第89話 歌

 喜多川歌麿は、江戸時代の浮世絵師。桂歌丸は、昭和の噺家。ウタ○ロ石けんは、南山之寿が洗濯で使うアイテムの一つ。泥汚れも、満足できるレベルまで落としてくれる洗剤。『歌』という文字から色々と連想する南山之寿。


『歌は世につれ世は歌につれ』


 歌は世相の変化に伴って変わり、世相も歌の流行に影響されるという意味。今では伝わらない歌。『ポケベルが鳴らなくて』というフレーズ。スマホすら鳴らない南山之寿。待ちぼうけなんてザラ。『24時間戦えますか』なんて御免。時代が変われば、色々と変わる。


 今日のは歌合戦。年末の歌合戦の足元にも及ばない、塩っぱい試合。


 風呂に入ると歌ってしまう南山之寿。声は響いていないと思っていたが意外と響く。リビングの誰かに聞かれることも、しばしば。逆に歌を聞くことも、しばしば。若の歌が聞こえるが、何の曲かは不明。後程聞くと、創作の歌。


 会社の通路。小声で歌いながら歩いてしまう瞬間。マスクが醸し出す安心感。油断して歌う南山之寿。通路の曲がり角で誰かと出くわすと、止まりそうになる心臓。油断大敵。否、浮かれるなという話。


 カラオケでの想い出。息継ぎ無しでどこまで声を出せるか競う、若かりし頃の南山之寿。クラっと目眩がするまでやる勇気は皆無。気絶なんて御免。


 時は経ち、姫の育児に勤しむ南山之寿。ご機嫌ナナメの姫。寝る時間を過ぎても遊びたいと泣き叫ぶ。呼吸を忘れて泣き叫ぶ姫。姫の唇が見る見る間に、紫に変色。クラっと気を失う姫。パニックになる南山之寿。何事も無かったので良かったが、同じ経験は二度と御免。


 カラオケでの苦い想い出。入口付近に座ってしまった南山之寿。飲み物はドリンクバー式のカラオケ屋。一度飲み物を取りに行こうものなら、店員に早変り。皆のオーダーを受取り、運ぶはめになる南山之寿。何故か存在した、ソフトクリームメーカー。人数分のソフトクリームを作る南山之寿。小皿に捻りながら積み上げ完成。溶ける前に運ぶ為、増える往復回数。腹の底から怒りが湧き上がる忘年会。誰も手伝わない。否、酔っ払って動けない。孤軍奮闘しなくてはならない、悲しき幹事の宿命。


 南山之寿の『寿』がソフトクリームに見え、今更ながら想い出し、腹を立てただけの話。


 


 




 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る