第37話 あだ名
『推し活』
この言葉から、数年前の出来事が脳裏に浮かぶ南山之寿。推し活という言葉が現れる前であったかは、定かではない。そして、この話題にも関係はない。
アイドルや俳優、アニメのキャラクター。お気に入りを贔屓にする。南山之寿も贔屓にされたい。
愛するよりも、愛されたい。推すよりも、推されたい。――
本日はリングネームではなく、あだ名を考える。今回は『KAC20222』の
贔屓にしているアイドルや、俳優もいないのが南山之寿。何を贔屓にしているのか。今更ながらの、自問自答。南山之寿の禅問答。南山之寿が南山之寿たる所以を捜索。
南山之寿が贔屓にしている、最強の矛と盾。チョコミントとDr.某。再三言い続けてきた南山之寿。読書の皆様が食傷気味なのは十分承知。構わず話すのが南山之寿。
この矛と盾。南山之寿の身体を構築していると言っても過言ではない。いや、言い過ぎた。安心してほしい。三食、普通の食事は取る。液体燃料で動く、近未来的な機械生命体ではない。
南山之寿にも、推すべきものがあった。
Dr.某なる暗黒色の炭酸飲料は不人気。コンビニでは置かれない。専らスーパーや酒屋、ドラッグストアで入手。南山之寿の購入が、陳列棚のポジションを維持しているのかもしれない。
コンビニとは不可思議な交差点。多種多様な人物が行き交う。バックヤードでは、あだ名が飛び交う。客のあだ名。
決まった時間に、決まったものを買う。この手の客は、印象に強く残る。店員が顔を覚え、そのうちあだ名がつく。商品名や服のブランド名と様々。その時間に来ないと、逆に心配になる。これは、コンビニでバイトをしていた友人情報。
この情報を思い出し、心配になる南山之寿。確かめようが無いのが残念。
偶然とは、恐ろしい。
実家に帰省した南山之寿。近所の酒屋にDr.某を買いに行く。レジで南山之寿の前に並ぶ、白パーカーの男性。カゴにはDr.某。それも箱買い。
同士よ! 今すぐ肩を抱き寄せたい。
浮かれ気分の南山之寿。レジでの支払いを終え、店を出る。レジの女性の話声が耳に入る。
『pepper君、来たね……』
白いロボット扱い。名前が似ている。少なくとも白パーカーを着て、Dr.某を買いに行くのは止めよう。心に刻む南山之寿。崖から、突き落とされた気分の南山之寿。
南山之寿は、機械生命体ではない。
ここまでお読み頂いた皆様。南山之寿の
怪盗南山之寿に盗めない物は無い。
――皆様の貴重な時間。確かに、頂戴した。
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