第2話 乃愛、学園ものに挑戦します!
なるほど。先生がいま言われたことをまとめると、「ヒロインとは、その物語の重要的な役割を担う」ということになりますよね。ふむふむ。それって、実は結構難しい気がしてしまいます。あ、もちろん、ひろいん学園の授業でも習ったことはあるのですけれど、実際にやってみるとなると、……不安しかないというか……。だって、それって、えっと……誰かの人生という物語に……わたしが必要になれるかどうか……、そういうことですもんね。
ダメダメ、
えっと、先生? わたし、何かおかしなこと言いましたか? なんでそんな吹き出して笑ってるんですかぁ。 え? 元気でいいねって? へへへ。実はそれだけが取り柄なんです。ああ! こんなことを話している間にも文字数カウンターが! ダメですね、早速、ヒロイン研修一日目をはじめないと!
じゃあ、さっき先生が提案してくれたように、せっかくひろいん学園の制服を着て、学校の中庭にいるのですから、学園もののヒロインになりきってやってみよう! ですね。
でも、先生、どの設定にしたらいいのか、乃愛、困っちゃいます。先生のお名前を呼べないから、なになに君っていうのは無理だし、先生って呼ぶのは、もうさっきから先生なんだし? ということは……、そうだ! 先生、先輩って呼ぶシチュエーションはどうでしょうか?
すごくいいねって? きゃあ! 嬉しい! 先生にそう言ってもらえると、わたしすごく嬉しいです!
はっ……! す、すいませんっ!
つい浮かれて、腕にしがみついちゃったりして……。すぐに離れますね。って……。いて、いてて。ああ、髪の毛が先生のシャツのボタンに絡まっちゃったぁ。もう、こういうところがドジなんです、わたし。
先生、すぐに外しますから、ちょっと動かないでくださいね。……と……。先生の顔が……近くて……。緊張しちゃって、指が思うように動かない……。えっと、す、すぐに外しますから……。うんと、えっと、ああ、もう! なんでこの髪の毛、全然とれな……い……。せんせぇ、本当にごめんなさいっ!
——あっ……。
い、今のはあのですね、不可抗力というか……。そんなつもりじゃなくって……。まさか、先生がわたしの方を見てるって気づかなくって……。全然そんな先生にキスするつもりなんてなくって……。あ……、取れた……。す、すぐに離れますっ……。
あああ、もう本当にごめんなさいっ! 先生、改めて、すいませんでしたっ!
ほんとにすいませんでした……。いや……ですよね? さっき会ったばっかりのわたしにキスされるとか……。ヒロインたるもの、そんな不意打ちキスとか……失格ですよね……。わたしも、初めてだったし……。
先生、今のは事故ということで、ノーカウントにしてください。
先生? なんでそんなに笑ってるんですか……? そんな必死にならなくってもいいよって? だって、事故とはいえ、唇と唇が……微かにでも……ふ、触れたわけですし……。わたしは初めてのキスだったし……。
先生、いまなんて言ったか聞こえなかったって言われても……、ちょっと、それは恥ずかしくて言えないというか……。
あっと。先生、あの、その、こ、これは……? また髪の毛絡まっちゃいますよ……先生? あ、えっと、そして、なぜいまここで、ヒロインステッキでなでなで……。
——きゅらきゅらりーん!
はううっ!
先生、なんか、いまヒロインステッキで撫でられた瞬間、全身に刺激が走りました。ああ、そうか、電流が走ってこのハート型のスマートウォッチにヒロインポイントが貯まるんでしたっ! 先生、なんか凄かったです! ものすごく気持ちのいい電流が上から下に流れた気がします! ま……まだ身体の奥でびくびく細胞が動いている気がする……。
あ、すいません、その刺激で先生にギュッとしがみつくとか、ないですよね。すぐに離れますから。え? もうちょっとこのままで……?
先生? あの、……ドキドキしてしまうので、あの、この辺で……。そうそう、ほら先生、学園ものヒロインの練習をしなきゃですよ? 今日はヒロイン研修一日目なんですから。えっと、先輩設定じゃなくて、先生設定でもう完了していいんじゃないか、ですか……?
でも、完了したらもう今日の研修は終わりになっちゃうし……。それだと先生との時間も今日はもうおしまいになっちゃいます。でも……確かに、残り文字数が15619文字になっちゃいました。
え? 乃愛が無言でいれるならまだ一緒にいれる、ですか?
確かに……。だって、わたしが無言なら文字数カウンターは減らないですもんね……。じゃあ、もうしばらく、このままで……。
あの、先生? 最後に一言いいですか? ちょっと耳を貸してください……。
ヒロイン研修一日目、ご指導ありがとうございました。
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