第15話 分析力
『なぜなぜ分析』という言葉、耳にしたことがある方もいるかと思う。発生した問題の根本原因を探る分析手法として認知されている。問題に対して「なぜ?」と、問うことを繰り返す。五回ほど繰り返すと、原因にたどり着くことができるといわれている。
手法に長けた方が使うと、ズバっと気持ちよく解決するのであろう。南山之寿が行うと、見当違いの道を進む。たまたま自分に振り返る問題を、この手法で解決してみようと試みる南山之寿。
今日の隠し凶器は、なぜなぜ分析。隠さず最初から凶器攻撃をしてみよう。
『発生した問題:服が臭い』
なぜだ?臭うということは、洗浄が出来ていない。
なぜだ?洗浄が出来ていないということは、洗剤が入れられていない。
なぜだ?南山之寿がおちょこちょいのお茶目さんたから。
否! そこまでおっちょこちょいではない。入れた記憶はバッチリある。振り出しに戻ろう。
なぜだ?臭うということは、生乾きである。
なぜだ?部屋で干したから。
なぜだ?浴室乾燥機を使うのが面倒だから。
バカ野郎! 横着するからこうなるんだ! 生乾きのシャツを来て会社に行くしかないだろ。仕方無しに消臭剤を振りかける南山之寿。問題は解決……していなかった。
なぜだ……?
南山之寿の加齢臭が、化学物質を凌駕したとでもいうのか。そこまでの年齢ではないはずだ。洗剤メーカーが苦心して開発した柔軟剤を、いとも簡単に倒したとでもいうのか。
様々な洗剤と柔軟剤を購入し試す南山之寿。勝手に洗剤をブレンドして新商品完成と、道を間違える南山之寿。最早、何が何だかわからない。ボディソープやシャンプーにも洗浄力を求めだす。何なら、洗車機に飛び込んだらいいのかと本気で悩む南山之寿。
洗濯機を見つめていた。答えを教えてくれと見つめていた。
女神ではなく、洗濯機は微笑んだ。
洗濯機の水がたまり稼働した時のことだ。水が減っていくではないか。脱水かと思うが違う。すすぎへの移行にはまだのはず。ドレンパンを見たときに、謎が解けた。
洗濯機の底面が割れて、水が漏れている。洗剤も流れているだろう。洗えているわけがない。なぜなぜ分析を正しく行えば、直ぐにこの答えに辿りついたのかは分からない。謎が解けただけでもましだ。
その後、南山之寿からは日々色々なフレーバーが溢れている。さながら歩く花畑。柔軟剤の香りはやはり圧倒的に強かった。
南山之寿の服の香りは、凶器である。そんな服を平然と着ている南山之寿の行動は、狂気の沙汰かもしれない。
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