第39話 タンドリーチキン

 梅雨や台風の時期。部屋干し、乾燥機中心の生活。匂いも気分も、心なしか湿ってしまう季節。打って変わって、最近の秋晴れは清々しい。洗濯には、もってこいの天気。これから寒くなるのかというマイナス要素は、無視する南山之寿。


 ――そうだ、心の洗濯をしよう。


 紅葉でも目に焼き付けようと出かけるが、まだ早い。それならば、花より団子。普段は、自ら口にしない料理を食そう。日頃の疲れを、五臓六腑から癒やすのが目的。不摂生に、旨いものを食べ歩くだけではない。


 今日のモグモグタイムは、タンドリーチキン。花より団子からのタンドリーチキン。ではない。煮ても焼いても食えないのが、南山之寿。そんな南山之寿が誘う、タンドリーチキンまでの旅路。


 まずは一品目、アップルパイ。珈琲が飲みたくなり、フラリと入るアップルパイ推しのカフェ。ハンバーガーショップのアップルパイが南山之寿の基準。直ぐにワールドレコードを叩きだす。いや、ハンバーガーショップも十分に美味しい。


 二品目、ビーフン。最近、ハマっている料理。自宅でも簡単に作れる一品。アジア系ビストロダイニングのランチタイム。米粉のビーフンを、白米で食す。関西で言う、お好み焼きがおかず的な感覚。米粉と白米の浪漫飛行。南山之寿CLUB。


 三品目、チョコミントアイス。いつも食べているだろうと言われそうだが、少し違う。ダブル。もう一度言う。ダブル。微妙に違う……。否、普通に二つ食したのと大差は無い。


 道中、調味料が充実したセレクトショップを発見。辛味調味料類デスソースなどが、色々と顔を並べている。地獄の番人が、耳元で囁く。


Hey! チキン南山!買わずに逃げるのか?


 南山之寿はチキンではない。安い挑発に乗り、レジでお会計。使い道が良くわからないのに、後先考えず購入。


 四品目以降も楽しみ、帰路に着く南山之寿。日本酒の試飲と、立呑みをカウントしていいのかは疑問。


 自宅にて、辛味調味料の使い道を考える南山之寿。『チキン南山』からの『鶏肉』。

『辛味調味料』といえば『カレー』。

『鶏肉』と『カレー』とくれば、『チキンカレー』。

 調理開始、完成したのが『タンドリーチキン』。


 途中経過を端折ると、おかしな事になる。まるで、壊れかけの南山之寿。


 そこまで空腹ではなく、ツマミにと考えた南山之寿。カレールーを切らし、カレー粉が少しあるだけ。そんな偶然が重なっただけの話。


 ビニールに鶏肉を入れ、ニンニク、塩、辛味調味料、カレー粉を投入。揉んで叩いて、フライパンで焼く。スパイシーな香りが部屋に充満する。


『チキン南山流タンドリーチキン』とでも言えば、レシピサイトでバズる……訳はない。普通に美味しいツマミではあった。


 日頃の疲れが取れる一日。風呂に入り、南山之寿から疲れが完璧に消え去る。良い休日に、感動する南山之寿。風呂上がりのタオル。陽の光を浴び、良い香りが……。


 部屋に取り込んで置いていたタオル。タンドリーチキンの、スパイシーな香りが移っている。最後の最後に足元をすくわれた、南山之寿。慌てて他の衣類も確認。愕然とする南山之寿。


 目の前につられているは……

タンドリーチキン臭の洗濯物ランドリーチキン

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