が、13378文字になってしまいました……。
じゃあ、もう少しだけ、先生の腕の中でこのままで……、いてもいいですか……? はい、もうお口にチャックですね……。
でも先生、最後に一言いいですか? ヒロイン研修二日目、ありがとうございました。
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