第43話 鍋
『
敗戦の屈辱を晴らすこと、また名誉の回復をあらわす諺。敗戦続きの南山之寿。雪辱を晴らす日は、いつになることやら。
年末になると食卓に訪れる鍋。ここ最近では、多種多様な鍋の素が現れ、冬を賑わす。浮かれに浮かれ、鍋を堪能する南山之寿。
忘年会といえば鍋。とりあえず鍋。自宅で開催しようが、街に繰り出そうが鍋。コロナ禍も、コロナ鍋に見えてくる始末。自由気ままに鍋を堪能していた数年前の話。
今日の対戦相手は鍋。冬将軍と鍋奉行が相手の、タッグマッチ。南山之寿のタッグパートナーは胃薬。
牡蠣が食べたい。牡蠣が好きな南山之寿。牡蠣フライ、酢牡蠣、牡蠣鍋が食指をそそる。牡蠣鍋を楽しもうとする南山之寿。
生牡蠣も食べたい。生食用と加熱用をとりあえず購入。鍋の準備。酒が入り、人がわちゃわちゃすると事故が起こる。
取り出され、皿に盛られている牡蠣。生食用か加熱用か、最早不明。仕方がないから、鍋に投入。後日、オイスターバーで仕切り直す南山之寿。ノロウィルスに怯えながら食すのが、いつもの南山之寿。こんなところで当たりたくないといつも思うが、食べたくなるのが南山之寿。行動原理が理解できない。
当たると言えば鉄砲。ふぐ鍋。食べたいと思ったことが無かった南山之寿。忘年会の会場はふぐ屋。ふぐ鍋、ふぐ刺し、ふぐの唐揚げ。ふぐ一択。飽きるスピードも早かった。
淡白な味が続くと、濃ゆい味を身体が要求する。〆に選ぶ濃厚豚骨ラーメン。五臓六腑に染み渡るスープ。身体も心も温まる。
ここは南山之寿が払うと、漢気を見せる。しかしながらこの店、カードも電子マネーも使えない。現金のみときた。南山之寿が、財布を見ると……。
『会計の恥を雪ぐ』
あれ以来、現金の確認は怠らない。
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