第153話 多様性
『朱に交われば赤くなる』
交わる仲間や友人により、感化されることの例え。人は周囲に影響されやすく、相手によっては善にも悪にもなるという意味。友人が極めて少数の南山之寿には、無縁の言葉。どちらかと言えば、『酒に交わり赤くなる』が似合う南山之寿。酒を呑むと、直ぐに赤くなる部類。
本日の闘いは、多様性を持った闘い。素手、武器、魔法、罵詈雑言、料理。なんでもありの、地下格闘技世界。
酒の席。呑め呑めイエイ!などと言えば、ハラスメント委員会に叩かれる時代。スマートドリンク推進の飲み会。アルコールとソフトドリンクの違いが分からない店舗は一苦労。多量のオーダーに埋もれるソフトドリンク。烏龍茶割りなのか、烏龍茶なのか分からなくなる酔っ払い集団。テーブルから、スマホでオーダーする店舗では、数字の入力ミス。それでも飲み干す酔っ払い集団。こっそりと唐揚げを大量にオーダーする南山之寿のメシテロ行為。
とある休日。独りでフラフラと街に繰り出す南山之寿。朝飯を抜いたせいか、無性に腹が減る事態。この腹を満たすものは何かと、孤独のグルメばりに自問自答。
『ステーキ!』
午前中からのステーキも、認められてこその多様性。グーグル先生に教えを請う南山之寿。比較的近場にステーキを提供するカフェがあるとヒット。
入店して驚く南山之寿。ほぼ女性客。それもそのはず。パンケーキやパフェがウリのアメリカンカフェ。ただアメリカンとだけあり、ハンバーガーやステーキも提供。迷わずポンドステーキを頼む南山之寿。
『寿〜〜』と唸る鉄板ではなく、プレートでの提供。それでも食欲をそそる、ガーリックの良い香り。ニコニコと頬張る南山之寿。
しかしながら、周りからは甘い匂い。その中で放つ、異質なガーリックの香り。異質の匂いのもとを探そうと、チラ見されているのではないかと感じる錯覚。猛スピードで完食する南山之寿。お洒落カフェから、社食に早変わりした瞬間。
『女性客に交われば赤くなる』
女性客が集うお洒落カフェに近寄ることは、暫く封印しようと心に誓った。
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