第79話 ハンバーグ

『今すぐKissMe』


 LINDBERGの名曲。タイトルと比較された皆様。気が付いたかと思う。バーグ繋がり。もう面倒なので、一気に端折る。


 今日の対戦相手は、ハンバーグ。一時期流行ったハンバーグ師匠。ファミレスで子供が叫んでいた、お決まりのフレーズ。鬼の形相で注意していた母親。若が生まれていなくて良かったと、その状況を思い出す南山之寿。若は間違いなく、やるタイプ。


 試しにと、若にハンバーグ師匠を見せた南山之寿。速攻で気に入る若。後日、ファミレスでフレーズを繰り出す若。やっぱりなと、頷く南山之寿。誰が教えたのかと、激昂する妻。敢え無く御用になる南山之寿。


 ハンバーグは、若も姫も好きな食べ物。苦手な野菜も切り刻んで、野菜ハンバーグにすれば完食。気が付かない二人をあざ笑う南山之寿。


 とある日の夕食はハンバーグ。完食して食器を洗う南山之寿。妻との会話。


「今日のハンバーグどう?」

「いつもと変わらないけど?」


 不敵な笑みの妻。どうやら今夜の品は、代替肉ハンバーグ。気が付かない南山之寿。味を語るのは止めようと思った瞬間。技術の進歩には舌を巻く。


 姫との会話。比較対象にのらない質問。


「お父さんとハンバーグ、どっちが好き?」

「う〜ん……ハンバーグ!」

 

 お父さんとは言わない姫。それでも、かわいい笑顔で答える姿に顔が緩む南山之寿。幼稚園前の時期が一番かわいいとさえ感じてしまう。そんな姫に、こんな依頼。


ほっぺにチュしてよ今すぐKissMe?」

「きもい!」


 いつの間に、そんな言葉を覚えたのだろうか。そして、もう拒否が始まったのか。悲しみに暮れる南山之寿。心は、真っ黒な燃えカスになっていた。


 南山之寿は、ハンバーグに敵わない。


 

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