第2話 同い年の後輩

 鹿嶋以外に関しては、新入生は誰も来ないままで、結局1人だけの入部となった。


 登録の処理が終わった後、柾達は少しの間、どうして写真部を知ったのか、なぜこの部に決めたのかなど色々質問しまくっていた。


 写真部を知ったのは柾と圭が部活のことを休み時間に話していたのを聞いたからで、写真が好きだから入部しようと思ったらしい。


「…ワンチャン俺たちに脈アリなんじゃね?これ」


 耳元でそう囁く伊織の足を柾は机の下で強く蹴る。

 

 少し痛がるそぶりを見せる伊織に鹿嶋は首を傾げていた。


 




以前から少し写真に触れていたことがあるらしく、備品の扱いなどは1週間ほどで完璧になっていた。


 今日からは鹿嶋も実際に写真を撮りに行くことになり、その後の鑑賞会で初めて撮った写真を見た時はやはり先輩達に比べるとまだまだ技術的には劣る部分もあるように思えた。

 

 しかし彼女のレンズが捉えるシーンには日常を非日常的なものに感じさせる不思議な世界観があり、どこか惹かれるものだった。







「―なんか鹿嶋の撮る写真って、切り取り方天井に似てるな」


 部室で鑑賞会をしている時、急に伊織がそんなことを言い出した。


「そうか?でも俺は風景しか撮らないし、生き物の写真が多い鹿嶋とは全然違うと思うけどな」


「んー、題材は確かに全く別物だけど…なんて言うか方向性が似てんだよなぁ」


 隣では先輩達もうんうんと頷いている。自分ではわからないだけで客観的に見るとそう映るのだろうか。

 

 柾はそう思い、今度は鹿嶋の方を向くと、偶然と目があった。一瞬の動揺の後でこちらに微笑み掛けた鹿嶋に、柾もすぐ同じようにして返す。



 しかし、そのときの鹿嶋は自分では無いどこか遠いところを見ているような気がした――

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