第66話 ニュアンス
『NB』
言わずもがな、スニーカーのブランド名。ニュー〇〇ンスのロゴ、『N』が足元に光る一品。履き心地がよく、愛用する方も多い。こう言っておいておきながら、履かないのが南山之寿。
『NBA』
今、上映しているバスケ漫画。バスケ部人気が高まった時代の象徴。『NBA』は最高峰のリーグ。同じ人間とは思えない動きに、跳躍力。一度でいいからダンクシュートをやってみたい南山之寿。諦めたら試合は終わりだが、諦めざるを得ない現実。跳べない南山之寿は、ただの……。
今日の対決ポイントはニュアンス。言葉には表に出ない、内面の叫びが現れる。ストレートに言ったら、喧嘩になることもしばしば。気をつけなければならない。
提供された料理に、ケチをつけてはならない。食卓に並ぶ食事。濃い味付けが好きな南山之寿。物足りないと感じるが、『薄い』などと言ってはならない。産まれるのは、無用な争い。
「京都風の上品な味だね」
「は? 味付け忘れただけですが? 嫌味か?」
地雷を踏んだ南山之寿。取り繕う間もなく、若と姫の援護射撃。今じゃないだろと思いながら、背中に攻撃を浴びる南山之寿。
「まず〜」
「僕、ガ〇トの方がいいな〜」
終わった。南山之寿は終わった。嵐を収めねば、兵糧攻めに合う。必死に弁解と、食器洗いでご機嫌をとる南山之寿。口は災いのもと。
コロナ禍になってから、使用回数の増えたネットスーパー。置き配なども便利。とある日の依頼。玄関前に並ぶ食品。
「笠地蔵さん来たね!」
童話で覚えたての笠地蔵。あれも確かに、玄関前に並ぶのは食材。当たらずも遠からず。
何となく、ニュアンスは伝わった。
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