第61話 マスク

 覆面レスラーとは、素顔がバレない様に、顔などの一部や全体を覆面で覆い隠すプロレスラー。マスクマンとも言う。バレバレのレスラーもいるが、それはご愛嬌。


 マスクメロンとは、麝香ジャコウのような強い芳香を持つメロンの総称。別名はジャコウウリ。メロンより梨が好きな南山之寿も、ご愛嬌。


 ダマスク織 とは、裏地のある絹、綿、リンネル、羊毛の合成繊維の衣服・織物。 織り方にパターン化された模様を伴う。無茶なこじつけで見つけた織物。南山之寿が使うわけでもない。


 アイマスクとは……。もう、うんざりした頃だろう。


 本題の対決内容は、マスク対決。フィット感、色、形、耳への負荷を競うマスク協議会。名誉審査員を務める南山之寿。もちろん、実在しない。南山之寿の概念というか、妄想。これもまた、ご愛嬌。


 コロナ禍になり、数年。マスクが手放せない生活。花粉症の時期にも役に立つ。乾燥しやすい冬には、保湿効果を求めて、就寝中もマスクを着用する南山之寿。朝起きると、足元にマスクが転がっている不思議な現象。剥いだのか、剥がされたのか。


 耳にかける部分が切れると、ひとたまりもない。食卓に不用意に置いたマスク。誰のか分からなくなるのはどうしようもない。鞄にはマスクのストックばかりが貯まりだす。マスクを振る舞う南山之寿。おばちゃんがよく手渡す飴ちゃんと同じベクトル。


 ミントスプレーをかけると清涼感が溢れ、暑さをしのげる。いっそのこと、チョコミントをマスクに塗っても変わらないと思う南山之寿。ベタベタになることが目に見えた、浅はかな考え。


 マスクの匂い問題は重要。ツバなんて着こうものなら、気分が悪い。乾いたあの匂いに、参ってしまう。それは子供も同じこと。


 公園で姫と遊んでいたときのこと。いつもなら楽しくはしゃぐ姫。今日に限って、元気がない。どことなく機嫌が悪い。お気に入りのブランコは、他の子供が楽しんでいる。「貸して」の一言が言えずに苛ついているのかもしれない。勇気を出すんだと、声をかけようとした南山之寿。


『ああ゛っ!! 臭いっ! マスク臭いっ!』


 マスクを引きちぎって地面に叩きつける姫。理由を理解して、納得する南山之寿。


 マスクはこのあと南山之寿が、適切に処理をした。

  

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る