第26話 弱点 

『弁慶の泣きどころ』


 屈強極まりない戦士。あの弁慶ですら、攻撃されたら泣いてしまう。本当かどうかは別にして、誰にでも弱点がある。向こうスネも足の小指も、壁や階段にぶつけたら、南山之寿は簡単にうずくまってしまう。


 今日は、南山之寿の弱点を特別に公開する。弱点を攻められても勝てる。そんな屈強極まりない戦士になりたい。一体、南山之寿は何を目指しているのか。もう開始数秒で、後悔している。


 南山之寿は日光に弱い。吸血生物ではないので安心して欲しい。ニンニクは大好物だ。日光に弱いというのは端折りすぎかもしれない。正確に言うならば、日焼けや熱中症。熱中症については以前にも述べたが、毎年恒例の行事。


 日焼けをすると、肌が赤くなるタイプの南山之寿。健康的な日焼けにも憧れるが、焼けば焼くほど悲惨な目に会う。


 ある時、プールに入っていたときのこと。頭の痛みを感じる南山之寿。熱中症かとドキリとしたが、物理的な痛み。頭皮が痛い。どうやら南山之寿の坊主頭が焼けた。赤髪ならぬ、赤頭。随筆界の四皇には、なれやしない。


 南山之寿は予想力が弱い。雪国の温泉で、露天風呂に浸かっていた南山之寿。露天風呂の周りは雪。ここにダイブしたら、冷たくて気持ちいいはず。魚拓ならぬ人拓と、新雪の中に倒れ込む。雪の中に隠れていた岩。無慈悲な鉄槌が、南山之寿の水月を撃ち抜く。もう少し考えて行動するべきであった。


 しかしながら、この予想力は人生に必須であろう。スーツ姿の南山之寿。飲み会の余興というのか、酔ったノリなのか。四股を踏む南山之寿。何で四股を踏むことになったのか。会話の入口も、途中経過も覚えてはいない。残っているのは四股を踏んだ結果、スーツのパンツが裂けたという事実。


 南山之寿は泪もろい。映画館で泣くこともしばしば。小説を読んで目頭を押さえることもしばしば。お涙頂戴系は、南山之寿の弱点。最近ドライアイで目がシパシパするのは、また別の話。


 こうして振り返り細かくみると、南山之寿の弱点はやはり多い。


『叩けば埃が出る』


 ――否。


 埃しかでないのが、南山之寿の誇り。


 

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