第154話 確変

『確率変動』


パチンコに搭載されているシステムの一つで、大当たりしやすくなる機能。独身時代に、会社の先輩に連れられて、多少は遊戯を嗜んだ南山之寿。隣に座るおじいちゃんが、確変に入り『嗚呼、助かった〜!』と叫んでいたことが記憶に残る出来事。


『降水確率30%』


どんより雲。一般的には、折畳み傘を持つか悩む確率。降水確率0%でも南山之寿のカバンには、折畳み傘が常駐。悩むことからの開放。急に雨が降れば大活躍。濡れる人を尻目に、勝ち誇る南山之寿。雨が降らない日が多いから、ほぼ負け越しという事実は忘却。


本日は、確率との闘い。委員会やクラブの代表。小学生の頃は、じゃんけんで決める流れ。どこかて勝てるはずの確率。なれども負けて負けて、気がつけばキングオブ敗者チャンピオン


電車での珍しい確率。バイト帰りに乗り込む電車。偶然空いてる場所に着席。疲れきった身体には幸運な時間。ふと、横を見る南山之寿。二度見。まさかと思ったが、隣に座るのは高校時代の同級生。プチ同窓会気分。


名前での珍しい確率。南山之寿で検索。南山大学など、学校名がヒット。縁もゆかりも無いが、なんとなく湧いてくる親近感。


トイレでの珍しい確率。


『嗚呼、助かった〜!』


父親に連れられて、トイレに駆け込んできた幼稚園児位の少年。我慢の限界だったのか、個室からは少年の歓喜の声。小便用のトイレに並ぶ南山之寿もほっと胸を撫で下ろす瞬間。


手を洗い立ち去ろうとしたとき、駆け込んで来たおじさん。個室に入り、漏らした言葉。


『嗚呼、助かった……』


深い、そして静かな呟き。一日で、二度も同じ言葉を二度も聞くことになるとは、まるで確変。


『嗚呼、助かった!!』


ネタに苦しむ南山之寿。このトイレでの出来事をネタにしようと、ほくそ笑んだとか笑まなかったとか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る