第23話 基準
『
物事を判断する上で、必要とされる根拠。これをわかりやすく数値などで現してくれる。そんな基準を意味する言葉。
純情とは程遠い南山之寿。そんな南山之寿も、基準は気にしてしまう。口コミ評価を鵜呑みにするほど純粋ではないが、参考までに確認する。
本日の審判講習会テーマは、基準。基準がズレていては正しい評価もできない。
とある休日。南山之寿は、昼食の選択肢に悩んでいた。店の数だけ、選択肢が増えていく。こんなんじゃ、胃袋がいくつあっても足りない。
とあるビルの前。南山之寿は、一つの解答に行き着いた。老若男女が愛する国民的料理。
――カレー
チェーン店タイプではない、本場タイプ。インド、ネパール、タイ。その辺りの国旗が飾られている。ナンで食べるカレーも大好物。何でも食べる南山之寿は店に飛び込んだ。
メニューを確認するとカレーも充実しているが、その他の料理も充実している。どちらかというと多国籍料理、エスニック料理というくくりだろう。カレーの写真見ると、横に唐辛子マークがある。辛さの基準だろう。メニューの向こうから、カレーが語りかけてくる。
『
ランチタイム特典もあるのは嬉しい。
『
ここに来て、激辛と大食いの共演。辛さで倒れるか、量に圧倒されるか。南山之寿は闘技場に降り立った。
『唐辛子マーク5個って、どれ位の辛さですか?』
一応確認する南山之寿。ひよった訳ではない。もう一度言わせて欲しい。ひよった訳ではない。
笑顔で、辛くないと言ってくる店員。南山之寿はその笑顔を信じた。カレーの他、タイ風焼き鳥ガイヤーン、ラムチョップを頼む。プチ肉祭り。野菜はランチサラダで十分。
いざ戦闘開始。顔の様なサイズのナン。なんなんだ? ナンだ! とくだらない事を脳内で囁く南山之寿。一口サイズに千切り、カレーをつけ口に入れる。
………………。
無言で、ラッシーを飲む南山之寿。辛い! 激辛というレベルではないが、辛い! 額から一瞬で汗が吹き出す。あの笑顔は嘘だったのだろうか。いや、辛さの基準が違うのだろう。
ウマ辛い。焼き立てのナンも旨い。合体ロボの様な名前のガイヤーンも旨い。ラムチョップの
食後にふと、正月の出来事を思い出す。甥っ子と楽しむ百人一首。ではなく、百人一首のもう一つの顔。
『坊主めくり』
ルールは各地で違うが、坊主を引くと全て場に戻すのは共通だと思う。南山之寿は、こんな呼び方をしている。
天皇は、『天皇』
女性歌人は、『姫』
男性歌人は、『おっちゃん』
坊主は、『ボウズ』
甥っ子との一戦。大人だが、容赦はしない南山之寿。勝負師の血が騒ぐ。
『おっちゃん! おっちゃん! 姫! おっちゃん!』
交互に繰り返される、絵札の確認。手札が増えると緊張感が増してくる。坊主がでたら、形勢逆転してしまう。均衡を崩す甥っ子の一言。
『おいちゃんが出た!』
――南山之寿はそこまで坊主ではない。
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