第80話 におい

においと、におい』


 心地良く感じる場合は、匂い。不快に感じる場合は、臭い。どう感じるかは、人により様々。十人十色の感覚。Dr.某の風味を、良い匂いと感じる南山之寿。やばい臭いがすると感じる、一定数の人。


 中学の林間学校。寝起きの汗の臭いを、香料を使い消し去る南山之寿少年。シーブ○ーズあたりが定番。身体中に塗りたくり、清涼感を味わう。部屋で使用していたとき、思い切りこぼす南山之寿少年。隣の級友の枕に染み込む。トイレから戻り、朝食の時間まで寝転ぼうとする級友。枕に頭をのせて一言。


『ぼくの匂いじゃない……』


 それもそうだと、納得する南山之寿少年。理由を説明し、謝罪。問題には発展しなかったのが救い。


 今日の対戦相手は、におい。加齢臭には敵わない。自分のにおいが臭くないか、常に疑心暗鬼。寝起きの枕。香る加齢臭。気がつくと、嫌だなと思っていた父親のにおいを思い出す南山之寿。


 妻と若が買物にでかけた隙に、台所で始まるつまみ食い。ナッツと日本酒で軽く一杯。ほくそ笑む、南山之寿。視線を感じて横を見ると、昼寝から起きた姫。慌てふためくも、お菓子をあげて口封じ。秘密と背徳感の共有。二人で笑顔のハイタッチ。


 妻と若が帰宅。速攻でバレる南山之寿。姫の密告ではなく、台所に残るにおい。空間消臭を忘れていた南山之寿の失態。


『臭いものに蓋をする』


 失敗もしかり。つまみ食いもしかり。根本的な解決が大切。蓋をしたつもりでも、外れているのが南山之寿。

 

 

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