第40話 布団
朝が来る。希望もへったくりも無い、無情の朝。寒さから逃れきれない南山之寿。抜け出せない、温もりの泥沼。勢いよく、覚悟を決める以外に道はない。大袈裟かも知れないが、冬の起床は命懸け。
冬の風呂も命懸けかもしれない。シャワーだけで済ませようとした夜。脱衣所がキンキンに冷えている。浴室から出た南山之寿の震えが止まらない。
今日の対戦は延期。対戦相手も風邪を引き、寝込む時期。南山之寿も布団の中で休むとする。相手を気遣うあたり、南山之寿の半分は優しさで……。
さて、気を取り直して話を進めよう。
布団を敷きっぱなしというのも、身体には良くない。衛生的にも良くない。たまに布団を、天日干しをする南山之寿。消臭剤を、これでもかと吹きかけて干す。メーカーの努力を嘲笑う南山之寿の香り。
『敵うとでも思ったか!!』
言って置きながら悲しくなる。布団を車に乗せ、コインランドリーに。大型の洗濯機で、不浄を洗い落とす。洗い終わった布団は、持ち帰る。羽毛布団を乾燥機にかけると、燃えることがあると聞いた南山之寿。こんなところで、お縄になる気は無い。
脱力した人間は重いと以前綴ったが、濡れた布団も意外と重い。天日干しで、フワフワになるまで待つ。待っている間に、セルフ散髪。きれいに刈り上げる。
――頭寒足熱。
首から下の空間の、温度と湿度は最適な状態。布団の香りも、陽の匂いで心地良い。質の良い睡眠が南山之寿に訪れる。
――翌朝。
頭痛で目を覚ます。3ミリに刈り揃えた南山之寿。冷気で頭が冷えすぎた。頭を冷やし過ぎるのも、良くない。坊主の頭は、よく冷える。
――冬の起床は命懸け。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます