第92話 地層

 砂や粘土。火山灰や小石。そして、生物の死骸などが堆積。複数の層状から成立つ地層。下に行けばいくほど、一般的には古い地層。地層累重の法則。稀に、地殻変動などの影響で、部分的に上下の地層の古さが逆転することもある。


 理科の授業で訪れる近所の崖。地層が見られる生の教科書。地層からは、化石が発掘されると信じて止まない南山之寿少年。土を掘り返し、石を砕いては探す太古の浪漫。何も見つからず、得たのは徒労感。 


 本日の対戦相手は地層。時間、歴史、地球の重みに圧倒される南山之寿。始まる予定は皆無の、南山サイエンス劇場。どちらかというと、崖で犯人が自白を始める南山サスペンス劇場。


 時は進み、現在。理科の授業で地層を学んだ若。授業の記憶を伝える南山之寿。気軽に行ける場所を探すが、なかなか無い。仕方なくケーキ屋に向かう南山之寿。ミルフィーユケーキを購入。趣味と実益を兼ねた、美味しい授業。地層を説明しながら完食。食べる口実を作った訳では無い。


『地層定食』


 プチ地層ブームの南山之寿。料理で試みる再現。トマト、アボカド、モッツァレラチーズを交互に並べた地層サラダ。白菜と豚肉を交互に挟み蒸した、御地層肉。米、海苔、おかかを交互に重ねる地層飯。味噌の沈下を待てば、冷めた地層汁。完成した定食屋是恩の自慢の定食。


 有給休暇後の南山之寿。会社の机を見て、毎度の事だが絶望。書類の地層。今にも崩壊しそうな絶妙なバランス。


『書類累重の法則』


 一番下の書類から確認を進める南山之寿。催促されながら闘う、孤独な時間。急を要する書類程、見つからない。慌てふためく南山之寿。一度提出した書類の不備に気が付き、書類の地層から抜き取ってい者の仕業。再提出を受け、一安心する南山之寿。


 この話の行き着く先は見当たらない。地層の一番下に埋もれたオチ。掘り起こすことは至難の業。


『俺は悪くない! 悪いのはこの話を読んだ皆だ!』


 崖の上で、己の否を認めず責任転嫁する南山之寿真犯人。泣き崩れながらの白状。


 こうして、南山サスペンス劇場は幕を下ろす。


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