第75話 要求

『木で鼻をくくる』


 無愛想、冷淡にあしらわれたら、出てくるのは涙。南山之寿が出した要求が、無下にされるのは日時茶飯事。


 SNSに、アプリ。要求されるパスワード。頼みの綱は、Google先生の記憶力。登録の無いものについては、南山之寿の記憶力が頼り。承知の通り、頼りにならない記憶力。四苦八苦しながら、何とかログイン。


 ウイルスなんぞに感染し、解放してほしければ身代金を寄越せという要求。友人のパソコンに起きたトラブル。どう対処したのか、分からない。南山之寿のスマホから消えた、友人の連絡先。便りがないのが良い知らせ。そう信じておくとする。


 今日は対決の要求。何と果たし合いをしたいのか、謎ではある。


『南山之寿……お主も悪よのぉ……』


 こんな台詞を聞く様な人生は、歩んでいないのであしからず。聞いた瞬間、トランペットが鳴り響き、闇夜から現れた人影に消されてしまう南山之寿。時代劇専門チャンネルで見れる光景。


『小遣いを上げろ!』


 南山労働組合の春闘。部屋にこだまする、シュプレヒコール。叫べども叫べども、要求は通らず。物価は上がるが、支給される紙幣は変わらず。疲弊する南山之寿。完膚なきまでに、完敗。この敗北に涙を流して、乾杯。


『サンタさんへ……』


 例年、クリスマス前に届く手紙。若と姫からの要求事項。こちらは、すんなりと認可が降りる。不条理な世の中。哀しきかな、南タクロース。


 今年のクリスマス。若の渾身の手紙。玄関に置いてあった、サンタへのお礼。綴られている感謝の言葉。感動しながら読み続けると、硬貨を入れたことを表す文言。


『お礼に300円あげます。来年も来てください』


 まさかの賄賂。サンタの買収。来年の訪問を予約する大胆不敵な行動。笑いながらも、回収する南山之寿。


 手紙の最後の一文に、慌てる南山之寿。


『トナカイと一緒に写った写真をください』


 サンタの存在を、疑いだしている若。証拠の要求。

とんでもない罠を仕掛けてきたなと感心。急いで画像を検索。何とか見つけて、いざ印刷。


『カートリッジを交換してください』


 ここに来て、駄目だしの要求。年賀状用に買っておいたはずのインク。南山之寿は、必死に捜索した。


 



 

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