第55話 年賀状

『明けましておめでとうございます』

                 ――南山之寿


 安心して欲しい。頭のネジが数本飛び散った訳ではない。2023年の元旦から、時空を超えてやって来た訳でもない。少しだけ気が早いだけだ。


 誰も気に留めぬ冗談はさておき、年賀状の準備期間に入る南山之寿。意外にも律儀に送り続ける年賀状。受け取る人から見たら、嫌がらせ。迷惑系メッセンジャー南山之寿。


 冒頭の挨拶と共に考えるデザイン。例年通り、市販品を選択。捕食されるうさぎの年賀状があればベスト。間違えても、ウサミミ南山之寿を前面に押し出したりしない。バニーガー……止めておこう。吐き気を催した。


 今日の対戦を知らせる方法は年賀状。余った年賀状は、何かしらの応募に使い回される気がする南山之寿。郵便局に出向いて、トレードするのが面倒くさいだけ。


 年賀状に失敗はつきもの。宛名の間違えや、住所変更に後々気が付くなど様々。パソコンの買い替えで住所録が消えるなんてトラップはもう懲りごり。同じ相手に、二枚送ったミスも忘れたい過去。


 年賀状の準備にと、コンビニに向かう南山之寿。支払いの時に気が付く、現金一択の事実。カードと電子マネーしか持ち合わせていなかった南山之寿。前にも聞いた様な話。年賀状は諦めて、珈琲とスイーツを買って帰宅。ただでは転ばぬ南山之寿。否、ただの無駄遣い。


 年賀状を送る相手の確認をする南山之寿。収納ケースから、去年の年賀状を取り出す。去年の年賀状とは別に、存在してはならない年賀状が見つかる。南山之寿が送るべき年賀状。


 基本的に、年末に出すスタイル。元旦に届いた中で、南山之寿の宛先から漏れていた相手。その相手への年賀状を作成して、出し忘れた南山之寿。


 今から出すか、来年まとめて出してみるか。笑って許してくれるだろうか。


 ――鬼だって笑うんだから。

 

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